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校則見直しを通して学んだ民主主義 対話から生まれたアクション
ルールメイキングは、生徒が中心となり教員など学校の関係者と対話しながら校則・ルールメイキングを見直していく取り組みです。「校則・ルールが変わる」という結果だけではなく、立場や意見の異なる違う人との対話を通じて納得解をつくるプロセスを大切にしています。
連載企画【ルールメイキングから始まるわたしの一歩】では、ルールメイキングやそのイベントに関わった生徒や卒業生、教員から思いを聞くことで、ルールメイキング活動の先にあるものを考えていきます
今回お話を聞いたのは…
立命館守山高等学校 3年
藤野 瑚子さん
有志から構成される校内のルールメイキング委員会に所属。「民主主義」な学校づくりを目指して、高校1年生からルールメイキング活動を行う。ルールメイキング・サミット2024には招待生として参加。
校則を知りたい。そんな興味からはじまったルールメイキング。
ーールールメイキングを始めた経緯を教えてください。
最初は、興味本位でルールメイキング委員会に参加しました。2023年の7月に「校則について生徒と先生が対話する場を作ろう」と、生徒会担当の水野先生が校内に委員会を立ち上げられました。私自身は、元々生徒部に所属していたので、その繋がりで水野先生に誘ってもらって。
立命館守山は中高一貫校で私は高校から入学しましたが、生徒手帳など校則について書かれたものが学校になく、自分の学校の校則について全然知りませんでした。それでも「スカート丈は膝中じゃないとダメ」「頭髪を染めてはいけない」などのルール自体はあって。そのような「ルールとしてはあるけど、校則の明記がされていない」ものをルールメイキングの活動を通して知ることができるのではないかと思ったのが、参加したきっかけです。
ーー発足して1年半でどんな活動をしてきましたか。
学年もバラバラのメンバーで、現在は20人くらいで委員会の活動をしています。初めは校則自体の背景を調べたり、一つ一つの校則に対して考えを深めたりする作業をしていました。
調べてみると、立命館守山高校は女子校から始まった学校で、当時は社会に出て働き始めても恥ずかしくない身だしなみやマナーを学ぶ場として、きっちりとした校則があった名残がありました。「今もそれが引き継がれているからこそ、身だしなみ面で厳しくルールが定められている」という話を聞き納得しました。
一方で、勤務年数が長く、女子校時代から学校に関わっている先生は「校則を守らせたい」という強い思いを持たれているのに、若い先生は「こんなルールはなくていいのでは」と考えられていて、先生同士でも意見の違いがあることが難しいと感じました。
最近は、校則見直しを具体的に進めるために、全校生徒や先生に向けたアンケートや、話し合いを実施。少数派の意見が多数派の意見に押されないようにすることや、一人一人の思いをちゃんと受け止めることを意識しています。朝の会の時間でアンケートの時間を取ったり、質問への回答を自由記述式で集めたりするなど、できるだけ多くの人がアンケートに回答し、自分の意見を表明できることを大切にしています。
得られた回答は「校則に対する疑問」と「大切だと思う理由」の二つに分けるようにしています。例えば、スカート丈に関する「疑問」は「なんでスカート丈は膝中じゃないといけないのか、もっと短くてもいいのでは」というもので、「大切」は「スカート丈がその長さであることによって、安全が守られている」といったものが含まれます。
全校生徒1000人の中で自分たちはたった20人。他校の活動から得られたエネルギー。
ーー藤野さんは校外でもルールメイキングに取り組まれているそうですね。
委員会が発足して半年経ったころ「校内でのルールメイキングの活動で何をするのが正解なのか」「どういうことがルールメイキングなのか」と迷ってしまって…。私の学校には全部で1000人くらい生徒がいますが、活動に関わっている生徒はたったの20人しかいません。一部のメンバーだけが取り組んでいる状況なので、たとえクラスの友達でもルールメイキングの悩みを相談することは簡単ではありませんでした。
そんな時に、すでに校則が見直された学校である大阪の夕陽丘学園高校で「ルールメイキング対話カフェ(ルルカフェ)」というイベントをしていたり、関西地域生徒大会で各校の取り組みをポスターやプレゼンで発表したりしていることを知りました。
活動のヒントを得たいと思い参加してみると、他校の活動から学びが得られただけでなく、悩みを共有することもできました。「同じ悩みを持った仲間がこんなにいるんだ」と体感でき、感銘を受け、自分自身もルルカフェを主催する立場を経験しました。
活動当初、私が興味を持っていたのは服装に関するルールのみでしたが、この1年の間で他校との交流や、活動の委員長を経験させてもらって、自分自身の校則をとらえる視野が広がりました。2024年10月には、全国の中高生が集まる「ルールメイキング・サミット2024」にも参加しました。
ーーサミットに参加して感じたことも教えてください。
