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【イベントレポート】6/5に開催されたルールメイキングプロジェクト・エリアカンファレンス@えひめの様子をお届けします!

愛媛県立丹原高等学校(愛媛県西条市)で6月5日(木)に、「ルールメイキングプロジェクト・エリアカンファレンス@えひめ」が開催されました。丹原高校は2026年度に同県立小松高等学校・東予高校と統合されます。ルールメイキング活動を通して大切にされている丹原高校の「対話的な文化」を、学校が統合された後にも、西条地域に残したい―。そんな思いで、丹原高校が主体となり2024年度からこのエリアカンファレンスが開催されています。今年のテーマは、「対立を対話でどう乗り越えるか」。
統合する2校を含む計7校の生徒42人も参加し、丹原高校の全校生徒と合わせて、約450人が本イベントに参加しました。本日はその様子をお届けします。
▼対話の必要性を「ルールメイキング対話クエスト」から知る
「対話はなぜ必要なのか」を知るためにまず生徒たちが取り組んだのが、カタリバ みんなのルールメイキングが開発したシリアスゲーム「ルールメイキング対話クエスト」。
このゲームの設定は、プレイヤーは魔王に襲われた4つの村に住むそれぞれの勇者。武器を手に入れるための冒険の旅の中で、プレイヤーは与えられたミッションをクリアしながらゴールを目指します。お互いが違う村の勇者として、自分の村を救おうと奮闘しますが、自分一人ではどうにもできない場面が立ちはだかります。それぞれの勇者が目指している本当のゴールは一体なんなのか?ゲームの中で起こる様々な体験を通じて、対話の重要性や、お互いの行動や意見の背景を知ろうとすることの大切さを学ぶことができます。
このゲームに、一度に450人も参加するのはこれが初めて。生徒は8人で1チームをつくり、ゲームスタート。1回目は、生徒たちはお互いの事情が分からず、探り探り自分のゴールだけをひたすら目指していましたが、2回目は目的を確認し、お互いの背景も見えるようになったことで、和やかな雰囲気に。協力してプレイする姿が見られ、大盛り上がりとなりました。最後には拍手が起こるチームもあり、楽しみながら、対話の面白さ、そして大切さを体感してくれました。

▼対話のくり返しの中で「納得解」をつくる

生徒たちはチーム内で、
・クラスのために絶対勝たないといけないと考えている「体育委員」
・毎年体育祭を楽しみにしており、練習が足りないので今以上に頑張らなくてはいけないと思っている「クラスの生徒」
・運動が得意なわけではなく、リレーに参加することは気が思いと感じており、勝敗にはこだわらずみんなが楽しめればいいと思っている「クラスの生徒」
などと、それぞれの役割になりきります。どうしたらみんなが納得しながらリレーの練習ができるのか、そこにどんな対話が必要となるのかを考えました。そして、役割の中で感じた自分の感情や気持ちを、対話の中でお互いに伝え合いました。

お互いの背景や思いを伝え合い、知ろうとし合うことで見えてくるものがあります。だからこそ、対話することが大切であるといったメッセージがこのワークショップには込められています。対話をするときに心がけたいことを、「上手に聴くための4カ条」や「言いづらいことを伝えるための4カ条」と題し紹介されました。

