「全国の実践者」から得た学びを、誰も取り残さない学校づくりに

Rulemaking Teacher’s CAMP

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校則の見直しやルールメイキング活動、児童生徒主体の学校づくりを目指す教員、教育関係者が出会い、お互いの知見や経験から学びを深める「Rulemaking Teacher’s CAMP」(以下、本キャンプ)。2025年8月に初開催され、全国29都道府県から66名が参加しました。参加した皆さんがここでどんな学びを得て、学校で活かされているのかー。

連載1回目は、本キャンプに参加した石川県加賀市立片山津中学校の教諭水口桂太さん(以下、水口)と西出優志さん(以下、西出)のおふたりにお話を伺いました。また、同校の校長勝木一弘さん(以下、勝木)にも同席いただき、キャンプを通じたおふたりの変化をお話いただきました。

体育祭の見直しから始まったルールメイキング

——おふたりの参加背景を、改めて教えていただけますか。
水口:本校では、2024年度から体育祭のあり方を見直す中で、知人からキャンプについてご紹介いただきました。ルールメイキングにも興味があり、実際にどんなふうに進めていくのか、全国の先生の実践から学びたいと考えていました。西出さんは生徒会担当でもあり、体育祭の運営を一緒に進めていたので僕のほうから誘いましたね。
西出:本校では、(生徒たちが)「主体的に生きる」という学校目標を掲げ、「他の人の幸せを守りながら、自分が楽しく生きる!」ことを目指しています。その中で、体育祭は生徒の得意不得意が分かれますよね。水口さんや生徒と、「人の幸せを守りながら、みんなが楽しい体育祭とは何かを考える必要があるね」と話し合っていたという背景があります。

——貴校のなかで、体育祭という行事に着目されたのはなぜでしょうか。
水口:本校の体育祭には、全校生徒が走る100mリレーがあります。私は保健体育の教員なので、体育祭の主担当ですが、2024年度に校長からこのルールを変えたほうがいいのではないかとの提案があったんです。先ほど西出さんも話していたように、リレーは得意不得意が分かれるし、「足が速い・遅い」が目立つ側面がありますよね。
勝木:実は、リレーのルールを見直すにあたって、当初は生徒からは「なんでこんなことをするのか」といった反発があったんです。そこで、全校生徒約200名にアンケートを実施。170名からの回答のうち、約10人が「リレーが辛い」「恥ずかしい」「楽しみじゃない」といった回答だったんです。そこで、「この10人の子たちも『楽しい』と思えるルールにできないか」と生徒にも提案したんです。

水口:校長を中心に話し合いを進め、50mを走る人、100mを走る人の選択制に変更。また元々は走る人は2名ずつだったのですが、「目立つ」ことを回避するために、4名で走ることにしました。

かなり盛り上がる競技の1つでもあり、当初はルールを変えることに悩みましたし、実現は難しいと考えていたんです。ただ実際に行ってみると、生徒から「50m(という選択肢)があって良かった」という声が出てきて。僕はどちらかというと、体育祭をどうやって進めていくかというところにばかり意識があり、運動が苦手な生徒たちの声への意識が薄かったなあと反省しています。その経験から、次は生徒会執行部を中心に、全校生徒で考えていくことも必要だと気づいたんですね。今年は、リレーだけでなく他の競技でもルールを変更しました。

見直した体育祭の競技ルール(片山津中学校だよりより抜粋)
2025年度に行われた体育祭のリレーの様子

実践者が多くても、「自分の手の届かない領域ではないと思えた」

——素敵ですね。今回のキャンプに参加し、印象的なことや学びとなったことはありましたか。
西出:正直参加する前は不安もありました。熱量高く、素晴らしい実践を持った「すごい先生」たちがたくさんいるのでは…という思いもあって。実際に参加し、確かにすごい先生はたくさんいるのですが、取り組んでいることは生徒や教員同士の対話の積み重ね。全く僕の手の届かない領域に、その先生方がいらっしゃるわけではなかったんです。「これなら、僕にもできるかな」と思えました。

本キャンプに参加した西出さん(手前)

僕は3年生のクラス担任で、今までは係活動なども仕事内容を僕らが決めて生徒におろしていました。ただ、キャンプに参加した後の2学期以降、一度生徒たちに話し合ってもらい、必要な仕事や削ったほうがいい仕事など、一緒に意見を出していくといったクラス運営を意識できましたね。

水口:僕は自ら望んで参加したので、得られたものは大きかったですね。何より、その場に「実践者」である全国の先生方がたくさんいたことが特徴だったと思います。先生方の「現状をよりよくしようとするエネルギー」に圧倒されました。またゲストの苫野一徳さんには、キャンプだけではなく以前から本校にも来ていただき、「学校で民主的に物事を決めていく大切さ」を強調していらっしゃいました。僕自身も、子どもたちの声を聴いていくことはもちろん大切だと考えていましたが、それを基に、子どもたち自身が進める、決定するという意識は乏しかったと思います。

