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「生徒指導提要」の改訂から1年を振り返る これからの生徒指導について
お知らせ
現在文部科学省では、教員が利用することができる研修受講履歴記録システム及び教員研修プラットフォームの新設が進められています。
みんなのルールメイキングは、令和6年度にこの研修プラットフォームに掲載される動画コンテンツを、静岡市と協働し制作しました。
動画コンテンツの監修には、「生徒指導提要の改訂に関する協力者会議」で副座長をつとめられた関西外国語大学教授の新井肇氏をお招きし、全6本の動画コンテンツを通じて、「改訂版生徒指導提要」と、生徒指導の一つの取り組みとしての「ルールメイキング (対話的な校則見直し)」の要点と実践方法を紹介しています。
今回のイベントでは動画コンテンツ制作に監修いただいた新井氏に登壇いただき、令和4年度の生徒指導提要改訂の背景や、具体的な教育活動に活かす際の留意点について解説いただきました。
さらに、令和3年度よりルールメイキングを実践する千葉県立姉崎高等学校 教諭 山村向志氏にも登壇をいただき、学校現場でのルールメイキングの取り組みの様子や、教員として生徒に伴走するにあたって配慮すべき点などについてお話しいただきました。
関西外国語大学外国語学部教授
新井 肇(あらい・はじめ)
関西外国語大学教授。埼玉県の高校教員として30年間勤務した後、2006年より兵庫教育大学大学院教授,2017年より現職。専門は、生徒指導論、カウンセリング心理学。(いじめ防止、自殺予防等を中心に、生徒指導の理論と実践を架橋する研究に従事。)現在、日本生徒指導学会副会長、文科省「いじめ防止対策協議会」座長、生徒指導提要の改訂にあたっては、「生徒指導提要の改訂に関する協力者会議」副座長を務めた。
千葉県立姉崎高校教諭
山村 向志(やまむら・こうし)
筑波大学大学院教育研究科を修了後、2019年に千葉県立姉崎高等学校社会科教諭に赴任。
学校内の校則見直しや、地域の社会問題に取り組むプロジェクトなど、市民性育成に重点をおいた学習や活動を展開している。
生徒指導改訂の要点とは?
まずはじめに新井氏より、生徒指導提要の改訂の背景として、昨今の児童生徒を取り巻く社会環境が大きく変化し、児童生徒が抱える課題が深刻化していると説明がありました。
挙げられた児童生徒の抱える課題は大きく4つです。
1.不登校の増加と長期化 2.いじめの増加と深刻化 3.暴力行為の低年齢における増加 4.児童生徒の自殺者数の増加 |
学校そして教員は、このような多様な課題に対応していく必要がある中で、改訂版生徒指導提要では、生徒指導とは児童生徒が「自己実現を目指す個人+責任ある社会の担い手」として成長することを支援することを目的とすると示されています。そして新井氏は、この目的のためには「させる指導」から、必要に応じた指導や援助をおこなう「支える指導」への転換が求められると強調しました。
このような状況を踏まえると、教員が生徒指導に取り組む際には、どのような点に留意したらよいのでしょうか。
新井氏からは4つの観点が示されました。
1.児童生徒の権利に関する教職員の共通理解 2.ICTを活用した生徒指導の推進 3.幼児教育と小学校教育の円滑な接続 4.社会的自立に向けた取り組みを意識 |
児童の権利について教職員が共通理解を持つことや、社会的自立に向けた支援を行うことなどが説明されており、ルールメイキングで大切にしていることと関わりが深いことが分かります。
「支える」生徒指導を体現する教員のサポート
改訂版生徒指導へ理解を深めたうえで、学校現場ではどの様な取り組みが可能なのか、千葉県立姉崎高等学校 (以下、姉崎高校) 山村氏にお話をいただきました。
ルールメイキングの取り組みが始まった令和3年度の姉崎高校は、過去に厳しい生徒指導によって学校をたて直した経験があり、その当時の頭髪・身だしなみ指導が残る学校でした。それ故生徒たちは、学校に対する不満を溜めていたり、校則を変えることを諦めている雰囲気があったそうです。
しかし、社会情勢を踏まえると同時に、生徒会の生徒から「校則を見直したい」という声があがり、ルールメイキングに取り組むことが決まりました。
1年間にわたるルールメイキングに取り組み、山村氏は、「生徒の主体的な活動には、教員のサポートが欠かせない」と実感したと話します。
山村氏がおこなったサポートは大きく4つです。
1.安心して生徒が意見を表明できる場を作る 2.生徒のモチベーションを高める 3.主体性を引き出すきっかけを作る 4.特別活動や教科指導の時間に全員で「考える」時間を作る |
これらはまさに、新井氏が強調する「支える指導」を具現化した取り組みといえます。
最後に2名の発表を踏まえ、参加者を含めたディスカッションを行いました。
ディスカッションでは、「周囲の先生の巻き込み方」や、「多忙な中でどのように支える生徒指導を実現するか」、「これまでおこなってきた指導と新生徒指導提要の内容は重なる部分もあるが、あえてすべきことは何か」などの話題で盛り上がり、イベントは閉幕となりました。
生徒指導とルールメイキング
生徒指導の目的である「自己指導能力」の獲得には、児童生徒が主体的に課題に挑戦し、多様な他者との協働が大切です。
自分たちの過ごす環境を変えたいと願い、行動していく「ルールメイキング」の経験を通じて、子どもたちは多様な他者との対話を経験します。
今回のイベントでは、子どもの声を聞き「させる」指導から「支える」指導へと転換する重要性に気が付くと同時に、ルールメイキングは「支える」生徒指導の一つの取り組みであるということも改めて認識することができました。
冒頭でご紹介した静岡市とカタリバが協働し制作した動画コンテンツでは、より詳しく改訂版生徒指導提要とルールメイキングの要点を解説しています。さらに、全国でルールメイキングに取り組む6つの学校の実践事例を、新井氏の解説とともにご紹介していますので、ぜひご覧ください。
令和6年度に公開予定ですので、公開されましたらまた改めてご案内をいたします。
先生同士のコミュニティで実践のヒントを学びませんか?
ルールメイキング・パートナーは、生徒主体の校則見直しや学校づくりをはじめたい、既に実践している小・中・高校の先生が無料で参加できるコミュニティです。
登録には学校承認は不要で、先生個人での申込みが可能です。毎月、教員交流会と題したオンライン勉強会・交流会に参加できる他、ルールメイキング事務局との無料相談や、生徒同士の交流会への招待等をご案内しています。
(登録までの所要時間:1~3分程度)
本記事ではイベント内容を抜粋してご紹介しました。「ルールメイキング・パートナー」にご登録頂くと、アーカイブ映像にて全編をご覧いただくことができます。
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