ただ、今回のワークショップの中では、対話を通じて「100%の納得解が得られた」というチームは1つのみ。その他は80%の納得解が出たチームあれば、ほとんど納得解にならなかったというチームもありました。「一度の対話で100%の納得解をつくることは難しい。だからこそ、くり返し対話を重ねていくことが大切です」と、カタリバスタッフから伝えられました。
▼”対立”は多様な意見を知る対話のチャンス
最後に実施したパネルディスカッションでは、西条市立神拝小学校の教員 山下楓馬さん、愛媛大学4回生であり、丹原高校の卒業生でもある髙橋花南さん、丹原高校や他校の生徒ら計7人が登壇。「対立した経験はあるか」というテーマをもとに、それぞれの立場から話していただきました。
登壇者からは、「姉弟ケンカの仲裁に入っている」といった話や「学校の決まり上、部活の参加が絶対であるため、部内でも熱量に差がある。そのため、朝練をするかどうかで対立したことがある。お互いに話し合ったが、最終的に納得できない形に終わった経験がある」といったエピソードが語られました。また、「対立自体が、すごく怖いことだ」といった意見も。
一方で、「対立に見えるけれど、それは自分の意見を大切にしているということでもある」「以前、担任だった先生から『対立は、思考を変えてみると、対話のチャンスでもある。他人から合意が得られている場合は、それ以上広がらない場合もあるが、対立があるからこそ様々な意見がでることで、よりよい方向に持っていける』と言われたことがあり、そういった心の持ち方を大切にしている」といった話もありました。
また、山下さんは「普段から、NVC(Nonviolent Communication=非暴力コミュニケーション)の考え方を大切にしている。例えば、表面的には「あの人のこと嫌い」と言っていても、心の中には「悲しい」という気持ちがあり、その奥には「本当は仲良くなりたい」と思っていることがある」と指摘。「対立が全て悪いわけではなく、違いが見えることで、多様な意見が出てくる」と強調しました。
▼「ルールメイキングには正解も間違いもない」
終了後にインタビューに応じてくれた、丹原高校でルールメイキング活動に取り組む副生徒会長の貴田乃愛さん(3年生)は、「普段からルールメイキングには正解も間違いもないということをみんなに伝えています。今日のイベントで、より多くの人に知ってもらえるきっかけになったと思いますし、私自身も正解も間違いもないからこそ、みんなが自分の意見をしっかりと伝えられる環境づくりを意識しました」と振り返りました。
また今回のイベントのテーマである「対話」の大切さについて、貴田さんは丹原に入学後、地域の人たちと高校生が対話しながら、協働してイベントをつくりあげていく楽しさを実感したといいます。「学校の中で、どうすればみんなで対話ができるのか」と工夫した点が、地域のイベントの中で大人たちを相手にも生かすことができた経験があり、「地域や組織を対話を通してよりよいものにしていきたいですし、活動を通して得たことを自分のスキルアップにも繋げていきたいです」と意気込んでいました。生徒会長の髙橋宗士朗さん(3年生)は、「ケンカはできるだけしたくないし、やはり平和が一番だと思っていて、そのためには対話が必要だと感じています。中学生の時は、今とは違って『決める立場』ではなく『下から発言していく立場』でしたが、なかなか意見が通らないと思っていました。丹原に来て対話を重視している点や、その中で下からの意見もどんどんくみ取っていくことが良いなと実感しています」と言います。
また髙橋さんは、「丹原では総合的な学習の時間が1時間設けられており、そこで今日のようなワークショップを実施しています。そういった日ごろから(一部の生徒だけでなく)みんなで集まって対話をする機会は、(丹原が統合され)学校が新しくなっても大切にしていってほしいです」と強調していました。

今回のイベントを企画した丹原高校の教員谷口大祐さんは、もともと「対話」を大切にするなかで、「対立」を否定的に見ていた部分もありました。ですが、以前行われたカタリバのイベントを通じて、改めて「対立」があるからこそ、対話が生まれるということを実感。対立と対話の連動性を知ってほしいと感じ、このイベントを企画したと言います。
谷口さんはイベント終了後、「ルールメイキングをきっかけに始まった本校の対話的な活動。継続的に行ってきたことで、今回のイベントでは生徒たちのマインドに確かな変化が見られました。事後アンケートには校則そのものへの言及は少なく、『対話は難しいけれど楽しい』『繰り返せば得意になれるかも』など、対話そのものに関する前向きな感想が多く、生徒たちがルールを変えることよりも、対話のプロセスに価値を見いだすようになってきたと感じます。中には『初対面の人と話す中で相手の考えを知るのが面白かった』と語る生徒もおり、多様な立場の違いから生まれる対立を対話で乗り越え、よりよい環境を共につくる体験になったと思います。このイベントに参加した教員や大人にとっても『自分の学校や地域でもやってみたい』と思える時間となり、この対話的な文化を地域に根づかせる一歩になればと願っています」と期待を寄せました。

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