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【保護者・地域の方へ】学校や先生に意見を伝える方法と対話のポイント
お知らせ
こんにちは、認定NPO法人カタリバ「みんなのルールメイキング」事務局です。
「みんなのルールメイキング」は、生徒が中心となり先生や関係者と対話しながら校則・ルールを見直していく取り組みです。この活動に取り組む学校をサポートしたり、多くの学校が取り組みやすくなる環境を整える支援を行っています。
さて、今回この記事では保護者・地域の方に向けて、学校や先生に意見を伝えるための手段・方法について一緒に考えていきたいと思います。
保護者の声として、つぎのようなお悩みを耳にすることがあります。
たとえば…
- 校則・ルールが細かく指定されており、新学期にむけた準備物の用意が難しい。
- 校則や生徒指導が子どもに合っていなくて学校に行くことをしぶりはじめている。
- 学校に意見を伝えたいけど「モンスターペアレント」と思われたくない。
- 保護者が学校に意見をすることで、子どもに不利益が生じないか不安。 など
この記事では、主に校則・ルールや生徒指導に対して疑問や困り事を感じている保護者に向けて、学校や先生に意見を伝える方法やポイントをお伝えしていきます。
保護者が学校へ意見を伝えることの大切さ
保護者が学校に意見を伝えるとなると、先生にとって迷惑にならないか、モンスターペアレントだと思われないか、子どもに何らかの不利益が生じないか等を懸念して、慎重になる方は多いのではないでしょうか。
学校・先生への「リクエスト」は「クレーム」ではない
保護者が学校や先生に意見をすること自体を「クレーム」だと考える方は多いのではないでしょうか。
子どもや保護者が困っていることがあり、正当な理由がある場合、学校や先生に「相談・要望」をすることはリクエストであってクレームではありません。
相談・要望の伝え方のヒントとして、たとえば…
- 事実として何が起こっているのか
- どんなことで困っているのか
- どのように学校・先生に動いてもらえたら問題が解決しそうなのか
- またはどうしたら解決できるか一緒に考えたい・相談したい など
問題を整理した上で「相談・要望」として伝えることをおすすめします。
感情的に物事を伝えると受け取る先生の感情としては「クレーム」だと感じてしまう可能性があります。先生自身も早急に要望に応えようとしたことで、適切な対応がとれない場合もあるかもしれません。問題解決を急ぎすぎずに丁寧なコミュニケーションを先生と取ろうとする心がけが大切です。
保護者と学校の相互理解や信頼構築のために、大切なコミュニケーション
保護者に対するある調査によると、担任とのコミュニケーションが取れているほど学校への信頼度が高くなる傾向が分かっています。学校としては保護者とコミュニケーションを取り、相談・要望を聞き出して、学校運営を改善をすることは大切なことだと捉えられています。
また先生に対する調査によると、要望が寄せられたときの感情としては「貴重な情報を寄せてくれた感謝」を感じている先生が多く、内容によっては「解決できるだろうかという不安」を抱いていることが分かっています。(*3)
つまり、先生方に相談・要望を整理して伝えることで、先生方も求めている学校生活が充実する貴重なヒントとして聞き入れてくれるので、慎重になりすぎずに伝えてみることが大切です。
文部科学省からも校則を見直す際は「保護者等の学校関係者から意見を聴取した上で定めていくことが望ましい」と明記しており、よりよい学校づくりのために保護者の声や参加を促進していくように学校に伝えています。
保護者が学校に意見を伝える方法とは。さまざまな選択肢があります。
それではどのように保護者が先生方に意見を伝えていくとよいのでしょうか。急を要する場合を除き、校則・ルールや生徒指導に関して一般的な手段・方法をお伝えしていきます。
学校評価アンケート
学校評価アンケートとは、学校の教育活動や学校運営の状況について生徒・保護者・地域の方からの評価に基づき、学校の運営改善を図る目的のアンケート調査です。これは学校教育法に基づき、全ての小中高校(幼稚園、中等教育学校、特別支援学校、専修学校等も含む)が実施することが定められています。多くの学校は年に1-2回程度、学期末頃に実施し、匿名式のアンケート形式で対応している場合がほとんどです。匿名の記述式が主なため、意見を伝える際の障壁は少なく、他の方法と比べても伝えやすい方法です。(*4)
個人懇談会・学級懇談会などで伝える
保護者懇談会とは、保護者と先生が意見交換を行う懇談会です。これは先生と1対1で行う個人懇談会形式と、同じ学級の複数の保護者と先生とで行う学級懇談会形式があります。実施時期は学校によって異なり、年間行事に含まれている場合もあれば、必要に応じて開催する場合があります。担任や学校への要望・指導方針等の話し合いをするとともに、先生と保護者間での信頼形成、保護者同士の交流を目的に開催しています。先生方に要望を伝えるだけでなく、まずは先生や学校の方針を聞いた上で、一緒に改善案を考えていく対話的な姿勢で伝えることがポイントです。(*5)
PTAの会議で議題に挙げる・挙げてもらう
PTAはParent – Teacher Associationの略で、保護者・先生・職員が協力し、子ども達の健やかな成長のために活動する団体のことを指します。 PTAの活動内容や選出方法などは学校によりさまざまですが一般的には役員と委員が選出され、役員会で立てた年間計画に従い、学校行事等のサポートや総会等を実施します。ご自身が役員・委員となり意見を伝える方法もありますが、既に役員・委員をしている保護者を介して会議の議題に挙げてもらう方法もあります。(*6)
