「不平不満」も原動力に、「品」をもってルールを変えるーー北海道エリア地域パートナー・株式会社コエルワ

対話を通じて、児童生徒主体の学校づくりに取り組む「みんなのルールメイキング」。全国に活動が広がる背景には、各地域でルールメイキングの普及・啓発に取り組む「地域パートナー」の存在があります。ルールメイキングに取り組んでいる・取り組みたいという学校のサポートや地域内でのコミュニティ形成・強化のために活動するパートナー団体のことで、2025年度現在は、全国6つの地域で協働を行っています。

地域ごとに特色のある教育現場を実際に回り、学校との関係構築や教員・生徒向けイベントの企画などを行う地域パートナーは、どんな思いで、どんな活動をしているのか。今回は、北海道エリアで2024年度からカタリバと共に活動する地域パートナー、株式会社コエルワの代表取締役CEO阿曽沼陽登さん(以下、阿曽沼)にお話を聞きました。

最後に、2026年1月31日(土)に開催される北海道地域生徒大会の告知もしていただきました!

——コエルワは主に北海道の人口数千人から3万人規模の自治体を中心に、子どもたちの長期休暇支援や放課後支援事業などの教育事業に取り組んでいますね。人口規模の小さい自治体を対象とする背景を教えてください。

阿曽沼:あるデータでも示されていますが、都市と地方部では、習い事をする機会が少なかったり、そこにかけられる経済的な余裕も少なかったりという「格差」があります。また、子どもたちが、自身の可能性に蓋をしてしまう側面もありますが、子どもたちを取り巻く大人たちも、育つ環境によって将来のルートを制限してしまうことがありますよね。そのように、子どもたちに対する大人の「可能性の認識差」があると感じていて、地方であっても、大人も子どもも未来に自信を持てるような機会を提供したいと考えているからです。

コエルワの活動の様子(同社提供)

——阿曽沼さんが北海道という街を舞台にしているのはなぜでしょうか。

阿曽沼:高校卒業後、北海道で酪農業をやっていたので、ここは私にとって特別な場所。加えて、北海道の特殊性の1つがやはりこの広さですよね。例えば、学校を統廃合するとなっても、近くの学校との距離が離れていて、簡単にはできないんです。札幌から車で6時間以上離れている場所もあり、かつ飛行機を使うことになったり、雪道で車は通れなかったりすることも。子どもたちが「こうしたい」という自分の意思を持っていても、簡単には行動に移せない環境があることなんですよね。この課題感は活動を重ねるごとに、強く感じる部分です。

——だからこそ、この北海道の地で子どもたちが学校という場所や、世代をこえてつながれる場所や機会づくりに力を入れているのですね。阿曽沼さんがこういった教育の世界に関心をもった原点はどこにあったのでしょうか。

阿曽沼:東日本大震災後、宮城県女川町でカタリバの事業のなかで被災した子どもたちの学習支援に関わり、カタリバの代表である今村久美氏に出会ったことがきっかけですね。先ほどお伝えした通り、当時、私は北海道で酪農業をしていたので、まさか自分が教育に携わるなんて思ってもいませんでした。

今では「サードプレイス」という言葉はよく聞かれるようになりましたが、当時はそういった概念や場所はあまりなく…カタリバを通して子どもたちと関わるなかで、学校や家以外の居場所をつくれたらいいなと思うようになったんです。

——それは、阿曽沼さんご自身が子どもだったときに、そういった居場所がほしいと思っていた原体験があるのでしょうか。

阿曽沼:そうですね。学校が嫌いだったので、中高生の頃はあまりいい思い出がありません。一方で、学校以外の場所で大人と出会う機会が多くて、そこでたくさんのことを教えてもらった経験があったんです。「学校に行きたくない」「勉強が嫌だ」という思いを持つ子に共感できることもあり、フラットに子どもたちと向き合うことができました。カタリバが大切にしている「ナナメの関係」も、非言語で理解できたんですよね。

コエルワの活動の様子(同社提供)

——そういったカタリバとの繋がりもあって、コエルワは2024年から、ルールメイキングの北海道エリア・地域パートナーを担当してくださっています。この活動のどういったところに共感されたのでしょうか。