本キャンプに参加した水口さん

——ご自身の意識を、変えていくことはそう簡単なことではないと思います。
水口:まだ不十分な部分はあると思います。正直、(大人が)自分で行うほうが楽ですし、時間も早いですよね。でもそれでは、子どもたちの学びを奪うことになると気づき、自分の考えを少しずつシフトしていく必要性を、ここ数年で感じていたところです。

勝木:その点でいうと、西出先生のほうが「納得する」のは大変でしたよね。2人がキャンプに参加して成長してくれたと実感しますし、体育祭だけではなく、今年は合唱コンクールのあり方も見直しました。

「変える」ことが目的ではなく、その先の「生徒の成長」に気づく

——西出さんにとって、「納得する難しさ」はどこだったのでしょうか。
西出:2024年度の文化祭の運営を僕が担当し、前年踏襲で合唱コンクールを実施しました。その後、校長先生から「合唱が苦手な子もいるし、ステージに上がりたくない子もいるかもしれない。6分間という時間を各クラスに割り振って、生徒たちが自由にステージ発表などを実施するのはどうか」という提案があったんです。前段の部分は僕も納得はしましたが、今まで取り組んできた合唱コンクールを変えることは、大多数の生徒の反発があるだろうし、先生方も戸惑います。各クラスで自由に実施すると、指導という面で担任の負担も増え、難しいのではないかと考えていました。
何度も校長と話し合い、学校を休みがちになっている生徒たちや、歌が苦手な生徒たちにもしっかりと目を向けて、どうするかを考えることが、生徒たち自身の視野を広げていくことに納得したんです。それは、本校が目指す「他人の幸せを守る」ということにもつながります。
「合唱コンクールを従来の形から変えましょう」というのではなく、「歌が苦手な子たちのことも考えて、クラスとしてどうするかを考え、話し合う機会を持ちましょう」というスタンスで向き合えたように思います。

この点は、キャンプに参加して得られた学びともつながります。「ルールメイキングとは、ルールを変えることが目的ではなくて、生徒たちが当事者意識を持って考えることで、生徒自身が成長することが目的」との話をしていた先生がいましたね。

2025年度に行われた合唱コンクールの様子

勝木:こういった言葉を西出先生から聞けてうれしいです。「辛いと感じる人がいないようなルールにしよう」という考えは、徐々に生徒たちにも浸透しつつあります。生徒会長は意見箱を設置してくれましたし、生徒から「こう変えていきたい」といった思いが見られるようになってきましたね。

西出:2025年度の体育祭で、「WINWIIN」「みんなが楽しい体育祭」ということを言い続け、各色の団長らリーダー層の生徒たちも、運動が苦手な生徒たちのことも意識していて、とても成長を感じました。文化祭でも、学校に来られない生徒も参加できる手段はないかをクラスのみんなで話し合っている時に、僕のクラスでは「みんなで飾り付けをしよう」と提案した生徒がいて。学校に来れない生徒にも花飾り付けを作ってもらい、クラス全員で作った飾り付けの前でみんなで写真を撮って、学校に来られない生徒にも「ありがとう」と伝えたいという提案でした。
こういった考えが生徒から出てきたのはうれしかったですね。

「大人が入るタイミング」を見極める力へ

——実際に、本キャンプで得たことで、どんなことが学校現場で活かせる点、活かしたい点はどんなことでしょうか。
水口:今までは「なんとなくこう思っているだろう」と推察して、生徒に「こうするべき」と伝えていた部分がありますが、まずは話を聞き、聞いた意見をいったん受け止めることの大切さに気づきました。キャンプでも本校でも本質観取を実施しましたが、対話して相手の意見を聞くことで、「自分はこう思っていたけど、相手はこう考えているんだ」「相手の意見のほうがいいな」という実感を得ました。また、対話を積み重ねることで相手とフラットに話せるように。「生徒」「先生」という関係や、上下関係を度外視して話せる機会って案外ないですよね。大人や子ども関係なく、対話するなかで一緒に「よりよい形」を見つけていきたいですね。
また、子どもたちが主体となって考えるとはいえ、全てを子どもたちに任せるという訳ではない。大人がどこに入っていくべきか、そのさじ加減やタイミングをきちんと見極める力を僕自身がもっと身に着けたいと思っています。

教員と生徒の対話

西出:先ほどもお伝えした、クラス運営に生徒たちの声を取り入れるということです。最初から僕らが全部決めて、問題が起きないように先回りするよりは、生徒が考え、決めていくほうが、生徒自身の成長につながるということを本キャンプでも感じましたし、実際のクラス運営でも感じているところです。
体育祭や文化祭といった行事をきっかけに、ルールメイキングの機運が高まっているので、今後はこの勢いを活かしながら、行事以外でも全校生徒を巻き込んでいきたいですね。

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