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能條桃子さんと生徒が考える、ルールメイキングのあり方ーー関東児童生徒大会&交流会2024レポート①

関東エリアでルールメイキングに取り組む生徒らが集まり、活動を報告し合うイベント「ルールメイキング関東児童生徒大会&交流会2024」が2024年12月27日、学校法人自由学園(東京・東久留米市)で開催されました。関東近郊の小学校~高校の児童・生徒ら約50人と教員らが参加し、それぞれの現場で進められている取り組みや想いを披露しました。
本レポートでは、イベントの模様を全2回に分けてお届けします。前半となる今回は、ゲストとして登壇した一般社団法人NO YOUTH NO JAPAN代表理事・FIFTYS PROJECT代表の能條桃子さんの講演や参加学生たちとの対話の様子を中心にお伝えします。
相互理解を大切に、仲間を見つける場
ルールメイキング関東児童生徒大会&交流会2024は、ルールメイキング関東地域パートナーを務めるNPO法人School Voice Projectが主催。イベントの幕開けにあたり、同法人理事の逸見峻介さんは「皆さんにとって、仲間が一人でも増えて、今後のヒントが少しでも見つかるような場になってほしい」と挨拶しました。

続いて、会場校である自由学園中等部・高等部の生徒らが登壇し、アイスブレイクを進行しました。参加者は6人程度のグループに分かれ、それぞれ配布された文字を並べ替えて単語を作ります。正解は「そうごりかい(相互理解)」で、自由学園中等部の生徒は「互いの意見や考えをお互いに分かり合うことがルールメイキングには必要。今日は経験も年齢も異なる人たちと対話を重ねていくが、そこで得たものが良い社会に繋がるはず」と訴えました。


「おかしいと思うことを言っていい場がある」と気付いた小学生時代
ゲストの能條桃子さんは、大学生の時に若い世代の政治参画を促進するNO YOUTH NO JAPANを立ち上げ、SNSなどを使って政治や社会のことを発信し、投票に参加する人を増やそうとしています。ほかにも、選挙の立候補年齢を引き下げるプロジェクトや、政治分野のジェンダー平等に向けて20〜30代の女性やノンバイナリーの方に立候補を呼びかけ、応援する活動も推進します。

そうした活動の原点のひとつは、小学5年生のときに参加した神奈川県平塚市議会の「若者青少年議会」という催しだったといいます。子どもが議会に参加して市長に意見を伝える内容で、能條さんは「おかしいと思うことを言っていい場があるんだと、小学生の頃に思えた」と振り返ります。
また公立中学に進学した後にも、家庭の経済状況によって塾に通えなかったり、親の介護を優先するために高校の選択肢が狭まったりする同級生を見て「平等じゃないなと違和感を持っていた」といいます。
高校進学後には、目的が不明瞭な試験勉強を繰り返す中で「自分が何をしたいのか分からないし、『社会』を作っているのは誰なのかも見えない」ことに疑問を持ったといい、「こうした体験が現在の活動に繋がっている」と語りました。
自分が動けば、本当に社会が変わる
能條さんが特に強調したのは、21歳の頃に留学したデンマークでの体験でした。留学期間中に選挙があり、20代投票率が8割を超えている同国では、周囲の同世代が当たり前に投票に行く姿を目にしました。
「皆が、自分の投票に意味があり、社会を変えられると思っている。それが楽しいなと率直に感じました。実際に、友人がメンタルクリニックの無償化を求めて自治体に交渉し、最終的には国の政策として採用されて、現在は25歳未満のメンタルクリニック費用が無料になったんです。意見を伝えて行動すれば、本当に変わるんだということを目にして、私も日本でそういうことをやりたいなと感じました」

