グッドデザイン賞の審査委員と考えた「みんなのルールメイキング」の意義と可能性

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このたび、みんなのルールメイキングが2025年度グッドデザイン賞(主催:公益財団法人日本デザイン振興会)を受賞しました。同時に、2025年度グッドデザイン賞審査委員セレクション「私の選んだ一品 2025」にも選出。11月22日に、みんなのルールメイキングを選んでくださった審査委員の廣田尚子さん(ヒロタデザインスタジオ代表)と水野祐さん(弁護士)と、弊団体の事業責任者藤本雅衣子がトークイベントに参加。審査委員の2人から、評価した点やルールメイキング活動の可能性をお話しいただきました。

「こんな指導はしたくない」という教員の声

2019年から始まったみんなのルールメイキング活動。藤本はイベントの冒頭で、諸外国と比べて、日本の10代の自己肯定感や自己効力感の低さが活動の背景にあると紹介。学校のなかの「課題」の一つである「校則」を見直すことで、子どもたちの学びに変えることはできないかと考えていました。

その中で、1つのエピソードが紹介されました。
「当時カタリバが支援する高校で、厳しい生徒指導を行っていた学校の先生がぼそっと、こう呟いたんです。
『私だってこんな指導はしたくない』」
指導を巡って苦しむ教員と、「どう破るか」と指導の抜け道を探す生徒ー。

教員も生徒も日常のなかでみんなが幸せになるにはどうしたらいいのか、という問いを出発点に活動は始まりました。

藤本は「みんなのルールメイキングは、『校則が変わる』ことを目指しているのではなく、学校の中での『対話』を通して、子どもたちが異なる立場の人たちと合意形成をしながら、『納得解』をつくっていくという文化を届けたいという思いが込められています」

と強調しました。

「日本の未来がじっくりと変わっていく可能性」

次に、審査委員のお二人から、みんなのルールメイキングを「一品」として選んだ理由を語っていただきました。

水野さんは、別のユニットの審査を担当されていて、ルールメイキングの審査を担当したわけではなかったのですが、別の審査委員からルールメイキングの存在を聴き注目していたそう。

審査委員の水野祐さん

「日本人はルールづくりが下手だと言われるが、本当にそうなのだろうかと、ずっと疑問に思ってきた。視点を変えるだけで、もっといろんな可能性があるのではないかと。多くの人が、家族のなかでのルールや友達、恋人とのルールといった『小さなルール』は自然につくっている一方で、学校の中のルールや働き始めると直面する会社の規則といった『大きなルール』は、急に自分から遠い存在のように感じているように見える。このギャップをどう埋めていくかを常に考えてきました。
また、子どもたちはルールを使って遊びを発明するなど、ルールメイキングの天才だと思っています。それなのに、大人になっていくうちに、いつの間にかルールで遊ばなくなるんですよね。その一番最初の障壁が、校則なのではないでしょうか」と問いかけます。

校則に対して、子どもたちがどういう視点を持てるかによって今後が大きく変わってくるー。主体性をはぐくむ教育として、ルールメイキング活動に大きく共感したと評価しました。

一方、廣田さんは「早い段階で、他の審査委員からも『これは面白いよね。日本の未来がじっくり変わっていく可能性があるよね』といった話が出ていました」と振り返ります。
普段はデザイナーであり、企業のブランディングなどを担っているという廣田さん。

「デザインの中では、『なぜこれがあるのか』『何でやらなくてはいけないのか』『どうやったら変わっていくの』と、一つひとつ問うていく大変な作業こそが大切。ただ、大人になるにつれて『決まりは決まりなんだから』といったスタンスになってしまう。問うという視点をデザイナーやクリエイターだけではなく、全ての人が持てたら、未来は変わっていくと感じた

そして、対話を通して「深める力」が伸びていくと、多層的な考えを身に着ける土台になるのではないかと評価しました。

審査委員の廣田尚子さん

子どもたちの中に眠る「小さな問いの種」をきちんと出していく場を

これに対し、藤本は「『高度な問い』を立てていくには、小さな問いの積み重ねが大切。子どもたちのなかには、その小さな問いの種がたくさん眠っているが、それを誰かと共有し対話する機会が、日本では少ない。実際の教育現場で『このままでいいのだろうか…』と疑問を持った教員の方々と、ルールメイキングを進めてきました」

