校則が見直されたその先 意見のぶつかりから知った対話の大切さ

ルールメイキングは、生徒が中心となり教員など学校の関係者と対話しながら校則・ルールメイキングを見直していく取り組みです。「校則・ルールが変わる」という結果だけではなく、立場や意見の異なる違う人との対話を通じて納得解をつくるプロセスを大切にしています。

連載企画【ルールメイキングから始まるわたしの一歩】では、ルールメイキングやそのイベントに関わった生徒や卒業生、教員から思いを聞くことで、ルールメイキング活動の先にあるものを考えていきます。

今回お話を聞いたのは…

進戸実聖さん

京都府立清明高等学校 3年

進戸実聖さん

生徒会メンバーを中心に有志から構成される校内のルールメイキングの活動に参加し、香水に関するルールの見直しに携わるほか、主に校則見直しが進んだ後の効果検証を実施している。ルールメイキング・サミット2024には招待生として参加。

「話し合いがしたい」その一心で始めたルールメイキング

ーールールメイキングを始めた理由を教えてください。

高校2年生になるときに生徒会の人たちが校則を変える流れを先生とつくり、その効果について話し合うワーキンググループも同時に発足しました。校則を変えることに関心があったというよりは、中学生の頃、不登校になった時にフリースクールに通っていて、一つのトピックを何人かで議論する場が多くあり、「思うままに自分の意見を出せる話し合いって楽しい!」と感じていたので、ワーキンググループに入ることにしました。

ワーキンググループは生徒会が主体ではありますが、私のように生徒会には入っていなくてもワーキンググループの場には毎回集まるという人もいます。私自身は後に生徒会に入り、ワーキンググループの中心となって活動するようになりました。

ーー具体的にはどんな活動をしてきましたか。

数ヶ月に1回、ワーキンググループで集まって会議をしています。特にメンバーは固定されていないので、来られる人が十数人集まって活動する形です。去年4月から制服が標準服化したり、ピアスの着用や髪を染めることもOKになったりと校則が大きく変わりました。その中で新しく問題が起きてないか確認をするために、生徒にアンケートを実施し、結果を元に改善点を話し合うという活動をしています。

▲ワーキンググループの話し合いの様子。タブレットなども活用して話し合いを進めます。

最初は「話し合いがしたい」という気持ちだけで活動に参加しましたが、自分たち主体で学校のことを話し合ったり、意見を言えたりすることがすごく新鮮で、アンケートで寄せられる悩みを改善していきたい、学校をより良くしたいと考えられるようになりました。活動の中では自然と校則について考えられるので、自分の中で「こうした方がいい」「こういう意見は大事にした方がいい」という思いがどんどん出てきて、活動にのめり込んでいったように感じます。

私の学校には、感覚過敏や学習障害を持つ生徒もいます。活動に参加するまでは、私自身がそれらの症状を全然知りませんでした。自分にはなかった困りごとがあると知ったことで、それを自分が良くしていきたいと思うようになりました。

私がワーキンググループに入ってから、香水に関する校則を見直しました。生徒へのアンケートで困っていることを聞いた時に「香水の匂いがきつくて困っている」という意見が多くありました。「感覚過敏の人だけではなく、普通に学校で生活している人でも香水の匂いがきつい・嫌だと感じる人がたくさんいるのであれば、やめた方がいい」ということになり、「香水は他者に配慮するという面からやめよう」という文章が校則に足されました。その時に「自分たちの意見で学校がちょっと変わった」と感じて嬉しかったですし、直接感謝の言葉を伝えてくれた友達もいて「香水のことで困っていた人の不安が少しでも解消されたのであれば良かった」と思いました。

▲身だしなみに関する校則が変わったのちの生徒の様子。

一方で、自分は「困っている人たちのことを考えて、学校を良くしていこう」という考えのもとルールメイキングを推進するワーキンググループに所属しており、多数派の立場としてルールメイキングを進めていました。でも標準服化に対して「髪を染めることやメイクをすること、ピアスをつけることもOKになり、本当はつらかった」「本当は変わってほしくなかった」という声も聞くことがあり、はっとしました。ワーキンググループは校則を変えることにに前向きな人たちが集まっている場でもあるので、校則を変える方向での意見が多く出がちですし、自分の視野からも「校則を変えてほしくない」という意見が消えがちになってしまっていたんです。

「本当は嫌だった」という思いを知ったときに自分の中で「活動をしていくにあたって、自分とは違う意見を持っている人がいることを忘れちゃいけない」「他者の意見も自分たちの意見もできるだけ平等に自分の中で考えられるようにしたい」と思えて、視野や価値観が広がったように感じます。

たとえ意見が違っても目的は同じ。壁を乗り越えるために参加したサミット。

ーールールメイキング・サミットに参加したきっかけを教えてください。

校則が大幅に変わったあとというタイミングもあり、ワーキンググループでは既に変えられた校則に関して毎回アンケートを見て振り返る活動ばかりになったり、ワーキンググループのメンバーそれぞれが校則への想いを持っているからこそ、意見のぶつかり合いになる時もあり、うまく対話ができていないのではないかと感じることもありました。だから、サミット参加前は「何か前進しているんだろうか」「自分がなぜルールメイキングの活動をしているのか」という部分がぶれそうになっていました。

