- レポート
- 第11回教員交流会 弁護士の視点を取り入れたルールメイキングとは?
第11回教員交流会 弁護士の視点を取り入れたルールメイキングとは?
こんにちは、ルールメイキング事務局です。
対話的な校則見直し、生徒主体の学校づくりに取り組んでいる先生方のコミュニティ「ルールメイキング・パートナー」では、月に1回程度、定期的に教員交流会を開催しています。
7月27日に開催された第11回教員交流会のテーマは「ルールメイキングで弁護士との対話を取り入れた学校の実践報告 / 弁護士とのお話し会 ━校則見直しについて質問してみよう━」。
ゲストとして、純心中学校・純心女子高等学校の森俊雄先生と、4名の弁護士が登場。前半に、弁護士の視点をルールメイキングに取り入れた活動事例として森先生の発表があり、後半はブレイクアウトルームに分かれて各弁護士とのお話し会を行いました。
弁護士とともにルールメイキングを考える講師派遣制度とは?
「外部講師派遣制度」とは、校則見直し・ルールメイキングに関連するスキルや専門知識を持つ講師の方と学校をマッチングする制度です。
弁護士の方以外にも、ルールメイキング・コーディネーターやみんなのルールメイキング事務局職員を講師として学校に招くことができます。
例年、各校でルールメイキングの活動が深まる秋から冬の時期に、担当の先生方から事務局へ以下のような相談が寄せられることがあります。
・ルールメイキングを進める中で生徒はルールをなくすことばかり考えている様子。「なぜルールがあるのか」「ルールが必要な理由」もしっかり考えてほしい。
・「ルールを変えたい理由」は挙がるものの、生徒たちの要望が中心になってしまい教員も納得するような根拠や裏付けが弱い。判断基準や指針が必要だと感じる。
・「校則の合理性」というけれど、教員も「ルールの合理性」について詳しく知らない。共通の知識や基準を持つ必要を感じる。
このような悩みやお困りの解決に役立つレクチャー・対話を弁護士の方が実際に学校に訪問し、実施しています。
具体的には、生徒たちが「ルールはない方がいい」と校則の存在意義を十分に理解できておらず、ルールづくりの前段階で足踏みしている場合。例えば、次のようなテーマで派遣レクチャーを行っています。
- ルールの出発点「自由・権利・平等」
- 身近なルールについて考えてみよう
道路交通法から考える「集団の安全」
スポーツから考える「集団の目標達成」- 「よいルール」ってどんなルール?
ルールに必要な3要素ー必要性・許容性・プロセスー- 実際の校則について考えてみよう
また、先生方にむけたレクチャーも実施しており、先生たちの間でルールに関する共通認識を深める機会としても活用されています。
「活動の軸となるキーワードを得られた」弁護士との対話の事例ー純心中学校・高等学校
前半は、ルールメイキングで弁護士との対話を取り入れた学校の実践報告。純心中学校・純心女子高等学校の森先生(生徒会顧問)の発表がありました。
学校情報
・創立年:1935年
・所在地:長崎県長崎市
・全日制/普通科/中高一貫の女子校(私立)
ルールメイキングのパートナー校参加の背景として、生徒の人権を侵害する恐れのある校則に対する社会の受け取り方の変化、少子化や学校改革の一環があったといいます。また、新型コロナウイルスによって生徒の外部との関わりが減るなかで、成長機会を増やしたいという思いもありました。
上記の背景から、2022年2月にパートナー校へ参加し、生徒会役員選挙が行われる5月には高校生徒会が中心となりルールメイキングをスタートしました。その後、9月には中学生徒会メンバーが合流します。
11月には、オンラインではなく実際に講師に来てもらうことで生徒たちも「自分事」にしやすいのではないかと思い、外部講師派遣制度を利用しました。ちょうどこの時期、校則見直しに向けた生徒アンケートの実施にあたり、どのような基準で項目を絞ればよいのか悩んでいた時期だったそうです。
レクチャーは次の3つのテーマで行われました。1人1台所有しているパソコンを活用し、相当性と必要性という軸に基づいて、見直すべき校則を講師とともに考えました。
第1 ルールを考える
・なぜルールが必要なんだろう?
第2 ルールを決める、変える
・ルールを変える出発点「権利・平等」
・ルールを考えるうえでの大切な「3つの視点」
第3 ルールの3つの視点から校則を分類してみよう(ワークショップ)
1人1台所有しているパソコンを活用し、相当性と必要性という軸に基づいて、見直すべき校則を講師とともに考えました。
生徒からは「ルールをつくるうえでのポイント(相当性・必要性)が分かった」「校則の『軸』を考えてみて、純心の伝統を守りながら、時代に合わせ変えていきたい」といった感想が寄せられました。
その後、教職員・中高保護者へのアンケートや、生徒会による要望書の提出・提案等を実施。今年度はじめには、髪型・靴下・制服の移行期間等の6項目に関して、校則見直しが発表されました。
現在は、見直した校則についての影響評価や外部交流会への参加等を計画しているそうです。
森先生の発表後は、交流会の参加者との質疑応答がありました。
「コーディネーターや事務局も講師として含まれる外部講師派遣制度のなかで、弁護士を選択した理由は何ですか」という質問に対しては、「校則を考えるうえで『ルール』そのものや存在意義を理解することが重要だという思いがありました。結果として、弁護士の先生をお招きすることになりました」との回答。弁護士という職業そのものにこだわっていたのではなく、ルールについて深掘りした学びをしたいとの目的意識のもと選択されたそうです。
また「弁護士の専門的な知見に触れて、先生ご自身が学んだこと」として「それまでは『校則は守らせるもの』という意識が強かったですが、今は『ルールとは何か、誰のためにあるのか』という部分も考えるようになりました」と語っていました。
4名の弁護士との少人数お話し会
後半は、4名のゲスト弁護士をお迎えし、ブレイクアウトルームにて少人数でのお話し会。
市村和也先生 大阪弁護士会 公教育委員会 主権者教育
飯田亮真先生 大阪弁護士会 校則と法教育を専門に大学院にも在籍中
小寺弘道先生 大阪弁護士会 公教育委員会 出張授業も担当
坂栄鷹子先生 第一東京弁護士会 憲法の出前授業等も担当
お話し会終了後には、参加者や弁護士の方から
「生徒が自立していく中で、弁護士の方の知見をいただくことは非常に大切だと感じました。派遣制度を利用する際も『社会全体がこういう風に動いているから、○○な視点で考えたら良いのでは?』といったサポートをいただけたらと思います」
「私たちのグループでは、中高生よりも年少である小学生たちにどうルールを考えてもらえたら良いのかを話し合いました。各年代に応じた工夫が必要だと感じました」
という感想が挙がりました。
今回の交流会では、弁護士という新しい視点を踏まえてルールについて対話する良い機会になったのではないでしょうか。
先生同士のコミュニティで実践のヒントを学びませんか?
ルールメイキング・パートナーは、生徒主体の校則見直しや学校づくりをはじめたい、既に実践している小・中・高校の先生が無料で参加できるコミュニティです。
登録には学校承認は不要で、先生個人での申込みが可能です。毎月、教員交流会と題したオンライン勉強会・交流会に参加できる他、ルールメイキング事務局との無料相談や、生徒同士の交流会への招待等をご案内しています。
新着記事
カタリバではルールメイキングに取り組む
学校・先生・自治体をサポートしています
すでにはじめている学校や自治体、個人の方のお問い合わせもございます。
まずはどのようなサポートが行われているかご覧いただき、お気軽にお問い合わせください。