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10代が身近な社会を変える方法 Change.org 遠藤まめたさんと考える
レポート
こんにちは、ルールメイキング事務局です。
2022年12月10日(土)に行われたChange.orgとみんなのルールメイキングのコラボイベント「多様な学校・社会にするために必要な対話とは~共感を生むための伝え方・受けとめ方~」の様子をお伝えしていきます。
本イベントはオンライン署名サイト「Change.org」スタッフの傍ら、トランスジェンダーの当事者として書籍出版や性的マイノリティへの支援活動を行う遠藤まめたさんをゲストにお迎えしました。
今回は「みんなが幸せになれるルール」を目指しながらルールメイキング活動に取り組む中高生が、遠藤まめたさんと一緒に、どんな対話が必要なのか、そしてどのようにして対話のきっかけを生んでいくのかについて話し合いました。
このイベントに参加していない方にもイベントの様子が分かるようにお届けします。
PressRelease/12月10日(土) 世界人権デーにNPOカタリバとChange.org Japanが校則見直し及びルールメイキングのコラボイベントを開催
一般社団法人にじーず代表
遠藤まめた
-プロフィール-
1987年、埼玉県出身。オンライン署名サイト「Change.org」のキャンペーンサポーターとして働く一方、トランスジェンダーとしての自らの体験をきっかけに10代後半より LGBTの子ども・若者支援に取り組む。著書に『先生と親のためのLGBTガイド もしあなたがカミングアウトされたなら』(合同出版、2016年)ほか。一般社団法人にじーず代表。
オンライン署名サイト「Change.org」と「対話」の関係とは?
「Change.org」は、世界196カ国・4億人が利用している、ネット上で署名活動ができるウェブサイトで、日本では291万人が利用し、今まで8,200のキャンペーンが行われてきました。オンライン署名の変化を実現できる立場にいる人(=意思決定者)と対話をつくる手段ととらえ、「どんな人であっても自分の意見が大切にされて、実際に変化をもたらすことのできる社会」を目指しています。
遠藤さんはキャンペーンを立ち上げた人の実現したい思いを汲み取り、具体的に誰とどのように署名をきっかけに対話をしていくのか、といった作戦会議を開いて話し合い、何かを変えたい人の思いがきちんとした形になるためのサポートをしています。
数字を集めるよりも大事なこと
遠藤さんは「署名の場合、一見すると賛同者の数を集めれば物事は変わるんじゃないか、と思われています。もちろん数は大事だけど、それよりも大事なのは意思決定者が何を懸念していて、どんなことを考えているのか、対話をして一緒に納得解を探っていくことです。」と語ります。
ルールメイキングでも全校生徒にアンケートを取って、一部の校則を変えて欲しいという声を集めることがありますが、それだけで校則が簡単に変わることは多くありません。
学校を構成しているのは生徒だけでなく、先生や保護者の存在もあります。どうしてその校則があるのかをじっくり考えていくと、安全に暮らしてほしい思いや、社会に出た時にTPOを学んでほしいといった先生・保護者の思いがあったりします。
そうした思いを対話することで「ではもっと最適なルールとは?」と議論を進めることができます。オンライン署名も同様に賛同する「数」よりも、数をもとに対話をする「きっかけ」を生むことが署名活動で目指すのだと考えます。
続けて遠藤さんは「物事を変えていくためには一緒に声をあげてくれる仲間をみつけること。学校の校則を変えたいと思うときもそうで、一緒に具体的な行動をしてくれる人が見つかるといいなと思います」と話します。また、人によって納得するポイントが違うため、より多くの人にキャンペーンに賛同してもらうためには、具体的なデータやキャンペーンにかける想いを分かりやすく伝えることが重要なのだそうです。
10代が立ち上げたキャンペーンで実際に物事が変わった!
