わたしたちがルールメイカーになるまで—ハッシャダイソーシャル三浦宗一郎さん対談

インタビュー

既存の社会規範に対して消極的に追従するのではなく、積極的に向き合い、ときには対話を通して改善を促していく「ルールメイカー」。

古野香織が「今会いたいルールメイカー」に会い、語らい、その胸の内を知り、感じたことや考えたことを綴る企画。

第2弾の今回のゲストは「Choose Your Life!」をビジョンに掲げ、すべての若者が自分の人生を自分で選択できる社会の実現を目指す「一般社団法人ハッシャダイソーシャル」の代表理事を務める三浦宗一郎さん。

教育を変えるというビジョンを共にしながらも、わたしたちが教育に関わるようになった経緯は驚くほどばらばらでした。

なぜ「教育」?2人のきっかけとは

古野:お久しぶりです。初めて会ったのは9月に実施した「ルールメイキングサミット」でしょうか?同い年ということもあり、それまでも三浦さんの活動を拝見していましたが、直接お会いして「教育」という領域にたどり着いた経緯や見てきた景色が自分とは違うのではないかと思ったんですよね。なかなか三浦さん自身の話を深掘りするタイミングがなかったので、今日は三浦さんのこれまでの体験や考えていることについてたくさん聞いてみたいと思ってます。

三浦:僕も古野さんの話を聞いてみたいと思ってたので嬉しいです。よろしくお願いします。

改めて自己紹介をすると、僕はいま「ハッシャダイソーシャル」の代表理事をしていて、すべての若者が生まれ育った環境に関わらず、自分の人生を自分で選択できる社会の実現を目指して活動しています。具体的には高校・少年院・児童養護施設などに行きながら、話を聞いたり、講演をしたりと、いわゆるキャリア教育のようなことをしています。

古野:私は学校と連携することが多いですが、同じ「教育」と言えど、活動場所が少しずつ違うのが面白いですよね。教育は本当に幅広い人が関わる話なのだと実感します。

三浦:古野さんは、どんな流れで教育に関わるようになったんですか?

古野:わたしは2021年の4月に新卒でカタリバに入ったんですけど、大学生のときに選挙権年齢引き下げのロビー活動に参加していました。高校の時の政治経済の授業がダントツで面白くて、理系志望から文転するくらいに先生の授業が好きだったんですよね。大学に入学する頃には若者の投票率や選挙啓発に関心を持つようになっていました。ロビー活動に参加していた時はいろんな人に会って、訳が分からないながらにいろんなところに連れて行ってもらいながら一生懸命選挙の大切さを話したりして。あとはみなさんご存じの通り、実際に法律が改正されて、70年ぶりに選挙権年齢が引き下がります。三浦さんは、その時のことで何か覚えてることはありますか?

三浦:いや、まじで覚えてないです。気づけば18歳になってた…(笑)

古野:たぶん当時のお互いの関心は全然違うところにあったと思うし、持ってた情報にこれだけ差があるのって面白いですね。

私は、ロビー活動から法改正に至るという政治への成功体験があって、選挙権年齢が引き下がった後も若者への選挙啓発の活動をしていました。でも選挙権年齢が引き下がっても、選挙に行こうと言ってみても、選挙に関心を持ってもらうのは難しかった。もっと根本的なアプローチが必要だと思い、高校生への出張授業を始めたのが、教育に関わるようになったきっかけです。

ちなみに三浦さんは、何か政治との接点はありましたか?

三浦:僕の政治との接点は…ハードコアパンクなんですよ(笑)

ある時、高校のサッカー部の監督にライブハウスに連れて行ってもらったんです。実は、そのサッカー部の監督がハードコアパンクのバンドマンだったんです。ただ、僕はライブでの政治的なメッセージよりも、彼らの生き方により強い衝撃を受けていました。自分のやりたいこともなかなか口に出せない社会の中で、自分をさらけ出して、熱量を持って生きてる人たちがいる。そういうことを知るきっかけになったんです。

僕も、一緒にハッシャダイソーシャルの代表をやっている勝山も、高校生くらいの時は本当に狭い世界の中で閉塞感を感じていて。どうやってこの閉塞感を突破できるかともがく中で、一筋の光をくれた大人たちがいるんですよね。彼らの背中とか、声かけとか、いろんなもので自分の人生が変わってきた感覚が強い。恩師をはじめ、かっこいい大人たちの背中を見て、「自分もそうなりたい」という思いが活動の源泉になってると思います。

古野:ハッシャダイソーシャルの事業で大切にしていることと、三浦さんたち自身の体験が本当に繋がっているんですね。

三浦:でも、最初は僕たちがやりたいのって「教育」ではないって思ってました。

古野:それは意外です。「教育」というと、学校教育のイメージが強かったのでしょうか。

三浦:そうです。思い返すとうちはあまり家庭環境が良くなくて、親父はちゃらんぽらんだし、母親は朝から晩まで働いてるような家庭でした。その母親が「尊敬できる大人を見つけなさい」って常に言ってたんですよ。だから僕は子供の頃から目の前の大人が尊敬できるかどうか、大人の品定めをしまくってたんですよね(笑) 先生に嫌われることもあったけど、すごくお世話になった先生がいたり、とある先生の存在で人生が大きく変わったりした体験が自分のやりたいことに繋がっている。僕たちのなかには学校教育から外れてきた人もいたし、最初から教育に興味があったわけではないんですよね。人との出会いがあり、自分がやりたいことをやっているうちに「これって教育と言われるんだ」と後から気づきました。

「運がよかった」と思える出会いを増やしたい

古野:面白いですね。どんな人に出会い、どんな言葉をもらって、どんな関係を築いたかによって、自分のキャリアや人生が変わっていく。これらが目指すことに接続してきたのだと感じました。

三浦:人生が人との出会いで広がったり狭まったりするものだとしたら、自分の人生ってコントロールできないと思った時があって。僕がここまで頑張れたのも、自分の頑張りを応援してくれる人たちがいたから。そういう人と出会えた僕は本当に運が良かったと思います。自分たちが能動的に足を動かせば、「運が良かった」と思える出会いを増やすことができるんじゃないか。。そして誰かがそのアクションを起こすことで、思ってもなかったような出会いが、誰かの人生にやってくることもある。自分たちの人生を振り返って、今までの価値観を壊し、それが結果的に良い方向に向かうことを一緒に目指せる「運の良い出会い」を生み出していきたいと思っています。僕はこの思いとともに、ハッシャダイソーシャルの活動をしているところがありますね。

前編では、それぞれ活動の元になった経験や思いについてお話しました。

自分の人生は自分一人の力で作ってきたわけではない。教育という領域で大きな熱量とともにたくさんの人たちと向き合ってきた三浦さんが、自身の人生を「運が良かった」と語る姿は印象的でした。

様々な分野のルールメイカーに会い、語らい、感じたことや考えたことを綴っていく特集「ルールメイキングでつくり変える未来」。

後編では、自分の人生を自分で選ぶために必要なことについてお話していきます。ぜひお楽しみください!

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