これまでの活動の中で「対話が大事」とずっと聞いてきましたが、「対話とは結局どういうことなのか」「どういう場が成立したら、対話と言えるのか」は難しいと感じていました。ただ、サミットを通じて改めて対話の大事さを体感できました。
立命館守山でも、校則について生徒と先生で対話会を開いたことがあります。反対の先生も参加するので、意見が違う先生と初めてお話をする際には、「何を言われるんだろう」「ルールメイキングの活動をしていること自体を良く思っていないかも」と感じていました。でも、先生は反対する理由や考えを私たちに話してくださいました。
お話をしてみると生徒のことを大事に思っていたり、学校の秩序を守りたいと思われていたりするからこそ反対をされているということが分かりました。アプローチの仕方が違うだけで「過ごしやすい学校にしたい」というゴールは一緒だと感じ、違う意見も1回受け入れて、なぜその考えになるのかを考えた上で、一緒に話し合っていくことが大切だと思うようになりました。
生徒も思いがあれば言っていい。先生は同じゴールを目指す仲間。
ーールールメイキングの活動を通して周囲の人たちとの関係に変化はありましたか。
「立場の違いにとらわれずに意見を表明ができることが大切」という認識の下で、先生も生徒もあだ名で呼び合ったり、思っていることがあったら相手が先生でも言ったりと、生徒と先生は同じゴールに対して、一緒に対等に向かっている仲間として認識できています。
校内でのルールメイキングの認知度も上がってきていて、今年6月には「ルールメイキング委員会(仮)」から正式に「ルールメイキング委員会」として承認してもらいました。そのおかげで、最近ではアンケートをとる際に、回答の数や思いを表現してくれる量が増えたように感じます。
ーーー藤野さん自身、自分の成長や変化を感じる部分はありますか。
ルールメイキングを通じて、自分自身の学校に対するモチベーションが上がりました。以前はただ学校に行って授業を受けて帰るだけでしたが、ルールメイキングについて考えたり、インタビューやアンケートを実施したりすることで、学校のイベントが1個増えたように感じます。すごく楽しんで活動に取り組めています。
それから「生徒が校則に関して考えても良い」と考えられるようになりました。元々は「校則は昔からずっとあるもので、生徒は黙ってそれを守る」というイメージでした。でも、「生徒だって思いがあれば言っていいんだ」と考えが変わりましたね。ルールメイキングを始めてから人前に立つ機会が増え、いろんな生徒に口頭でインタビューをする場面もあったので、前よりアクティブに行動できるようになったとも感じます。
多様性が認められ、みんなが参画する民主的な学校を作りたい。
ーーサミットに応募してくれたとき、藤野さんが「民主主義」の話もされていたのが印象的でした。
立命館守山の教学理念として「平和と民主主義」があります。民主主義は、全員が参画するという意味ですが、今は一部の生徒だけがルールメイキングに関わっていたり、声を上げられる多数派の意見だけで学校が回っていたりする状態で、民主主義とは言えないと思います。全員が関わる校則を考える場合は、民主主義の考え方が適用されないと、全員が納得いくものにはできません。
ーー藤野さんにとってのルールメイキングとはどんな活動ですか。
学校の中でも、校則を守っている人や守っていない人、そもそも校則を知らない人もいますが、それぞれの行動の背景には考えや思いがあるはずです。真っ向から否定をするのではなく、お互いの多様性を認め合い、対話という形で、知ることや納得することが、ルールメイキングの行動やアクションに繋がると考えます。
ルールメイキングの活動は全てがスラスラ進むわけではなく、困難に直面することもあると思います。しかし、そこで立ち止まって諦めるのではなく、仲間と助け合ってチャレンジすることが大事だと思います。私の場合は、学校の中で応援してくれたり、ルールメイキングを一緒にやってくれたりする友達や先生、家族などの仲間がいることで力強く頑張れています。
「ルールメイキング地域イベント」に参加してみませんか?
生徒主体の校則見直しや学校づくりをはじめたい、既に実践している学校の教員や生徒が集まり、各地域ごとで対面・オンラインのイベントを行っています。2月は年に1度の「地域生徒大会」が各地域で開催されます!
参加校によるルールメイキング実践発表や、教員・生徒同士の交流を通じて、自分の学校の活動に繋がるヒントを得られる機会です。
見学・観覧も募集しています。みなさまご参加お待ちしております。
■北海道・東北
【2025年2月末~3月で実施見込み】北海道・東北地域生徒大会@オンライン
■関東
【2025年2月9日(日)】ルールメイキング教員交流会vol.2@カタリバ中野オフィス
■東海
【2025年2月24日(日)】東海地域生徒大会@なごのキャンパス
■関西
【2025年2月2日(日)】関西地域生徒大会@大阪夕陽丘学園高等学校
■中国
【2025年2月8日(土)】中国地域生徒大会@コワーキングスペースAxEL(広島)・くらしき空飛ぶクルマ展示場(岡山)
■九州・沖縄
【2025年2月23日(日)】九州・沖縄教員交流会
【2025年2月24日(月祝)】九州地域生徒大会@オンライン
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