ここからは、実際に署名で物事が変わった具体的な事例を紹介していきます。
遠藤さんが最初に挙げたのは、知らなかった人に知ってもらい成功した事例です。
がんの治療や骨髄移植などによって免疫が失われた結果、予防接種をもう一度最初からやり直さないといけなくなった子どもが、きちんとした援助を受けられるようにするための署名が立ち上がりました。全て自費で払った場合、かなりの負担となってしまうのですが、あまりこの実態を自治体を含め多くの人は知りませんでした。それが当事者の母親の署名によって、多くの人がこの実態を知ることとなり、東京都北区で助成制度ができました。
次に挙げたのは、署名による多くの人の声が背中を押した事例です。「おでかけや災害時に赤ちゃんがすぐ飲める乳児用液体ミルクを日本でも製造・販売してほしい」という署名がありました。液体ミルクは日本の食品規格に項目がなく、今まで販売されていませんでした。そんな状況を多くの人の署名がメーカーを後押しし、日本でも販売されることが決まりました。
10代が立ち上げた署名もあります。
静岡県富士市では公立小中学校にエアコンが設置されていないため、児童・生徒が汗だくで授業を受けたり、熱中症になるリスクがありました。富士市の高校生が市にエアコン設置を求める署名を立ち上げたところ、市長が設置を約束してくれました。
また神奈川県の高校生が「地球に優しい再生可能エネルギーで発電した電力を使って勉強したい」「環境問題の授業をやっているのに、その授業中に環境が破壊されているのはおかしい」と署名を集めたところ、県知事が公立学校で再生可能エネルギーを使うように約束してくれたという事例もあるそうです。
学校の制服に関する署名で言えば、トランスジェンダーの高校生が江戸川区長に制服を性別に関係なく選べるようにしてほしいという署名を提出して実際に変わりました。小学生が学校給食の牛乳に使うプラスチックストローの撤廃を求めた署名や、子どもが遊べるスケートパークを作ってほしいという署名など、数多くの署名が10代の手でつくられ、実際に物事を変えるところまで進みました。
遠藤さんは、成功する署名にはある共通点があるといいます。その共通点をまとめました。
- みんなが単純に知らなかった話題で、話を聞いたら賛成する人が多いもの
- 「大事な問題だよね」と思われながらも、後回しにされていたもの
- 当事者の切実な声が存在しているもの
また、「どんなアプローチがうまくいくか?」について、遠藤さんは以下のようにまとめました。
- 限定的な地域の課題なら、オンラインよりも紙の署名の方が集めやすいこともある
- 「特定の学校の中だけ」ではなく、地域全体の学校にまつわる課題の方が署名との相性が良い
- 「正しいことを言う」も大事だが、誰に届け、誰と変えるのか、そのために誰に味方になってもらうかも大事
この共通点はオンライン署名に限らず、ルールメイキングにも通ずるところがあり、参加者の多くは遠藤さんの話を聞き入るような時間となりました。
「海が再開発されます」より「お魚が食べられなくなります」
参加していた中高生からの質疑応答が行われ、その後、テーマに対して遠藤さんや中高生と話してくテーマトークが行われました。
事前に中高生から質問を募った中でも多かった「(ルールメイキング活動等に)関心を持ってもらえない人とも対話をして、一緒に学校や社会を変えていくためには?」という問いをテーマに話し合いました。
「反対している人と対話することも大事だけれど、無関心の人を仲間にするにはどうしたら良いのか…」校内で校則見直しを進めていきたい中高生にとって、全校生徒を巻き込んだ見直しができているのか…そう先生から問われることがあるそうです。あの手この手で活動を全校生徒に分かってもらおうと思っても、無関心な人には届きにくいのだそうです。
遠藤さんは「問題そのものだけではなくて、その背景にあるものまで伝えること。例えば、『ここの海が開発されようとしています』と言っても、地元住民じゃない人はあまり興味がわきませんよね。でも『ここでとれるお魚食べられなくなりますよ』と言われたらどうですか?『え、食べられなくなるの?そんなの嫌だ!』というように関心を持ってくれますよね。そのような伝え方だと無関心な人でも自分事として捉えられるようになります。だから伝え方を変えてみるっていうのは無関心層に興味を持ってもらうために考えると良いかもしれません」と多くの人の共感や関心を持ってもらうための方法を教えてくれました。
また、「同じことを言うにも、マンガにするとか、難しいことを簡潔に伝えられるように、伝え方を工夫してみても良いと思います」と、手段を工夫することも大切なのだそうです。
今回は、身近な社会を変えるために、オンライン署名「Change.org」の遠藤まめたさんをゲストに迎え、「具体的に社会を変えるためにはどんな対話が必要なのか」といったことを話していただきました。署名を集めることが目的ではなく、あくまで署名をきっかけに対話をはじめることを大切にしていること、さらにルールメイキングにも通じるような取り組みや活動を成功させる共通点も知ることができたのではないでしょうか。
みんなのルールメイキングプロジェクトでは、これからも様々な場面で活躍されている方や企業・団体とのコラボイベントを開催していく予定です!ぜひチェックしてみてください。
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