阿曽沼:団体としては2024年からですが、私個人としては、2022年ごろからルールメイキング活動の伴走コーディネーターを担当していました。当時、「活動がうまくいかなかった」という反省があったんですよね。1人の教員の方が「校則を子どもたちと見直したい」と思って活動に関わってくださっていたのですが、管理職や生徒指導部の教員との校内調整などについて、私自身がちゃんと理解できないまま活動を進めてしまって。生徒たちはとても頑張っていましたし、生徒会長は「先生とフラットに話せる機会ができてよかった」と言ってくれたのですが、尻切れトンボで活動が終わってしまった感じがあり…。その後の継続的な活動には至りませんでした。
そういった反省点や悔しさもあったし、ルールメイキング活動の基本姿勢にはとても共感しているんです。
私は関わる子どもたちやコエルワのメンバーには、「品のあるヤンキーになれ」といった例えをよく口にしています。ヤンキーはルールを逸脱して終わることが多いですが、「品がある」と「なんで(ルールが)こんな風になっているんだ」という不平不満を出発点に、ルールを変えにいくんです。ただその時に重要なのが「想像力」。なぜそのルールがあるのか、そのルールが無くなることで困る人は誰か。そこを想像することを、私は「品だ」と捉えています。

不平不満が、多くの人のルールを変える「原動力」になる。それはとても良い題材になり得ます。北海道エリアの担当を任されることになったときも、「ルールがなぜ存在するのか、その背景を想像する大切さ」への共感は変わりませんでした。

コエルワの活動の様子(同社提供)

——地域パートナーとして、この2年間の活動を振り返っていちばん印象的だったことはありますか。

阿曽沼:2024年度に北海道名寄市のある中学校でルールメイキング活動に関わっていたのですが、その学校の教頭が、翌年比布町の学校に異動になり、そこでも「ルールメイキング活動をしたい」と私たちに声をかけてくれました。人口約3500人ほどの決して大きくない町ですが、もともとコエルワとして比布町とは関わらせていただいていたので、そのつながりが活かされた事例だったのではないでしょうか。もし学校単体で伴走に入っていたら、難しかったかもしれませんが、コエルワとしての事業があることで、ルールメイキングにも発展する関わりができたことはうれしかったですし、手応えを感じました。

――それが、地域パートナーのみなさんの圧倒的な武器ですよね。北海道のこういった町に、カタリバだけではなかなか関わることができません。

阿曽沼:北海道全体でルールメイキング活動を広げていく難しさはありますが、例えば、小さな町の教育委員会は、教員出身の方が少ないんです。実は、これはポジティブな側面だと最近は思っています。先生にとって「聖域」とされる部分が、良くも悪くも「大したことじゃないですよね」と考える側面があって。そこの部分を上手に活用することで、ルールがある意味や変える意味を生徒たちが考えやすくなるかもしれないと可能性を感じています。

――活動を通した子どもたちの成長や変化はどんなふうに感じていますか。

阿曽沼:ルールメイキング活動を通して、生徒と教員はこんなにも話す機会がないのだと痛感しました。確かに、私自身も説教か進路指導ぐらいしか機会がなかったなと(笑)活動を通して、徐々に生徒たちが「先生にも聞いてみよう」という姿勢になっていき、「先生も学校を一緒に作る仲間なんだ」という変化が感じられました。
また小さな町でいうと、学校の中では先生たちが「問題のある生徒」だと思っている子が、ルールメイキング活動ではどんどん力を発揮してくれるような場面もあるんです。校則に不満を持っている子たちに対して、「ルールがあるからこういうことができるよね」「ルールがないと先生はこう思う側面もあるよね」と伝えることで、新たな視点を得ていくことは、外部の人間が入る意義だと思います。

――コエルワが主催となって、1月31日に北海道エリア地域生徒大会を実施しますね。

阿曽沼:はい、今年も北海道の生徒や教員を対象に、オンラインで実施します。カタリバが開発したボードゲーム「対話クエスト」の実施や、2時間のワークショップを予定しています。コエルワでは、2025年11月~12月にかけて、リーダー研修の一環でもある「高等学校 生徒会フォーラム」を開催。そこで、「校則ほど大きなものでなくてもいいから、自分の身近なルールを、自分たちで見直してみることの意義」を話したので、参加した生徒たちが今度は地域生徒大会に来てくれるとうれしいですね。
北海道エリアは、ルールメイキング活動の先進校が参加するというよりは、「これから始めようかな」と思っている学校の参加が多いのが特徴です。この地域生徒大会をきっかけに、校則ほどの大きなテーマではなくてもいいので、「ルールメイキングに興味が出てきた」「気になるからやってみたい」という学校同士が繋がり、活動が広がっていくことを期待しています。ぜひ気軽に参加してほしいです。

――最後に、阿曽沼さんはこのルールメイキングの可能性をどのように感じていますか。

阿曽沼:今までは「我慢する」ということのみが、学びとされていた側面もあると思いますが、「見直す」という選択肢が用意できることの意義は大きいと思います。それを実現するためのプロセスを体験するということは、よい社会をつくっていくために重要ですし、多くの人の心にそのマインドがあってほしい。教室、部活動、職場、家族、さまざまな共同体のなかで、その価値は高まっていくと思います。

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