さらに、冒頭でも述べたように、「異なる立場の人との対話を通して、納得解を作っていく」というプロセスが大事であるということを強調し、実際の活動のなかで子どもたちや先生たちとも共有しています。

「ルールをつくるときに、そのルールができることで困る人はいないか。まったく立場の異なる人と対話し、『合意形成を図りながらつくる』という民主的なプロセスが『よいルール』を作るうえで大切であることを、子どもたちに伝えているんです」と藤本。

自治体と条例づくりのワークショップなどを担うことがあるという水野さんは、藤本の話に共感を示します。
「みんなで考えた結果、『変えない』という選択肢があっても良い。他者のことを考える過程で、新しいルールはつくらなくてもよいとの結論に至ることも、とても大きなゴールですよね」と強調します。

「ブラック校則」という言葉は使わない。教員と一緒に作り上げた事業

廣田さんは「活動の結果だけでなく、その場をつくっている価値がデザインとして素晴らしい。『もの』といった、形があるものだけではなく、いまや『コト』もデザインと呼ばれる時代に。その中で私は、次は『場』のデザインが重要ではないかと考えているんです。『コトをどういうふうに動かすか』という仕組みをデザインするだけでは、人はなかなか能動的には動けない。本来は場をデザインして、中にいる人たちが能動的に動くことが一番大切。そこに取り組んでいることが、一歩先を行くデザインだと思いました」と言います。

みんなのルールメイキングには、「パートナー」と呼ばれる全国の教員が登録できる制度があり、現在は600校近くに上っています。藤本がこの制度の立ち上げに関わった当初は、登録してくれる学校や教員がなかなかいませんでした。

廣田さんからの話を受けて藤本は、「その制度を3カ月ほどそのままにして様子を見ていたら、少しずつ登録してくれる先生が出てきたんです。登録の経緯などを尋ねると、私たちが大切だと考えていることを、実際に先生たちも考えていたのですが、当時の学校現場のなかではなかなか言い出せない側面も。だからこそ、先生たちの悩みや葛藤を理解し、そこに伴走していくことが大事だと思いました。もしかすると『ブラック校則をなくそう』『学校が変わるべきだ』とほうが、”校則見直しを進める”には簡単な方法だったかもしれませんが、そういった表現はしない。先生たちと一緒に作り上げた事業であり、最前線にいるのは先生たち。私たちのほうが、先生たちから教わることが多いです」と話します。

みんなのルールメイキングの事業責任者 藤本雅衣子

ルールだけではなく、子どもたちが関心のあるテーマで取り組めるように

さらに藤本は、「ルールをテーマにすると、賛成と反対の立場の人が必ず出てきます。その間に『どちらでもいい』という人もいる。新しい校則やルールを決めたあとに、自分はその決定に強く関わっていなくても、日々の生活のなかで影響を実感し、当事者性が生まれることも。それがルールの面白さですね」と話します。

ただ、現在は校則やルールだけに限らず、子どもたちが主体的に活動に関われるテーマを模索しています。

子どもたちが主体性を発揮できる部分や、『こうだったらいいのに』と思う事象はルール以外にもたくさんあるはず。体育祭や文化祭、給食など、自分の関心のあるテーマで、子どもたちが対話的に取り組める場をつくっていきたいんです」と、藤本は今後の活動に対する思いを力強く語りました。

最後にルールメイキングの可能性について、審査委員の2人からもメッセージが伝えられました。

この活動をきちんと継続していくことが大切。私はビジネス分野の弁護士であるため、こういった視点をもつ若者がビジネスの中でさらに増えていくことがうれしいですね。そして、民主主義のボトムアップとしてシティズンシップが育まれることなど、全てに期待したい」と水野さん。

廣田さんは、「子どもたちだけではなく、大人に向けた活動もぜひ取り組んでほしい。冒頭でも伝えたように、『それはなぜなんだろう?』という問いがもっと生まれると、日本の未来は熱くなると思います。また民主主義の側面から、学校や子どもたち、カタリバだけじゃなくて、企業がもっと関わっていく、参画する機会があることで、(活動が)さらに面白くなるのではないでしょうか。それが学校や先生たちにも刺激になり、新たな発見になると思います」との期待が寄せられました。

トークイベントの様子



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