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学生から教員まで、各校での実践を発表ーー関東児童生徒大会&交流会2024レポート②

関東エリアでルールメイキングに取り組む生徒らが集まり、活動を報告し合うイベント「ルールメイキング関東児童生徒大会&交流会2024」が2024年12月27日、学校法人自由学園(東京・東久留米市)で開催されました。関東近郊の小学校~高校の児童・生徒ら約50人と教員らが参加し、それぞれの現場で進められている取り組みや想いを披露しました。
本レポートでは、イベントの模様を全2回に分けてお届けします。後半となる今回は、参加各校の児童・生徒や教員による事例発表の様子をレポートします。
つくば市立吾妻小学校での「ルールメイキングボックス」
茨城県つくば市立吾妻小学校からは、児童5人が参加。小学校でのルールメイキングは国内でもまだ事例が少ない中、同市では50校の市立小・中学校、義務教育学校でルールメイキングの取り組みを実施してきました。吾妻小学校で取り組みの「企画委員」を務めている児童たちはまず、児童一人一人が学校に対する意見を提出できる「ルールメイキングボックス」の設置について発表。
「ルールメイキングボックスは、去年の6年生の人たちと話し合って実現したアイデアです。実際に設置してみると、(学校で)シャープペンシルを使用したいという要望が多く寄せられました。話し合いの結果、4年生から6年生は『筆圧をコントロールできるので使っていい。貸し借りはせず、自己管理をしっかりする』ということになりました。現在は試行期間を終えて、本格的に使用が始まっています。
ほかにも、低学年からは『学校でかくれんぼをしたい』という意見も寄せられました。意見を提出してくれた2年生と対話をしたところ、『全校の皆で遊んで、思い出を作りたい』という願いを持っていることが分かり、その願いに共感したため実際に遊びを企画・実施することになりました」(児童)

同校ではこうした取り組みのほか、各委員会がそれぞれの分野で児童による主体的活動を行っています。例えば、生活安全委員会では、児童が廊下を走らないようにするために廊下の床面上に線を引いたり、安全な歩き方の動画を作成したりしました。ほかにも、体力向上委員会では、「休み時間に体育館で遊びたい」という要望を叶えるため、利用ルールの整備を行いました。
これらの活動を踏まえ、同校はつくば市内の他の小学校との活動報告や交流も実施。各校の委員会活動のうち、分野や内容が似た委員会ごとにグループを作り、アドバイスし合ったり、互いの取り組みを参考にしたりしていました。発表した児童は「一人ひとりが幸せな学校を実現するためにも、『一人ひとりの幸せとは何か』を掘り下げながらルールメイキングを続けていきます」と発表を締めくくりました。
共学化に伴う旧男子部・女子部の対話とルールメイキング
また、会場となった自由学園の生徒たちは、同校の共学化に伴って新たにルールの整備と生徒同士の対話を実施してきたプロセスを発表しました。同校中等部・高等部はもともと同じ敷地内で男子部・女子部に分かれ、授業や行事などのほとんどが別々に実施されていましたが、2024年4月から統合・共学化されました。

登壇・発表に臨んだのは2人の女子生徒。統合により学校生活の全てが変わるような状況の中で、「男子部、女子部はカリキュラムやルールに違いはあっても、自治を大事にするところは共通だった」といい、生徒自身が共学化の同校の姿を決定していくことになりました。
共学化を1年後に控えた2023年に男子部、女子部の各学年から有志が集まって「共学化の係」が組織され、「まず何に関するルールからすり合わせを行うか」の話し合いがスタートしました。話し合いの末、まずは同校における生徒会的な役割である「委員」の制度づくりを取り上げることに決まったといいます。
「話し合いたいことはたくさんあったけど、共学化まで1年しかない中で、優先順位をつけていきました。委員は学校自治の中心なので、委員が決まらないと学校のことを決めていくことができないと考えたからです。それまでは男子部・女子部それぞれに委員があり、委員長と副委員長、寮長が各一人ずついました。共学化後に、それらの役職人数をどうするか、選挙方法はどうするかを決める必要がありました。
でも、時間がないとは言え、多数決ですべてを決めてしまうことにすごく迷いがありました。そこで、「共学化の係」が話し合いの論点を考え、有志生徒での会議でいくつかの案に絞り、最後に全校でワールドカフェ形式での話し合いを実施することにしました」

全校生徒による話し合いも経て、最終的に各委員長、副委員長、寮長とも男女1人ずつ選任されることに決定しました。登壇した生徒はこのプロセスを通して、「男女それぞれがお互いの文化に誇りを持っていることを学べた」ことが一番の収穫だったと語ります。また、対話によるルールメイキングのあり方についても振り返り、以下のように述べました。
「私たち共学化の係の役目は何かを決めることではなく、話し合いの場をつくって皆に意見を出してもらうことでした。その中で、自分自身の意見が最善だ(から採用したい)と思う気持ちと、係として全体の意見を吸い上げる立場が常にせめぎ合っていました。
ある日の有志会議で投票を行った時には、『(自分の意見と異なる)少数派の意見を切り捨てているように感じる』と指摘されて、その場では口ごもってしまいましたが、本当にその通りだなと思いました。昨年の話し合いで決めたことは、今後(学校生活を)続けていく中でまた見直すものだったはずで、今回採用されなかった意見や考えも、また輝く時が来るかもしれない。そのことをもっとみんなに伝えていきたいと感じます」


このほかにも、イベント前半で一般社団法人NO YOUTH NO JAPAN代表理事の能條桃子さんと対談を行った東京学館浦安高等学校の生徒が改めてルールメイキングの現在地を発表したほか、新渡戸文化小学校や笛吹市立一宮南小学校の教員も、現場での取り組み内容や意義を発表。参加者との質疑応答も盛り上がり、無事に全ての事例発表が終了しました。
参加した児童・生徒や教員たちはイベント終了後も、互いに感想を言い合いながら一日を振り返り、それぞれのルールメイキング現場に学びを持ち帰りました。
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