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【自治体レポート】つくば市「幸せな学校づくり」を目指した先生・児童生徒向けルールメイキング研修の実施報告
みんなのルールメイキングは、各学校のルールメイキング活動を個別にサポートするだけではなく、自治体と連携した普及にも取り組んできました。
2023年度は茨城県つくば市で「幸せな学校づくりに向けたルールメイキング」をテーマに、つくば市教育委員会と連携して市内学校でのルールメイキングを支援しています。
同年6月、つくば市が主催する市内48校の先生を対象としたルールメイキング研修に事務局職員が登壇。また、つくば市で今年度ルールメイキングを進めるモデル校の児童・生徒を対象としたオンライン交流会にも参加しました。
今回の記事では、2つの研修についてまとめてレポートします。
幸せな学校づくりを目指したルールメイキング
みんなのルールメイキングは、2022年より茨城県つくば市と学校支援の連携を行ってきました。昨年は「GIGA端末のルールづくり」をテーマに、市内全45校の小中学校および義務教育学校の取り組みを支援。今年度は「幸せな学校づくり」をテーマに、校則やルールに限定せず、対話を通じて「一人ひとりが幸せを実感できる学校づくり」の実現を目指した取り組みをスタートしています。
市内全学校のうち、3校(松代小学校・手代木中学校・春日学園義務教育学校)がモデル校となり事務局が伴走支援を行っています。
先生対象のルールメイキング研修を実施
研修の趣旨と実践事例の紹介
2023年6月6日(火)、つくば市内のルールメイキング担当の先生および学校長を対象とした研修を開催しました。
はじめに、つくば市教育局 学び推進課の宮内 周也指導主事より、今年度のルールメイキングプロジェクトのコンセプトの紹介と、今回の研修の目的について次の3点を提示しました。
- 「幸せな学校づくり」にむけて、自校で目指したいことや取り組みたいことのイメージがわく。
- モデル校3校の取り組みの様子を知り、自校のルールメイキングの参考にする。
- さまざまな事例から、幅広い情報やヒントを持ち帰る。
宮内指導主事は冒頭で、「ルールメイキングは児童生徒を中心に幸せな学校づくりを『対話』を通じてつくっていく取り組みですが、先生も当事者意識をもって、児童生徒と一緒に取り組むことが大切」だと説明。
その後、ルールメイキング事務局の起塚と山本から、ルールメイキングの事業説明と「幸せな学校づくり」に向けて対話の土台をつくることの必要性や、対話する上でのポイントについて話しました。
また、「幸せ」にフォーカスした対話からスタートした事例として、つくば市立島名小学校の昨年の取り組みについて動画を交えながら説明しました。
モデル校の先生によるルールメイキング実施計画の共有
つぎに、モデル校3校の担当の先生より、これからの活動計画内容に加えて、今後考えたい問いやテーマについて発表をしました。
松代小学校では、スモールステップで「幸せな学校づくり」を目指していくことを決め、委員会やクラスなど様々な活動単位で取り組みを進めていく計画を発表。クラスや学年によって実施したいことが異なるため、どのように足並みを揃えるのかについて、他校の先生と話してみたいと呼びかけました。
手代木中学校は、身近な課題を解決して小さな成功体験を積み重ねることで、生徒の自信や自己肯定感を上げることを目標に設定。。課題解決に向けて生徒の主体性をどのように伸ばすか、先生からの声掛けをどのように行うか他校の事例も聞いてみたいと締めくくりました。
春日義務教育学校では、学校の指針となっている「春日憲章」を柱にルールを自分たちでつくり、学校生活において大切にしたいことを対話を通じて考えると発表。学年の幅が大きく、各学年のルールも異なるため、限られた時間の中で各学年が納得するルールを導き出すことに関する課題意識も共有されました。
一言でルールメイキングと言っても、モデル校によって目標や行動計画は千差万別。学校環境や文化によって課題がさまざまであることが示されました。
