全国でルールメイキングに取り組む学校が東京に集結!〜ルールメイキング・サミット2023〜

こんにちは、ルールメイキング事務局です。

去る2023年9月24日(日)、東京都新宿区にある桜美林大学の新宿キャンパスにて「ルールメイキング・サミット2023」が開催されました。全国で校則をはじめとするルールメイキングに取り組む中高生が仲間と出会い、対話し、各界のトップランナーとともに生徒主体の学校づくりについて考える本イベントは、今年で2回目の開催です。

当日は、全国25都道府県44校の中高生ルールメイカー100人を「ルールメイカー100」と称して東京会場へ招待し、社会で活躍するルールメイキングのトップランナーとのトークセッションなどを実施。全国でルールメイキングに取り組む中高生や先生方に加え、約100名の教育関係者をはじめとする一般観覧の方々が集まりました。プログラムではルールメイカーそれぞれの活動を共有し、振り返り、新たな学びと出会いを得た一日となりました。

本記事では、そんな出会いと学びに溢れた一日の様子を、会場の熱量そのままにお届けします。

全国から中高生ルールメイカー100名が集結!

2023年4月より「こども基本法」の施行とともに「こども家庭庁」が創設。現在では同法を軸としながらこども家庭庁を中心に、子どもの意見表明の機会づくりやいかに政策に意見反映するかといったことが模索されています。 

認定NPO法人カタリバでは、2019年から学校の校則を題材に、中高生にとって身近なルールを対話的に見直すプロジェクト「みんなのルールメイキング」をスタート。現在では全国250校以上へ拡大し、自治体との連携も進んできました。

昨年開かれた「ルールメイキング・サミット2022」では、全国のルールメイカーたちが一堂に会し、互いの課題や知見を共有し合うことで、各々の取り組みをよりレベルアップさせる貴重な機会となりました。

そして今回、さらにスケールアップした「ルールメイキング・サミット2023」では、昨年の倍以上である全国44校から中高生ルールメイカーとその実践事例が集結。サポーターとして一般社団法人Cift代表理事の石山アンジュ氏、一般社団法人HASSYADAI social代表の三浦宗一郎氏、ナビゲーターとして熊本大学教育学部准教授の苫野一徳氏、株式会社Deportare Partners代表の為末大氏、認定NPO法人カタリバ代表の今村久美が登壇し、社会で活躍するルールメイカーとして若きルールメイカーたちと対話を行いました。

ルールメイキングサミット2023カタリバ
ルールメイキングサミット2023カタリバ

あなたの学校ではどうしてる?ルールメイキングに取り組む生徒たちの100物語ピッチ

ルールメイキング・サミット2023の最初のプログラムは、全国から集まったルールメイカー100の一人ひとりが2分間の自由ピッチを行う「100人100物語ピッチ」。ルールメイキングで得た学びや成長はもちろん、今抱えている不安や悩みなどの葛藤、社会や周りの大人に対して思うことなど、自由に表現できる時間です。

ルールメイキングサミット2023カタリバ

私はルールメイキングを通して、これから学校に入ってくる後輩たちが過ごしやすい環境をつくっていきたいです」。創立120周年を超える歴史と伝統のある学校から参加した生徒は、堂々とした立ち姿と大きな声でそう語りました。「ただ古いからという理由で校則を変えるのは本質的じゃない。100年前に誰かがつくったこのルールは、当時の目の前の生徒たちを思ってつくられたルールのはず。時代に合わないかもしれないけれど、その背景にあった想いをちゃんと考えた上で向き合っていきたいんです」。

学校が培ってきた歴史と伝統を受け継ぎながら、新しい時代に向けてルールはどう変わっていけば良いのか。表層的なルールではなく、その背景にあった想いを汲み取ってルールメイキングに取り組んでいると話す方もいました。