学校運営協議会で意見を伝える
学校運営協議会は保護者や地域住民の意見を学校運営に反映し、地域とともにある学校づくりを実現するための仕組みとして、2004年に各学校に設置するよう制度化されました。
教育委員会が設置する組織で、校長・先生をはじめ、生徒、保護者、地域住人、その他学校運営活動を行うNPO等も必要と認められた場合に協議に加わることができます。原則的には学校運営活動を主体的に行う方を校長が選出します。この場合もご自身が協議委員となるか、協議委員の方を介して議題に挙げてもらう方法があります。(*7)
【参考事例】保護者の意見も交えたルールメイキング活動の事例
さまざまな方法で学校に意見を伝えることができることが分かりました。本章では実際に生徒・先生・保護者・地域の方とともにルールメイキングを行った事例を紹介します。
【福井県】校則・ルールの見直し体制を明確にする学校側の工夫も「校則見直しガイドライン」策定
「校則見直しガイドライン」を策定し、どのように校則・ルールを図るのかを明文化する学校も増えています。ガイドラインは生徒・先生・保護者もどの場で自分の意見を伝えられるのか、どこで協議をするのかが分かるため、誰もが関わりやすい環境をつくることを目的としています。
福井県小浜市立小浜中学校では校則の改定体制を図のように整理しました。学校評価アンケートや保護者懇談会・PTA・学校運営協議会等の場を活用して、保護者の意見反映をする仕組みを整えました。
【岐阜県】大垣市立東中学校 生徒も大人も創り手になれる学校づくり
岐阜県の大垣市立東中学校では「PTA会議」の場を活用して、保護者を交えたルールメイキング活動を実施しました。
学校方針として「生徒が創る自分の学校」を掲げている同校では、保護者も同じように学校の創り手となってほしいという思いから「制服フォーラム」を開催。同校や校区の小学校から、保護者25名が参加しました。
「制服フォーラム」は制服の在り方に関して、保護者や地域もともに考えることを目的で開催され、保護者の立場から機能面、金銭面、ジェンダー等の観点から課題やアイデアを集めました。
同校の制服はセーラー服・学生服を採用しており、新型コロナウイルス感染対策として洗いやすいようにと体操服を着用している生徒が大半を占めている現状があります。
保護者からは…
- 制服代が7~8万円くらいして、とても高い
- 高い買い物をしたのにコロナの影響で着る機会が少ない
- 成長期だからサイズ調整ができなかったり、買い直さないといけない
- きちんとしたジェンダーレス教育を学んだ上で制服を性別に関係ない形にしてほしい
という金銭面・機能面・ジェンダー面での率直な意見があがりました。
制服は必要かという問いについては…
- 制服がないと何を着せたらいいか迷う
- 式ではきちんとした格好をしてほしい(私服だとまとまりがなくなる)
- ブレザーのようにジャケットだけを統一して他は選択制にしてはどうか
- 既製品のファストファッション製品と組み合わせてはどうか
などの意見があがりました。
成長期における心身の変化に合わせて、制服は選択ができるようにしたり、既製品と組み合わせて身体の成長に合わせて気軽に購入ができるようにするなど、自由にアイデアを出しました。(*8)
同校では、生徒主体のルールメイキングを実践しているものの、生徒がいきなり大人に提案するのではなくまずは保護者同士での対話の機会をもち、そこからさらに生徒と保護者が対話を重ねていく工夫を凝らしました。生徒の提案を評価する場ではなく、お互いにアイデアを持ち寄ることで、対等に対話ができる環境づくりに努めました。
同校の石橋校長先生によれば「学校は生徒、先生、保護者、地域などみんなでつくるもの」と話し、子どもたちだけでなく、大人も創り手になれる学校を目指し、ルールメイキングを進めていると語ります。
【大阪府】泉大津市立小津中学校 生徒の生徒による生徒のための校則
大阪府の泉大津市小津中学校では「PTA会議」「学校運営協議会」の場を利用して、保護者や地域の方々を交えたルールメイキング活動を実施しました。
同校では新しいルール変更を行うにあたり、PTA・学校運営協議会との対話を校則改正の手順の中に取り入れました。それによってルールメイキング活動を行う生徒たちが学校運営協議会の方々への提案・議論を経て、校則見直しをすることができました。
学校運営協議会にて行われた対話の場では、生徒たちが新制服(新標準服)、iPadの運用方法について提案。
制服は動きやすさ、洗いやすさ、機能性、多様性への配慮を考慮した上で、制服の見直しを始めることや、一年中体操服を着用しても良いことや学校指定の制服は残すことを検討していることを報告し、承認を求めました。
協議会からは…
- 制服に失礼がないように礼を尽くす、という意味があることを考えてほしい
- 儀式など、ここいちばんという時は、統一性がある方がいい
- 式典で礼を尽くす尽くさないも、個人の考えに委ねられるところであり、その意味でルールメイカーの意見(個人の判断を尊重すること)は本質をついている
- 今回の提案は多様な他者を認めることにもつながる
- 学習にふさわしい服は着心地のいい服であるべきと思う
などの意見があり、生徒は「新原案ではあくまで選択肢を増やすために制服を見直すようにする。また体操服も許可しようと考えている。自分で選ぶことを大切にしたい。」話しました。
iPadは明確なルールを決めるのではなく、活用三原則をつくり、それに則ったルールを考えることを提案しました。
協議会からは…
