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子どもも大人も幸せな学校へ。「声」を真ん中に行動を起こすーー関東エリア地域パートナー・NPO法人 School Voice Project
対話を通じて、児童生徒主体の学校づくりに取り組む「みんなのルールメイキング」。全国に活動が広がる背景には、各地域でルールメイキングの普及・啓発に取り組む「地域パートナー」の存在があります。ルールメイキングに取り組んでいる・取り組みたいという学校のサポートや地域内でのコミュニティ形成・強化のために活動するパートナー団体のことで、2025年度現在は、全国6つの地域で協働を行っています。
地域ごとに特色のある教育現場を実際に回り、学校との関係構築や教員・生徒向けイベントの企画などを行う地域パートナーは、どんな思いで、どんな活動をしているのか。今回は、関東エリアで2024年度からカタリバと共に活動する地域パートナー、NPO法人 School Voice Project / スクール・ボイス・プロジェクト(以下、SVP)の理事 武田緑さん(以下、武田)、理事 逸見峻介さん(以下、逸見)、楠本美央さん(以下、楠本)にお話を聞きました。
最後には、2026年2月15日(日)に開催されるルールメイキング関東地域児童生徒大会&交流会の告知もしていただきました!




——SVPとカタリバは、共に「教育」に携わる共通点があります。まずは皆さんが教育の世界を志したきっかけを教えてください。
逸見:私は高校教員でもあるのですが、高校時代に部活動を通じて良い仲間に出会え、チームプレーを通じて人間的にも成長できたことが大きいですね。日本史が好きで、大学でさらに学びたいと思ったことが社会科を選んだ理由ですし、中学校教員である両親の影響もありました。働く中で、もっと勉強しなくてはいけないと感じ、こうしてSVPの活動に関わっています。
楠本:私は学校が好きな人間でした。だからこそ、学校がつらかった人の苦しさに気づけず、そんな自分が教員になるのは危ないと、一度は別の仕事に就きました。でも最初に就いた仕事で、「自分には価値がある」「困ったら助けてもらえばいい」という社会や他者への安心感や、信頼感を持てずにいる大人にたくさん出会い、学校教育の大切さを実感したことから、小学校の教諭になったという背景があります。
武田:私は、人権教育に熱心に取り組んでいる大阪の公立学校で育ちました。地域、学校やクラスでも様々なマイノリティーの方がいて、困ったり嫌な思いをしたりしていることを身近に感じていましたし、学校の中でも学んでいました。だから、世の中にある理不尽な構造をどうにかしたいという思いが強くありました。大学生のときに、ピースボートで世界一周し、こういった構造は世界中にあることが分かったんです。その時に、子どもの時から社会に起きていることを自分事として捉え、アクションを起こす人が増えていく必要性に気づきました。でもそのためには、「自分が動けば何かが変わる」という実感がないと、実際には動けないですよね。だからそのような実感を育む教育が必要だと思ったんです。

——興味深いですね。そんな中、ルールメイキングには2024年度より関東エリア地域パートナーとして、一緒に活動してくださっています。ルールメイキング活動のどのような部分に共感してくださったのでしょうか。
逸見:私は、やはり学校には構造的な問題が多いと感じています。”国民を養成する機関”でもあるため、管理的な部分が前に出てしまうことがあります。それゆえに、生徒も教員も学校の中で声をあげられなかったり、モヤモヤを抱えていたりすることがあります。「生徒指導」の領域においても、それは同じです。本来であれば、生徒指導も生徒と教員とのコミュニケーションの1つですが、その側面が機能せず、管理が行き過ぎて問題になることも…。現在の勤務校で、私が生徒指導に主任として関わることになり、実際に指導体制の見直しを行いました。カタリバから声をかけてもらった時は、もっと自分自身が勉強したいというのもありましたし、学校をより良くしていくヒントがあるのではないかと考え、引き受けました。
楠本:私は新型コロナウイルス禍で、保護者や地域の方たちが、学校のコロナへの対応やこれまでの学校のルールに憤っていたり、不満を抱えていたりすることを耳にしたんですね。私は母親でもありますが、当時は小学校教諭でもあったので、周りの教員たちが一生懸命やっている姿を目にしていました。そのため、「対立」ではなく、対話で現状をより良くすることができないだろうかと、ずっと考えていたんです。実際に私が暮らす地域で、町の人たちと教育について対話する場所をつくっていました。ただ、具体的な課題解決に繋げることは難しく、もどかしさを感じ、当時はルールメイキングについてよく調べていましたね。だからこそ、全国規模で活動しているカタリバの事業に、関われていることはうれしいことですね。
武田:私は、ルールメイキング活動には以前からとても共感していました。ずっと人権教育に携わってきた立場として、人権侵害的な校則には強い課題感を持っていました。ただ一方で、「変えることの難しさ」「変わらない理由」は、教員側に人権感覚がないからというわけではなくて、先ほど逸見さんも話していたように、構造的な問題が深く結びついています。外からのまなざしや受けてきた批判を恐れて、「変えること」が怖くなってしまう学校側の一面もあります。「だから学校はダメなんだ」と簡単に言い切ってしまうだけでは、良い方向に変わっていかない。その構造を考慮せず、学校だけを責めるのは違うといった思いがずっとあったんです。
SVPはまさに、様々な構造的な問題でがんじがらめになって動けなくなっている学校や、教員たちの「自分は本当はこうしたいんだ」「こういう葛藤を抱えているんだ」という声を真ん中に置きながら活動しようと、立ち上がった団体です。ルールメイキングの対話的な活動に、共感しましたね。また、私たちが目指す教育観「民主的でインクルーシブな学校」という部分とも親和性が高いですし、共に動くことで相乗効果が出せると考えました。

