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校則への疑問から始まったルールメイキング 「なぜ?」から自然と広がる対話

ルールメイキングは、生徒が中心となり教員など学校の関係者と対話しながら校則・ルールを見直していく取り組みです。「校則・ルールが変わる」という結果だけではなく、立場や意見の異なる違う人との対話を通じて納得解をつくるプロセスを大切にしています。
ルールメイキング・サミットは、認定NPOカタリバ「みんなのルールメイキング」が主催するイベントです。全国で校則見直しやルールメイキングに取り組む中高生100人が一堂に会し、地域や学年を超えたルールメイキングの仲間や社会で活躍するルールメイカーと出会い、対話し、学びを深め、発信する機会となっています。
連載企画【ルールメイキングから始まるわたしの一歩】では、ルールメイキングやそのイベントに関わった生徒や卒業生、教員から思いを聞くことで、ルールメイキング活動の先にあるものを考えていきます。
今回お話を聞いたのは…

星北高等学年・2年生
小原和希さん
ルールメイキング・サミット2024に招待生として参加。
現在は校内でのルールメイキング活動を進めている。

星北高等学園・1年生
鈴木七海さん
ルールメイキング・サミット2024に招待生として参加。
現在は校内でのルールメイキング活動を進めている。

星北高等学園・教諭
岩泉康喜さん
ルールメイキング活動の担当教員。
小原さん・鈴木さんと共に、ルールメイキングの活動拡大を目指している。
中学時代から感じてきた校則への違和感。学校に行きづらい子も通いやすい環境を探して
ーールールメイキングの活動を始めたきっかけを教えてください。
鈴木)文房具が好きで学校にシャーペンを持って行きたいと思っていたのに、私が通っていた中学校ではシャーペンの使用が禁止されていました。また、保健室登校がルール上は許可されているはずなのに、実際には制限されていて、校則に対して不満を感じていました。そのことを母親と話し合う中で、校則やルールの在り方について疑問を持つようになったことが、ルールメイキングに興味を持ったきっかけです。校則でツーブロックや髪染め、ピアスが禁止されているのは、「怖いなどという印象を与えてしまう」という昔からの偏見をそのまま引きずっている状態で、見た目で人を決めつける偏見は良くないとも考えていました。
小原)私も服装や見た目に関する校則に疑問を感じていました。特に前髪やスカートの長さ、靴の指定など時代に合わない校則を時代に合わせて変化させることで、見た目にコンプレックスを持つ生徒が学校に通いづらくなることを防げるのではないかと思っています。また、成長することでスカート丈が短くなることはやむを得ないはずなのに、長さを指摘されることがあるといった理不尽な指導にも不満を感じていて、生徒がより通いやすい学校にするために校則の見直しが必要だと考えていました。
そんな時に岩泉先生から、ルールメイキング・サミットがあることを聞きました。ネットの情報を見てみると、考えて話し合う活動が面白そうだったので、うちの学校でも取り入れたいと思いました。そこで、校則に課題意識を持っている鈴木さんを誘って、参加することにしました。
ーーサミットに参加する前はどんな気持ちでしたか。
鈴木)これまで大人が意見を聞いてくれなかった経験が多かったのですが、ルールメイキングに関わる大人であれば、私の意見もきちんと聞いてくれるだろうと思っていました。それから、自分とは異なる環境で育った人たちの多様な意見に触れられることも期待していました。一方で、多くの人が参加する中で自分の意見が埋もれてしまったり、校則が厳しい学校で頑張っている他の生徒の意見に圧倒されてしまったりするのではないか、という不安も感じていました。
小原)中学時代に学校へ行けていなかった経験から、高校では新しい気持ちで通えるようになりたいと考えていました。私自身は実際に今の学校に入ったことで、学校へ行けるようになりましたが、周りの友達の中には現在も学校へ行きづらい子がいます。そうした子や次に入学してくる子たちが通いやすい環境を作りたいという思いで、サミットに参加しました。ただ、まだ具体的なルールメイキングの活動に取り組んだことがない分、他の参加者についていけるか不安も感じていました。
気づかされたのは、「ルールは大人が勝手に作るもの」という自分の偏見
ーー実際にサミットに参加して感じたことも教えてください。
鈴木)私自身が、「大人は話を聞いてくれない」「どうせ言っても通らない」と偏見を持っていたことに気付かされました。サミットを通じて、「ルールは大人が勝手に作るもの」というイメージから、「ルールはみんなが気持ちよく生活するために作るもの」というイメージに変わりましたね。
他校では既に活動を進めている人が多く、元々は「ルールは守るものだ」という考えを持っていた人が、先生や先輩の影響を受けて柔軟に考えられるようになり、校則を見直そうとしている姿にも驚きました。