- 生徒主体でルールを決めるとしたら、その責任を生徒が負わないといけないのではないか
- 全員が適切に自己管理できない現状なら、最低限のことしかできない仕様にするしかないのでは
- 目標や原則は良いが、そこに向けたプロセスに課題がある
- 当初はわたしたちも規制やペナルティばかりを考えていたが、どう使いたいかや、ルールの目的を生徒一人一人で考えないと、本人の改善にはつながらないと考えるようになった
- 自分たちのルールを自分たちで管理することを考えている
- ルールメイカーが、全校クラス会議を開き、一人一人が考えた上で、原則に基づいた細かなルールや使用方法を改めて決める
などと回答し、単にルールづくりをするのではなく、よりよい方法を模索していると話し、大人も生徒も一体となった対話の場をつくることができました。(*9)
後に、同校では上記を考慮した上での新制服の具体的な提案が承認され、2023年1月から新制服(新標準服)が随時施行されています。
また、iPad活用ルールも、地域の方の意見をふまえて全校で再度クラス会議を開いた上で、三原則に基づいた生徒主体の運用がなされています。
このようにPTA会議・学校運営協議会の場を活用することで、より具体的な学校運営のひとつに多くの人が関わり、対話を生むことができるのではないでしょうか。
【さいごに】子どもたちや先生と対話をする上で大切にしたいこと
はじめに学校に対して保護者が意見を伝えることは、よりよい学校づくりのために必要なことで、先生方も意見を大切に考えていることが分かりました。つぎに具体的にどういった場面で意見を伝えることができるのか、一般的な方法を中心にお伝えしました。また保護者の意見を取り入れながら、ルールメイキングを行った事例を紹介しました。
保護者の意見を取り入れることに前向きですが、どのような形で進めるか悩んでいる学校があれば、そのヒントとなるかもしれません。先生方に情報共有をしてみることもひとつの方法かもしれません。
さいごにみんなのルールメイキングでは、対立ではなく対話を通して納得解をつくるプロセス自体を学びの機会と捉え、子どもたちに身近な校則・ルールを題材に学校に対話を届けるサポートを行っています。
わたしたちが対話の指針として大切にしているのは、つぎの「みんなのルールメイキング宣言」です。これはルールメイキングに取り組む生徒・先生・有識者と一緒につくった3つの原則と9ヶ条の宣言がまとまった指針です。
子どもたちや先生と話す際には、この指針が参考のひとつになることを願っています。
ルールメイキング宣言
全国の中学・高校の校則やルールを対話的に見直す「みんなのルールメイキング」プロジェクト。校則見直しのサポートを通して探究学習の促進、学校に対話を届けることを行っています。
また学校に関わるすべての人がよりよい学校づくりに関われる機会が増えていくことを応援しています。
※現在「みんなのルールメイキング」では保護者や地域の方からのお問い合わせ窓口は設置していません。また保護者・地域の方へのサポートも実施していませんので、お困りの方はまずは子ども達が通学されている学校にご相談ください。
*1 文部科学省「校則の見直し等に関する取組事例について」https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1414737_00004.htm
*2 文部科学省「生徒指導提要(改訂版)」https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1404008_00001.htm
*3 高知市立小高坂小学校 高知県教育センター「多種多様な要望から保護者とつながろうとする学校づくり」https://www.pref.kochi.lg.jp/soshiki/310308/files/2009041000138/2009041000138_www_pref_kochi_lg_jp_uploaded_life_91879_326615_misc.pdf
*4 文部科学省「学校教育法(昭和二十二年三月二十九日法律第二十六号)」https://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/others/detail/1317990.htm
*5 スタディピア「保護者懇談会|小学校用語」https://www.homemate-research-elementary-school.com/useful/glossary/elementary-school/2545501/
*6 文部科学省「PTA・青少年教育団体共済法」https://www.mext.go.jp/a_menu/ikusei/ptaseishounen/index.htm
*7 文部科学省「コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)」https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/community/suishin/detail/1313081.htm
*8 岐阜新聞WEB「制服見直し、親の目線で意見 岐阜・大垣の中学、生徒会とも議論」https://www.gifu-np.co.jp/articles/-/145241
*9 小津中学校「【小津中】学校運営協議会×ルールメイカー 校則改定、結論は・・・!?」https://ozu-jhs.note.jp/n/nbae2be29183b
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