帰国後、能條さんがまず取り組んだのは、政治や選挙に関する若者向けの情報発信活動でした。「大学生一人に最初からできることは限られているので、小さなアクションからやろうと思った」といい、次第に活動の幅を広げていきました。こうした経歴を踏まえて能條さんは、自分のアクションを通して社会を変えるためのポイントとして、「あなたが見たい景色に、まずは自分がなって。小さなアクションでいいから、自分が熱中できることから始めて」と生徒らにアドバイスを贈りました。
「どうして学校や社会が変わらないんだろうと思うことは重要なステップ。でも、自分自身もその中の一人のはず。自分自身がまず変わることで、周囲の変化に繋がると思います。私は高校時代、同級生の目が気になってなかなか行動を起こせなかったのですが、今思えば、誰も私のことなんて気にしなかったはず。安心して、焦らずに行動を起こしてほしいと思います。
私は今、『良いトラブルメーカー』でありたいと思っています。日々暮らすコミュニティの中でおかしいことがあった時に、誰かが最初に問いを投げかけないと、何も始まらない。何をどう変えたいかのビジョンを明確にして、周りを巻き込んで、適切な相手にアプローチするのが重要です。私のノウハウや経験が、皆さんに少しでも役に立てたら嬉しいです」
生徒に贈るエールは「まずは自分が楽しむこと」
講演に続いて、東京学館浦安高等学校(浦安市)の生徒2人が登壇。NPO法人School Voice Project理事の武田緑さんが司会進行をする中で、生徒たちは自校でのルールメイキングに関する質問や悩みを能條さんにぶつけました。同校で生徒会長を務める生徒は、生徒会に所属しない生徒がなかなか積極的に活動に参加してくれないことを相談。
能條さんは「どうして動いてくれないのかの理由を考えるのも手です。変えようとしている内容に賛成していないのか、あるいは自ら一人で活動に参加するハードルが高いのかもしれない。私だったら、各クラスから代表2名くらいは参加してもらうなどルールを作ります。参加ハードルを下げながら仲間を増やすのはどうか」とアドバイスしました。

また同校生徒会の副会長を務める生徒は、校内でのスマートフォン利用のルールについての悩みを明かします。同校敷地内では連絡や勉強以外の目的でのスマートフォン使用が禁止されているといいますが、多くの生徒が厳密にはルールを守っておらず、「守っている生徒が損をしている状況」が生まれているといいます。
能條さんはこれについて、「制限がなかったらずっと動画を見てしまって、友達との会話も授業への集中力も無くなってしまう危険はないでしょうか。意外と生徒側もそう感じているかも。生徒自身が本当はスマホのルールをどうしたいのか分かっていない可能性もあるから、まずは思っていることを全て出しあって、良い意味での妥協をしながらルールを作ってほしい」とメッセージを贈りました。

この場では、会場の生徒たちからも質問が相次ぎました。それまでの議論も踏まえ、話題が「より多くの人を巻き込んで活動するコツ」に移ると、能條さんは「まずは自分たちが楽しむこと。そうしたら、少しずつ入ってくる人が増える。それに、全員に同じ熱量の参加を求める必要はないと思う。その人に合った割合で、少しでも自分たちの活動に関心を向けてもらう方法を考えれば楽しめるかも」と回答。質問した生徒は「今、僕は活動をとても楽しんでいます」と笑顔で答えました。
能條さんは最後に、改めて自身の体験を踏まえて生徒たちにエールを贈りました。
「私が被選挙権の年齢引き下げに取り組む中で、『今のルールを守れない奴に、政治家になる資格はない。立候補できる年齢になってから、政治家としてルールを変えればいい』と言われることがありました。それも一つの手段ですが、だからといって今のルールがおかしいと言ってはいけない理由にはなりません。何かを変えようとした時にいろんな立場から反対されることもあると思いますが、その(反対する人の)背景をしっかり知ることが大事。学校の先生と対話する時にも、本音を聞くところから始めると良いと思います」
関東生徒大会&交流会はこの後、参加した各校児童・生徒による事例発表に移りました。その様子は後半の記事でレポートします。
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