小原)まだ活動をしていない私たちに対しても、他の学校の生徒が「何からルールメイキングを始めた?」などと声をかけてくれたので、ルールメイキングについてフラットな雰囲気で楽しく話し合うことができました。ルールに対して「嫌だから」と考えるのではなく、「なぜ嫌なのか」「どうすれば守りやすくなるのか」を深く考えることで、ルールが守りやすくなり、自分の気持ちも整理できたりすることにも気づきました。
私も「ルールは大人が決めるもの」だと最初は思っていましたが、サミットを通して「自分たちのルールは自分たちで話し合って作れる」と気づき、「自分たちもできる」という自信に繋がりました。
ーー岩泉先生は、サミットに参加しているお二人を見てどのように感じましたか。
岩泉)2人は中学校に対してあまり良い思い出がなく、アクティブに活躍する他の生徒の中で、気後れするのではないかと心配していました。しかし、全体での開会行事で鈴木さんが発言する姿や、グループ協議に2人が積極的に参加している姿を見て、心配無用だったと感じました。2人とも全国から集まった生徒たちと楽しそうに意見を交わしており、子どもたちが持っている力を改めて実感できる良い機会になったと感じています。
ルールは自分たちのためにある。自分たちの声で変える校則
ーー今後はどのようなルールメイキングをしていきたいですか。
鈴木)現在は校内に生徒会のような組織がないため、ルールメイキングに関する委員会を作ろうという話が進んでいます。また、以前実施した全校生徒へのアンケートの中で、「食料品を放置しない」という斬新な校則案がありました。とても興味があるので、今後も生徒にアンケートをとることで、ユニークな意見を取り入れたいと考えています。
先生とルールメイキングをする際には、大人と子どもの上下関係ではなく、対等な立場で話し合うことが重要だと感じています。生徒と先生、さらに第三者も加わることで、みんなが平等に意見を交わせたら理想的だと思います。
小原)サミットを通して普段の疑問や自分の意見を言える環境を作ることで、みんなのストレスを軽減できて、学校に行きたいと思う生徒が増えることを学びました。今後は全校生徒にアンケートを取り直して、校則を深く考えたり、話し合ったりする時間がほしいです。「なぜこの校則があるのか」「なくなったらどうなるか」といった点を掘り下げることで、私たち2人だけでは出てこなかったより良い案が出るのではないかと思います。
まだ私たちの学校では本格的に活動が始まっていないため、ルールメイキングがどんなものか知らない生徒が多いと感じています。そのため、まずはルールメイキングの基本から理解を深めてもらい、土台を作っていけば活動が始めやすいのではないかと思っています。
また、学年やクラスごとに考え方が異なるため、ルールメイキングに関わるメンバーを各クラスから選出し、それぞれのクラスの意見を集めて共有したら面白そうだと考えています。
岩泉)本校では、不登校経験のある生徒を多く受け入れており、本人のありたい姿や、望んでいる姿に近づけるようにサポートしていく「解決志向のアプローチ」を教育に取り入れています。校則やルールについても生徒の意見を取り入れるべきだと考え、実践してきました。特に、髪型や服装に関しては、生徒が「個性を表現したい理由」を理解する機会を設け、細かい指導ではなく、自己表現を受け入れる方針に変えました。今後もルールメイキングの取り組みを通じて、学校や教師に対する抵抗感を減らし、生徒たちと一緒に居心地の良い集団を作ることを目指していきたいです。
ーーこれからルールメイキングに取り組む生徒や先生に一言どうぞ。
小原)ルールは自分たちのためにあるものであって、自分たちを苦しめるものではありません。「自分たちじゃ無理だと思った当たり前も、変えることができる」という自信を持って活動してほしいと思います。
鈴木)ルールメイキングの活動を通して感じたのは「言わないと始まらない」ということです。活動前は「大人が話を聞いてくれない」という印象がありましたが、「やってみよう」と決意して活動を始めたことで、その印象が大きく変わりました。普段の軽い日常会話から始めて、学校のルールについても「なんで?」と軽く質問をすることで、相手も答えやすくなり、自然に対話が広がると思います。
岩泉)学校は本来、子どもたちの権利を守るべき場所ですが、これまで十分に守られていなかったと感じています。不登校の問題も、子どもたちの声に耳を傾けず、子どもを一方的に教えられる存在として見てきたことが根底にあると思います。本校では、学校の運営方針に「子どもアドボカシー」を取り入れ、生徒たちの声を尊重することを大切にしています。ルール作りは生徒だけでなく、先生も一緒に参加し、ルールを明文化して全員で共有する必要があります。より良い居場所を作るために、今後はどんなルールが必要かを生徒と先生が一緒に話し合う機会が持てれば良いと思います。
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