ルールメイキングサミット2023カタリバ

逆に、創立10年に満たない新設された学校から参加した生徒は「今の話を聞いて、私たちが取り組むルールメイキングが今後学校の文化になり、歴史になり、伝統になるとわかった。今の自分たちさえ良ければいいといった考えではなく、後輩たちのことも考えてルールメイキングに取り組んでいきたい」とコメント。ルールメイカー同士の気づきや学びの共有から、より高い視座を獲得したようでした。

別のグループでは「ルールメイカーのタイプ」について議論が白熱。熱い想いで突っ走るタイプのルールメイカーもいれば「僕は他のみんなみたいにぐいぐい引っ張っていけるタイプじゃない。真正面から衝突するのではなく、一人ひとり丁寧に話して仲間を集め、少しずつ変えていけたら」と話すルールメイカーも。グループにいたファシリテーターからは、「ルールメイカーにもさまざまなタイプがあっていい。足りないところは補い合って、チームを組んで進んでいければ素敵だよね」と、協働についてのヒントが出されていました。

ルールメイキングサミット2023カタリバ

また、ルールメイキングの中でそれぞれが抱える課題についても共有され「どうすれば先生たちにわかってもらえるのか」と質問した生徒に対しては、「生徒vs先生の対立構造をつくるのではなく、先生も仲間にしてしまえば良い。話をわかってくれる人は必ずいるはず」と返す生徒も。出された課題に対し、壁を乗り越えてきた経験から解決策を提示し、互いに協力し合う様子が見られました。

社会で活躍するルールメイカーたちの姿

続いてのプログラムは会場が大ホールへと移り、学校の中でのルールメイキングから社会のルールメイキングへ、視点や考え方を広げていくインスパイアセッションが行われました。壇上には社会で活躍するルールメイカー2名とナビゲーターが登壇。トークセッションを通じて校則見直しと社会課題解決の実践の共通点を探りました。

ルールメイキングサミット2023カタリバ

冒頭、教育学者の苫野氏からは「『自分たちの社会は自分たちでつくっていく』が民主主義の根本。もっと身近な話に置き換えると、自分たちの所属しているコミュニティ、つまり学校や地域を自分たちでつくれるようにする必要がある。ルールメイキングはそうした意義があると思うし、みなさんとともに取り組んでいけることを楽しみにしています」とコメント。若きルールメイカーたちと一緒に描く未来に期待を寄せました。

「大切にしている学び方がある」と切り出したのは、弊団体である認定NPO法人カタリバ代表の今村。机上で知識を学び、理解してから実践するのではなく、経験を通じて学ぶ経験学習の大切さについて訴えました。また「うまくいかなかったことやうまくいったこと、さまざまあると思います。経験してきたことを誰かに話して内省し、新しい状況に適応できるようにどうすれば良いかを考え、実践し、また語り合う。このサイクルを回していくことで学びがより充実したものになると思います」と、他者との対話の中で学ぶ大切さについても触れました。

場面が転換して、テーマは「学校でのルールメイキングは社会へどうつながっていくか」について。社会でルールメイキングに取り組む先輩たちから後輩へ向けてメッセージが送られました。

「ピッチの様子を見ていて率直にやべえなと思いました。とても進んでいるなと衝撃を受けました」と語ってくれたのは一般社団法人HASSYADAI social代表の三浦氏。「僕らの時代は『何かおかしい』とモヤモヤを抱えながらもルールを守る他無かった。ルールメイカー100のみなさんの話を聞いていると、違和感に向き合って見直していこうとしている。とても素晴らしいことだと思います」と素直に感動を言葉にしました。

ルールメイキングサミット2023カタリバ

一般社団法人Cift代表理事の石山アンジュ氏は、ルールを変えていく上で難しく感じていることを次のように話します。

対話の際に難しいのは『言語の違い』です。生まれた世代によって見てきたもの、触れてきたものが違う。だからこそ、相手に伝わりやすい言葉で話すよう意識してきました。たとえば横文字。『シェアリングエコノミー』と言っても内容がなかなかイメージできない。であれば、昔当たり前のように行われていた、ご近所同士でお醤油やお味噌をあげたりもらったりとのやり取りを使って『これが共有する、シェアするということなんですよ』と説明する。そうすると伝わるんですよね」。