――そういった共感をもとに一緒に活動していく中で、ルールメイキングの面白さや難しさはどういうところでお感じになりますか。
楠本:印象的だった場面としては、ルールメイキングに取り組んでいる学校と、これから取り組む学校が交流する企画「放課後交流会」を実施した時のこと。これから始める学校の生徒が、他校の生徒に「私たちはこう考えていますが、この点は難しくなかったでしょうか?」などと、オンラインの画面上で、積極的に質問や相談をしていて。その姿に、「自分たちの学校を自分たちでより良くしていくんだ」というエネルギーを感じました。
大変な面でいうと、「みんなのルールメイキング・パートナー」に登録してくれた教員が、学校の中でルールメイキングを実践していくことは簡単ではありません。対面のイベントも開催していますが、オンライン中心でのやりとりが多いため、その学校にいない私たちがどこまで力になれているのか、どうやってサポートしていけると良いのか…。常に悩むところです。
逸見:私が印象的だった場面としては2つ。まず1つ目が、2024年度に開催された「ルールメイキング・サミット」です。「学校をより良くしたい」「社会を良くするために、一歩踏み出してみたい」との熱意を持った生徒たちが、全国から東京にたくさん集まっている。その光景に圧倒され、涙が出ました。同時に、自分自身の生徒との関わりを反省して、「もっと自分から変わらなくちゃいけない」と思ったんです。
もう1つは、ルールメイキング活動に取り組む学校にインタビューをさせてもらった時のこと。生徒自治や対話に力を入れている都内の高校だったのですが、生徒たちが、相手をリスペクトしながら、等身大の言葉で自分の意見を伝える姿に、胸を打たれました。対話を何度も重ねていくと、こんなに成長していくんだ…と。その隣で、教員の方が生徒の話をじっくりと聞いているのですが、生徒の発言や考えを尊重し、信頼して、その場を「委ねている」と感じたんです。その関係性もまた素敵で、「ルールメイキング活動にはこれだけの価値があるんだ」と、関わり方について、大切なことを気づかせてもらう機会となりました。
武田:その上で、もっとSVPとルールメイキングのコミュニティが混ざり合うと良いですよね。ルールメイキングのコミュニティの中で、共通言語や共有する価値をお互いに確認したり、構築したりしていくことが今後さらに重要だと思います。

——2月には、SVP主催の「ルールメイキング関東児童生徒大会・交流会」が行われます。武田さんは講師としても登壇されますが、どんなイベントになる予定でしょうか。
逸見:昨年同様に、小学生の発表参加も募集しています。参加者が異年齢でもあるので、「自分たちの取り組みが例え小さなことであっても、続けていくことで、その先にこんな素敵な大人たち、年齢的に上の人たちがいるんだ」といった、人生の少し先を見られるような機会にもなればと考えています。お互いに受け取ったり、渡したりできるものはきっと多いと思います。
武田:ルールメイキングは、まだ「校則の見直し」というイメージが強い人もいると思います。私が担当するワークショップでは、校則に限らず学校の様々な場面において、自分たちの希望や違和感を大事にしながら、「それを声に出していいんだ」「自分たちで作っていけるんだ」ということを実感できる機会にしたいですね。

——最後に、この活動にさらに期待したいことや今後の展望を教えてください。
逸見:武田さんの話とも繋がりますが、生徒が自分の権利を大切にできるようになったらなと思います。学校に対して意見を言っていいし、違和感を持っていい。ルールメイキングや対話といった手段を活用しながら、みんなにはお互いに権利があり、それを尊重し合うことが大切であることに、もっと気づいてほしいですね。
武田:ルールメイキング活動の中で大切にしている「生徒を信頼して任せること」が、もっと学校で浸透すると、きっと先生側も楽になっていくと思っています。つまり、「あ、こうやって任せても大丈夫なんだ」と先生が安心して手放せることで、学校はより持続可能になるということ。SVPも、教員の方に「がんばれ」とエールを送るだけの団体ではなくて、現場にゆとりが生まれていくことを目指す団体です。ルールメイキング活動は大変な部分もあるけれど、その先に、教員の「肩の荷が降りる」未来があることを伝えていきたいです。
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