また、ルールメイキング実施計画の発表や課題の共有だけにとどまらず、この場で何を求め、どういった関わりをしたいかといった話が各学校から挙がり、参加している先生方の積極的な姿勢が見られました。
自分の学校でのルールメイキングについて考える
モデル校での計画を聞いた後、それぞれの学校で「幸せな学校づくり」に向けて、取り組んでみたいことや取り組むにあたっての不安について、グループに分かれて共有をしました。
取り組んでみたいこと
- なぜルールメイキングに取り組むかのそもそもの前提を問い直したい
- 昨年のGIGA端末のルールを活かして、意見の集約や活動の効率化を図りたい
- 縦割り班などの異学年交流を通してルールメイキング活動に取り組みたい
取り組むにあたっての不安や課題
- 校則改正後に自分たちで決めたルールを守ることができるのか
- ルールメイキングの活動時間の確保と教職員の負担を増やすことの不安
- 先生の立場から児童生徒の本音をどのように引き出せるか
グループごとでさまざまなアイデアや課題が浮かび上がりました。抱える境遇や目指していきたい方向性を共有することで、先生同士で新しい意見が飛び交うグループや、これまでの経験をもとに課題に対する向き合い方や解決のヒントを学び合うグループがあり、自分に学校にはない観点や新しい気づきを得る時間になりました。
最後に、モデル校3校の担当の先生より今後の意気込みについて感想共有があり、参加した各学校の先生からモデル校への応援メッセージを送り、研修を終えました。
参加者からの感想
研修後に集められたアンケートでは、
- ルールメイキングを進めていくうえで、不安要素がいくつかあったのですが、先生方と不安を共有することで、安心しました。
- 同僚の先生方との理解や協力も得ながら、子どもたちが対話を通して幸せな学校を作れるようにサポートしていきたいと思います。
- 今回の研修を参考にしながら、自校の実態にあった取り組み方を考えていきたいと思います。
- ルールメイキングを何のために行うのか、目指すゴールは何なのかを子どもたちと一緒に考え、明確にすることが重要だと感じた。
といった感想が寄せられました。約2時間という短い時間でしたが、参加された先生同士でルールメイキングの意義や具体的な方法などについて共有し合い、次のステップへとつながる研修となったようです。
生徒に主体性をもってルールメイキングに取り組んでもらうために、先生として何を大切にしながら取り組むのか。参加された各学校がこれからどのような活動を通じて「幸せな学校づくり」を目指していくか楽しみです。
モデル校3校によるオンライン児童生徒交流会を実施
小・中・義務教育学校 3つのモデル校による発表
上記研修の後日、3つのモデル校の児童生徒が各校の取り組みについて共有する交流会を開催しました。
それぞれの学校の児童生徒が順番に、各校での取り組み内容について発表をしました。
松代小「掲げたテーマの実現に向けて、クラス・委員会・学校全体でチャレンジ」
トップバッターを飾ったのは、「思いやりのあるきれいな心/協力して過ごしやすい学校をつくる」というテーマを掲げる松代小学校。
クラスごとの取り組みとして、6学年のある学級では「朝黙想」を行っています。以前は朝の時間と授業のメリハリがないという課題がありましたが、朝黙想をはじめたことで、始業時間ピッタリにはじめられるようになったようです。他にも、掃除に対するみんなのやる気と意欲をUPさせるための「掃除MVP」や「一分前着席」などを行っています。
また、生活委員会はテーマ「思いやりがあるきれいな心」を目指すために廊下での挨拶を、「協力して過ごしやすい学校をつくる」ために廊下のゴミ拾いをはじめました。学校全体としては、今後レクリエーションや対話、交流の機会を増やしていきたいと話し、発表を締めくくりました。
手代木中「より多くの意見を聞くための機会づくり」
続いての発表は手代木中学校。生徒会本部は「より良い学校」を目指し、年間を通じたルールメイキング活動のスタートを切っています。普段から生徒の意見を取り入れる機会を増やしていくために、学校スローガンの制作や10月の文化祭、新任生徒総会公開の準備と運営を行う予定です。
