見直された20の校則 一人で参加したサミットがくれたきっかけ 

インタビュー

学校事例

ルールメイキングは、生徒が中心となり教員など学校の関係者と対話しながら校則・ルールを見直していく取り組みです。「校則・ルールが変わる」という結果だけではなく、立場や意見の異なる違う人との対話を通じて納得解をつくるプロセスを大切にしています。

連載企画【ルールメイキングから始まるわたしの一歩】では、ルールメイキングやそのイベントに関わった生徒や卒業生、教員から思いを聞くことで、ルールメイキング活動の先にあるものを考えていきます。

杉林新さん

新潟市立東新潟中学校/中学3年生

杉林新さん

2023年12月に生徒会副会長に就任。 2024年4月からきまり見直し委員会として、校内でのルールメイキング活動を進めている。 ルールメイキング・サミット2024に参加。

小柳翔太さん

新潟市立東新潟中学校/教諭

小柳翔太さん

生徒指導主事としてルールメイキング活動を推進。
校則改正を進める上でのPTAや教職員との連絡・調整の役割を担う。

“過ごしやすい学校”を目指して 生徒と教員で進めるルール改革

ーールールメイキングの活動はどのように始まりましたか。

小柳)2023年度に「生徒の手で学校のきまりを見直す」取り組みが始まりました。背景には、多様性を重視する社会の流れや、学校のさまざまなきまりの運用に対して疑問や課題を感じる生徒・教職員の声がありました。具体的には生徒から「なぜ靴下は白でなければいけないのですか?」などの疑問が寄せられたり、教職員間でも「このルールはどういう意図で決められたのか?」といった議論が増えたりしたことが見直しを進めるきっかけとなりました。

杉林)僕自身は生徒会役員として全校生徒の意見を聞く機会が増える中で「時代に合わない窮屈な校則をなくして、生徒が過ごしやすい学校をつくりたい」という思いが出たので、『きまり見直し委員会』に入ることにしました。

ーー『きまり見直し委員会』とは具体的にどのような活動をしていますか。

杉林)きまり見直し委員会には生徒会役員から選ばれたメンバーや各学年の代表、風紀委員長や応援団長など10名が所属しています。現在は、毎週集まって制服や学校指定カバンについての話し合いをしたり、全校生徒にアンケートを取って、自分たちで見直し案を作ったりしています。

小柳)アンケートはまず教員側で作成して、委員会の生徒たちに意見を聞き、必要に応じて修正してから全校生徒に聞く形で進めています。靴下の色と長さについてや髪型についての表記、夏場の体操着登校や学習用具の持ち帰りの許可など約20個のルールがすでに見直されました。杉林さんたちと今見直している制服や学校指定カバンについては、学校運営協議会の方へのヒアリングをしたり、全校生徒にアンケートをとったりして校則を変えたほうがいいと思っている生徒の数を出したりしています。

▲学校運営協議会で制服見直しについて話し合った時の様子。

悩みから行動へ サミットで得られた3つの学び

ーールールメイキング・サミット2024に参加した理由も教えてください。
杉林)きまり見直し委員会で意見の対立があった時に解決方法がわからないという悩みを抱えていた時に、小柳先生からルールメイキング・サミットがあることを紹介され、悩みを解決したいと思い参加することにしました。

小柳)最初は東京会場までの距離があることや教員の引率が難しい状況だったことから、杉林くんも行かないだろうと考えていましたが、せっかくいただいた話なので紹介をさせてもらいました。その後、本人が保護者に相談されて「先生、行ってもいいですか?」と言ってきた時はとても驚きましたが、本人のステップアップのために間違いなくプラスになるし、きまり見直し委員会で活動していることにも繋がる良い機会だと感じました。

ルールメイキング・サミットは、認定NPOカタリバ「みんなのルールメイキング」が主催するイベントです。全国で校則見直しやルールメイキングに取り組む中高生100人が一堂に会し、地域や学年を超えたルールメイキングの仲間や社会で活躍するルールメイカーと出会い、対話し、学びを深め、発信する機会となっています。

ーーサミット当日はどんなことを学びましたか。

杉林)「実証実験」の重要性を学びました。高校生の参加者は校則改正においてお試し期間を設け、生徒の反応を見ながら課題を見つけ、失敗したら改善するという方法を紹介してくれました。企業ボランティアの方からは「新しい機能を追加する際に専用のアプリを使って実証実験を行っている」事例を伺い、対立する意見があれば両方試して確認することが課題解決につながるのだと感じました。

