校則見直しに取り組む中高生と各界のルールメイカーと出会う「ルールメイキング・サミット2022」が開催されました。

認定NPO法人カタリバ(以下、カタリバ)が主催する「ルールメイキング・サミット2022」が9月24日(土)、25日(日)に代官山 蔦屋書店シェアラウンジ及びオンライン配信にて開催されました。

本サミットは全国の校則見直しに取り組む中高生を対象に、対話的に納得解をつくる力が、実社会とどのように結びついていくのかを学ぶ機会として開催。全国から21校、171名の中高生と181名の一般観覧者が参加しました。

カタリバでは2019年から生徒が中心となり先生や関係者と対話しながら校則・ルールを見直していく「みんなのルールメイキング」に取り組んでいます。初年度は3校から始まったこの取り組みも、現在155校以上で校則見直しが行われています。

ルールメイキング・サミットは今年度が初開催のイベント。1日目は17校のプレゼンテーションを行い、各校がゲストと学びを深める対話をしました。2日目は各界のルールメイカーと中高生たちの対話が繰り広げられました。

ゲストは教育学者の苫野一徳氏や、合同会社LINKALL 代表・Qubena開発者の神野元基氏、ライフイズテック取締役の讃井康智氏、トランスジェンダー活動家の杉山文野氏、難民支援を行うNPO法人WELgee代表の渡部カンコロンゴ清香氏、一般社団法人にじーず代表 遠藤まめた氏、株式会社TeaRoom代表 岩本涼氏が登壇しました。

全国17校による校則見直しの生徒発表

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ライフイズテック取締役の讃井康智氏

1日目は17校が4グループに分かれての生徒発表を実施。
栃木県立足利清風高校の石川さんは「昨年度に髪型・服装の校則見直しを行ったが、全校生徒の意見を取り入れていないとして改正することができなかった。2年目の今年度は、校則改正のプロセス自体を見直すところからはじめ、全校生徒の巻き込み方を検討した。職員会議を通して改正するやり方ではなく、生徒総会で改正案を可決する方法で、校則改正に成功した。」とプロセスについて話してくれました。

さらに「メンバー全員が”校則を変えること”だけが私たちの仕事ではなく、誰もが安心して過ごせる環境をつくることも私たちの仕事のひとつと考えるように成長した。つぎはLGBTQの人のために、制服選択ができるようにしたい。LGBTQの方と対話会を実施して”共感できなくても尊重することが大切”だと教えてもらった。このことを全校生徒に伝え、”みんなが幸せになれる学校”にしていきたい。」と熱く語ってくれました。

担当教諭の小瀧先生は「もともと学校に対話の土壌はなかったが、2年弱取り組みをしてきて、少しずつ土壌ができはじめ、学校内も柔らかい雰囲気になってきている。それは生徒たちが職員会議で改定案が通らなかったと泣いて帰ってきた翌日に、ペンとノートをもって職員室へ向かい再度意見をもらいにいった出来事があった。あのめげない逞しい姿をみて、私たち大人も考えなければと感じたことが大いに影響している。担当教諭の私の方こそ生徒に励まされながら、そして一緒に悩み、学びながら進めています。」と想像を超える生徒の対話的な姿勢が、学校の雰囲気を変えてくれたとお話してくれました。

社会で活躍するルールメイカーによるセッション

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トランスジェンダー活動家の杉山文野氏と
難民支援を行うNPO法人WELgee代表の渡部カンコロンゴ清花氏

2日目は、前日に行った応援したい気持ちを投じる「応援投票」によって、得票選出された4校が発表。その後インスパイアセッションとしてゲストの杉山氏、渡部氏、岩本氏が自身のルールメイキングについて語りました。

毎年約10万人以上が参加するLGBTQの方々が、差別や偏見にさらされず、前向きに生活できる社会の実現を目指した「東京レインボープライド」を運営する杉山氏は「僕は今3つのルールを変えたいと思っていて、そのひとつに同性婚がある。僕は男性として生きることを決めて、女性を好きになり、結婚をしたいと思っても今はそれができない。戸籍上の性別を変えるためには手術をしなくてはいけない。周りからは、そんなに結婚したいなら手術をしたら?と言われるけど、生きるためにルールがあるのであって、ルールのために生きているわけではないと思っている、だからルールを変えていきたいんだ。」と自身のルールメイキングの取り組みについてお話してくれました。

続いて、ブースセッションでは、話を聞いてみたいゲストのもとに生徒が分かれ、より深い対話が繰り広げられました。
生徒から「学校の先生方からの応援がなく、ひとりで校則見直しの活動を行っている。まずは先生と対話するために、あの手この手を試したけれど、上手くいきません。」という悩みに対し、渡部氏は「わたしも難民の方を雇用しませんか?と企業に働きかけて片っ端から断られたことがある。悩んだ末に、まずは難民の人と出会う機会をつくるところから始めて、夏の過ごし方や家族・文化等の周辺トピックを話していたら、ちょっとずつ国に帰れない事情や雇用が必要なことを日本人が理解できるようになってきた。校則ど真ん中ではなく周辺トピックから対話機会をつくることもひとつの方法だ。」と自身の経験に基づいたアドバイスをしていました。

その後、クロージングトークでは参加した生徒から2日間の感想として「校則見直しが上手くいかずに思い悩んでいたけど、その困難さは会社経営と似ているとゲストの方から教えてもらい、自分はそんなに難しいことをしていたんだ!と気付きました。だから悩んで当たり前だし、上手くいくためにはどうしようかと考え続けることが大事だと思いました。」、「ルールに無関心な人もいる。その人達を巻き込み、対話することはなかなかできない。お茶会や校則と関係ない話を通して繋がるなど、さまざまな対話のやり方があることを学びました。」などのコメントがありました。

全国的に広がりをみせている校則見直しですが、生徒とともに校則を見直し続けること、そして対話的に納得解をつくるプロセスを「学び」と捉え直すことで、生徒主体の学校づくりを実現する機会としてルールメイキングが今後さらに広がることを目指していきます。

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