実際に、各生徒が学校について考える機会をつくるため、生徒総会で事前アンケートや聞き取りでの意見交換を行いました。そこで得た多くの意見を今後の活動で反映していくようです。
春日学園「1年生から9年生の成長段階に合ったルールづくり」
最後の発表は、春日学園義務教育学校。ルールメイキングのねらいは「生徒の自主性や協調性を育み、ルールに対する意識を高める」「より良いルール作成のために、つくば市の中学校全体で協力し、繋がりをより深める」 「春日学園生としての自覚を高め、全員で一つのことを成し遂げる意思を持つ」の3つです。
現在は、ICTの使い方と春日憲章を柱とした学校づくりについてルールメイキングを導入。。
ICTの使い方では、タブレットの使用について、学年や学級によって使用のルールが異なっているという課題がありました。昨年度は、5・6年の有志メンバーによるアンケート調査や児童生徒会中心のルールメーキングの提案、各学年や各ブロックで端末の意義に関する話し合い等に取り組みました。
その際、1年生から9年生がともに生活している春日学園は、全校生徒が同じルールを設定することは難しいと考え、 各学年の成長段階に合わせたルールをつくることにしました。
今年度は、まず児童生徒会が端末のルールの柱を決定し、それをもとに7月下旬に各学級で代表委員を中心にルールを検討する予定です。 9月には、各学級の意見を学年や各ブロックで集約し、成長段階に沿ったルールを決定します。 さらに、先生や保護者、地域の方々へもルールを周知し、意見をもらいます。そこでの意見を基にルールを再検討し、12月に新しいルールを施行する予定です。
春日憲章を柱とした学校づくりと見直しについては、憲章にある「アドバンス・ブレイブ・クリエイティブ」3つの柱が具体的にイメージできず、形骸化しているという課題がありました。
そこで、今年度は児童生徒会が入学式や始業式で春日憲章の意識付けを行ってきました。他にも、9年生の代表委員が春日憲章の具体的な姿の例を考えたり、1~4年生にむけて春日憲章について説明したりしました。今後は、各学級で春日憲章の3つの柱に沿って具体的な目標を決める予定です。
「幸せな学校って?」「どういう時間に話し合っている?」さまざまな質問が飛び交った意見交換
各学校からの発表のあとは、質問・意見交換会。まず松代小から「幸せな学校ってどういう学校だと思いますか?」という質問が挙がりました。
これに対して、春日学園は「僕たちの学校は、1年生から9年生がいる学校なので、1つのルールにこだわらず、誰もが安心して過ごせるような学校にしたいと思っています。ルールを自分たちでつくっていくことが、幸せな学校づくりに繋がると考えています」。
手代木中は「幸せな学校づくりのためには、できるだけ多くの生徒が納得できるルールメイキングが大切だと思います」と答えました。
また、、春日学園の「どういう時間に話し合いをしていますか?」との質問に対して、松代小から「学活の時間にクラス全体で話し合っています。その際、なるべくいろいろな人に発言のチャンスがあるように心がけています」との答えがあり、。手代木中からは「生徒総会で挙手してもらい、見直したい校則やその理由について意見を聞きました。また、より広く声を集めるために、全校生徒を対象にアンケートも行いました」と、具体的な実践について答えが寄せられました。
ほかにも「行事とルールメイキングをどうやって両立させていますか?」「学校全体の交流の場は?」等の質問が挙がり、互いの活動の様子に強い関心をもっているようでした。
最後に、交流会全体の感想として「これまでは生徒会だけで活動をしていましたが、今日他校の情報を得て、真似したり視野を広げたりできるんじゃないかなと思いました」「他の学校の取り組みなどを聞いて、とても参考になりました」といった声が寄せられました。
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