ーー学校に帰ってからはどんなことを実践しましたか。

杉林)サミットで学んだ3つの大切なポイントを全校生徒の前で話しました。1つ目は「仲間との対話の重要性」です。校則を改正したいという自分の意思を仲間と共有することで、同じ目的をもって協力できると伝えました。2つ目は「実証実験の必要性」で、実証実験から良い点や課題点を見つけ、必要なら改善するプロセスを作るべきだと話しました。3つ目は「少数意見を尊重すること」で、多数決では少数派の意見が無視されがちですが、そうした意見にも耳を傾けることが大切だと伝えました。全校集会で発表したことで来年度の活動につなげることができたのではないかと感じています。

▲全校集会でルールメイキング・サミットの参加報告をしている杉林さん。

ーー先生から見た時の杉林さんの変化も教えてください。

小柳)多様な意見を受け入れながら考える姿勢が見られ、委員としての自覚も高まったように感じます。以前は受け身の姿勢が多かった杉林さんですが、サミット参加を機に自分から積極的に意見を発信したり行動したりする姿が見られるようになりました。きまり見直し委員会の話し合いでも、自分の考えを堂々と伝える場面が増えました。

活動の中で見えてきた 自分たちでルールを作る重要性  

ーールールメイキングの活動をどのように捉えていますか
杉林)生徒一人一人の過ごしやすい学校への考え方は違います。だから、自分自身だけではなくて、全校生徒が過ごしやすい学校について考える活動が、ルールメイキングなのだと思います。

サミットに参加した仲間と自分たちの学校の活動の様子に比べると、生徒と先生との連携がしっかりできていることが強みだと改めて感じました。小柳先生のように生徒の意見を受け止めてくれる先生がいて、生徒、保護者の意見を必ず聞いてくれます。だからこそ、生徒も保護者も一緒に考えることができる活動に広がって、全校生徒が過ごしやすい学校について考える意識がより一層生まれていると思います。

小柳)これまではルールについては先生や学校が決め、生徒はそれを守るという形が一般的だと思っていましたが、今はそれぞれのルールが作られている理由に生徒が納得できることが重要だと感じます。もし納得できない部分があれば、生徒や教員が協働して主体的に動き、必要に応じて見直していくことが大切だと思います。

ーーこれからはどんなルールメイキングに取り組みたいですか。

杉林)来年度の生徒会には、改正された校則に残った課題をさらに改善していくための活動を続けてほしいと思っています。自分自身は中学校を卒業して高校生になりますが、生徒にとって過ごしやすい学校なのか、周りに窮屈な思いをしている人がいないかなど考えながら生活を送りたいです。時代に合わない校則がないかを考え続け、1年生のうちは意見を出す機会は少ないかもしれませんが、2〜3年生になったときには先生や周りの生徒に積極的に意見を伝えることで、校則を変えていけるようにしたいです。

小柳)変えたルールが実際にどれだけ浸透しているか、本当に変えてよかったかを検証して次に繋げていくことが大事だと思っています。1回大きく花火を打ち上げるというよりは、毎年見直しをしてブラッシュアップして、必要であればみんなで話し合って変えていく文化を作っていければいいのかなと思います。私が主任を務める生徒指導部が「どうすればいい学校になるのか」を考え、推し進める役割を継続的に担う形を作りたいです。

本校の場合は自分のことだけではなく、学校全体のことを考えて一生懸命意見を言ってくれる生徒の集まりだったので「この子たちに任せても大丈夫だな」と思って活動していました。生徒たちは本当に多様な意見を持っています。それらを自由に言っていい雰囲気や周りがそれを真剣に受け取ってくれる環境を整えることが大切だと思います。「誰かに作られたルールではなく、自分たちで相談して作ったルール」という意識も重要で、ルールの内容そのものよりも、みんなで決めたものを大事にする気持ちが重要だと感じます。それをサポートできるよう、これからも努めていきたいです。

▲生徒総会で全校に向けて話をしている杉林さん。

ーー最後にこれからルールメイキングを始める人や活動中の中高生の仲間に一言お願いします。

杉林)ルールメイキングに取り組む生徒の皆さんには失敗を恐れずチャレンジしてほしいと思います。自分も活動を始める前は「それはできないだろう」という固定観念があり、できそうにないことは否定していました。しかし、委員会のメンバーや先生たちと活動するなかで、やってみないと分からないことがたくさんありました。「チャレンジ精神をもって取り組むことが大切」だと伝えたいです。

また、一緒に活動する仲間を大切にしてほしいです。僕はサミットに一人で参加しましたが出会った仲間との活動を通じて目標を達成するためには、仲間と協力し合い話し合いを深めることが大切だと気づきました。自分と同じ考えの仲間を作って話し合うことで、目標を達成できると思うので、仲間を大切してほしいと思います。

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