ルールメイキングサミット2023カタリバ

「それってとても大事なことですよね」と返したのは、進行を務めた株式会社Deportare Partners代表の為末氏。「新しいものに抵抗感を覚えても、過去に似たような経験をしていると受け入れやすくなる。心理的なハードルを下げるためにも、相手と共通する言語で話すというのはとても大事だと思います」と重ねて強調しました。また、二人の話を受け「自分を押し付けるのではなく、相手によって柔軟に自分を変えていける構えが大事なんですね」と、自身の気づきも併せて共有しました。

ルールメイキングサミット2023カタリバ

社会での取り組みや困難、そして壁の乗り越え方など、三者三様のルールメイカーの話に聞き入ったルールメイカー100のみなさん。彼らにとって、ピッチでの学びが社会へ接続し、より学びが昇華された時間となりました。

ルールメイキングサミット2023カタリバ

サミットを経て、学校で実践したいアイデアとは。テーマごとの分科会

インスパイアセッションを終え会場は再び教室へ。各教室に分かれ、それぞれの興味関心を深めたり、実践に役立つアイデアを考えました。

大ホールでは、教員をはじめとする観覧の方々を対象とし、トークセッションの延⻑戦を実施。中高生に伴走する大人、とくに「学校‧教員」の視点から、どのようにルールメイキングを推進していくことができるかを考えました。先生方からは積極的に課題や事例の共有がされ、ホールという環境ながら活発な対話が行われました。

ルールメイキングサミット2023カタリバ
ルールメイキングサミット2023カタリバ
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会場変わって各教室では、インスパイアセッションを経て「自分の学校のルールメイキングを前進させるために明日からどんなことができるのか」 を考えるワークショップと企業ボランティアの皆さんとの1on1形式で考えるワークを進行。みんなで考える人や、さまざまな立場でルールメイキングに関わる大人と1対1での対話を通して考える人など、自分の今の状態に合った方法で一人ひとりがアイデアを考えていきました。

ルールメイキングサミット2023カタリバ
ルールメイキングサミット2023カタリバ
ルールメイキングサミット2023カタリバ

会場の様子で特に印象に残ったのは、ルールメイカー100と大人のみなさんの表情です。お互いに真摯に向き合おうと目線を合わせて対話。インスパイアセッションで石山氏や為末氏が話していたように、異なる価値観や立場の人と歩み寄ろうとする姿勢が見られました。

ルールメイキングサミット2023カタリバ
ルールメイキングサミット2023カタリバ
ルールメイキングサミット2023カタリバ
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出会いと感動。ルールメイキングのこれから

ルールメイキングサミット2023カタリバ

分科会を終えいよいよ最終プログラムへ。イベント全体を振り返りながらクロージングセッションを行いました。司会の今村から今日一日の学びや気づき、感動について問いが投げかけられた際は、会場からたくさんの手が上がり、多くの声が聞かれました。

ある生徒は「ルールメイキングに取り組んでいる人がこんなにたくさんいるなんて知らなかった。うちの学校ではまだできていないことや、自分が課題に感じていたことに対し、ルールメイカー100の仲間たちが一緒に考えてくれてとても嬉しかった」と上気した表情で語りました。

ルールメイキングサミット2023カタリバ
ルールメイキングサミット2023カタリバ
ルールメイキングサミット2023カタリバ

イベント全体を通じ、ルールメイカーや先生方、そしてそれぞれの日々の取り組みに大きな成長を感じられたルールメイキング・サミット2023。社会の注目度も増してきており、さらなる盛り上がりを見せるルールメイキングですが、本質の部分である「生徒とともに校則を見直し続けること、そして対話的に納得解をつくるプロセスを『学び』と捉え直すことで、生徒主体の学校づくりを実現する機会としてのルールメイキング」を大事にし、今後さらに広げていけるよう取り組んでいきます。

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