どうしたらうまく対話ができるのか学びたいと思い、ルールメイキング・サミットにも参加しました。これまでに関西のルールメイキングの大会にも何回か参加させてもらっていました。他校の生徒と情報交換をすると、自分の学校の参考になることを感じていたので、さらに大きい場であるサミットでもっと色んな人と話してヒントを得たかったのです。

▲関西地域生徒大会2023で、1年間の活動をまとめたポスター発表に挑戦しました。

ルールメイキング・サミットで得られた気付きを教えてください。

サミットでは、対話について学ぶゲームに参加して、最上位目標をお互いに共有することが、対話のうえで大事だと気づきました。私たちの学校には「つまずきのある人もない人も、ともに生き生きと過ごしやすい学校」という学校ビジョンがあります。これを1人1人が認識して対話することができたら、ただ意見のぶつかり合いになるのではなく、「意見は違っても目的は一緒だ」と感じながら話し合えるようになるのではないかと思いました。

校則が変わってほしくなかったという声もあったけれど、私たちの学校は校則が変えられた後で、以前より過ごしやすいと思う人もたくさんいると思っています。その環境を続けていくためにも「悩みを持っている人がどうしたいと思っているか」や「どういうことを辛いと思っているか」を俯瞰して、その意見を受け入れて学校をより良くしていきたいと思うようになりました。

ルールメイキングは答えのない問い。対話を通して変わった価値観。。

ーー先生方はどのように活動に関わっておられますか

先生方は、私たち生徒に対して「学校は生徒が主体の場。校則を変えたり、厳しくしたりすることで、生徒が過ごしやすくなったり逆に困ったりすることもあるから、校則は生徒が主体となって決めるべき」と伝えてくださいます。

過去には先生方の研修として、感覚過敏や学習障害を持っている生徒、不登校だった生徒らが講師になって、自分たちがどんなことに困っているのかを先生に知ってもらう「ダイバーシティピッチ」も行われました。参加してくださった先生からは「生徒がそんなことに困っていることをそもそも知らなかった」「自分が作った授業のプリントもあの子には使いにくかったのかもしれないを気づいた」などとコメントをしてくれ、先生方も生徒を理解しようとしてくれます。

▲生徒が講師になって実施した「ダイバーシティピッチ」の様子。

多くの先生方が「生徒の意見を否定しない」ということも共通認識で持っておられて、ルールメイキングの活動もその認識の下で応援してくださっています。

周囲の友達も、ルールメイキングの存在をちゃんと知ってくれている人が増え、ルールメイキングのアンケートにちゃんと答えてくれる人も増えたと感じています。サミットでは「友達でさえルールメイキングの活動を知らない」という学校もあると聞いたので、学校全体がルールメイキングの活動を知ってくれているということは大きな変化だと思います。

ーールールメイキングを通して感じたことを教えてください。

最初は、ただ話し合いが楽しそうというだけでした。でも、ルールメイキングを通じて、様々な困りごとを感じている人のことを知ったり、対話を通していろいろな考え方や意見に出会ったりして、私自身の価値観や視野を広げることができました。自分が困っていなくても、他の人が困っていることをちょっとでも良くできたら、その嬉しさは自分にも返ってくると思っていますし、他の人が少しでも学校で過ごしやすくなったという意見が届くと、ルールメイキング自体のやりがいを感じられます。

ルールメイキングは答えのない問いだと思います。だからこそ、活動をする際にはお互いの意見を大事にしながら擦り合わせることが必要だと感じています。もちろんうまくいかないこともありますが、それらも自分の経験になっていると思えています。

「ルールメイキング地域イベント」に参加してみませんか?

 生徒主体の校則見直しや学校づくりをはじめたい、既に実践している学校の教員や生徒が集まり、各地域ごとで対面・オンラインのイベントを行っています。2月は年に1度の「地域生徒大会」が各地域で開催されます!
 参加校によるルールメイキング実践発表や、教員・生徒同士の交流を通じて、自分の学校の活動に繋がるヒントを得られる機会です。
 見学・観覧も募集しています。みなさまご参加お待ちしております。

■北海道・東北
【2025年2月末~3月で実施見込み】北海道・東北地域生徒大会@オンライン
■関東
【2025年2月9日(日)】ルールメイキング教員交流会vol.2@カタリバ中野オフィス
■東海
【2025年2月24日(日)】東海地域生徒大会@なごのキャンパス
■関西
【2025年2月2日(日)】関西地域生徒大会@大阪夕陽丘学園高等学校
■中国
【2025年2月8日(土)】中国地域生徒大会@コワーキングスペースAxEL(広島)・くらしき空飛ぶクルマ展示場(岡山)
■九州・沖縄
【2025年2月23日(日)】九州・沖縄教員交流会
【2025年2月24日(月祝)】九州地域生徒大会@オンライン

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