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【開催レポート】こども参加・意見表明の現場づくり 自治体担当者向け勉強会を実施しました
令和5年春にこども基本法が施行され、国や地方自治体でこどもの意見を政策に反映させていくことが義務付けられました。こどもの意見を聴くことの重要性が再認識され、こども・若者会議の運営、こどもの意見を聴くアンケート調査など、各自治体で取り組みが進められています。
みんなのルールメイキングでも、学校現場において、「こどもたち自身が意見や気持ちを表現できること」「こどもの声が聴かれる機会がある」ことは重要だと考えています。「社会の一員として自分の声が大切にされた」という実感をこどもたちに届けていくには、何か特別な場のみで意見を聴くことにとどまらず、「学校」というこどもにとって身近な社会においても、こどもたちが参加できる場が広がっていくことが大切です。
今回、令和7年度よりみんなのルールメイキングと連携している広島県呉市こども支援課(以下、呉市)と、奈良県生駒市こども政策課(以下、生駒市)のご担当者をゲストとしてお招き。トークセッション形式で、こども参画の取り組みと、その背景についてお聞きしていく自治体向け勉強会を、令和7年11月11日に開催いたしました。


▼こども支援課・政策課の立場から学校での「ルールメイキング」活動に着目したわけ
今回ゲストとして登壇いただいたのは、呉市こども支援課の山城未来さんと、生駒市こども政策課の土井田理以さん。2人とも教育委員会ではなく、「こども支援課」「こども政策課」という首長部局の立場から、学校現場でのルールメイキング活動に着目し、カタリバと連携しています。
その背景とは何なのでしょうかー。
呉市は、令和6年度にこども計画を策定。そして、こども家庭庁と共催して実施した「こどもまんなかアクション」リレーシンポジウムinくれにおいて、「こどもの声に耳を傾けるにはどうしたらいい?」といったテーマでトークセッションを実施。そこに、カタリバみんなのルールメイキングのスタッフが登壇しました。
山城さんは「シンポジウムの内容や、それまでの打ち合わせのなかでルールメイキングの取り組みに共感。事業2年目は、活動の主体を子どもに移し、実際に市内の中学校2校でルールメイキング活動に取り組んでいます。そこでの学びを、今年のリレーシンポジウムのなかでも、こどもたちから発表してもらうことを企画している」と言います。
一方、生駒市は、令和6年度に生駒市こども計画を策定。 同計画の重点施策のひとつに掲げる「こどもの意見表明・意見反映」について、国のこども大綱に立ち返ったところ、下記の観点に着目したといいます。
- こどもや若者の状況やニーズをより的確に踏まえることができ、施策がより実効性のあるものになる
- こどもや若者にとって、自らの意見が十分に聴かれ、自らによって社会に何らかの影響を与える、変化をもた らす経験は、自己肯定感や自己有用感、社会の一員としての主体性を高めることにつながる。ひいては、民主主義 の担い手の育成に資する。
この観点に沿って、当初は「こども議会」の実施を考えていました。
ところが、こども議会についてこどもたちに提案してみると、ネガティブな意見が多く、「つまらなさそう」との言葉もあったと土井田さんは苦笑い。
「こどもにとって、生活実感からかけ離れた取組では魅力的に感じられないと分かり、同時にこども議会では、こどもが意見を「発する」、行政が「受ける」という対立的・一方通行的なコミュニケーションになってしまうとも感じました。そんな折、ルールメイキング活動を知り、多くのこどもが長く濃い時間を過ごす学校で、こども自身が感じている違和感や願いをもとに関係者との対話を重ねながら、こども自らが学校のなかを変えていくというプロセスを経験することで、自己肯定感・自己有用感を高めることにつながるのではないかー」
と考え、ルールメイキング活動の導入を決めたそうです。
▼実際の学校現場での取り組みとは?
呉市では、市内の中学校2校がモデル校となり、来年3月まで活動に取り組んでいます。
山城さんからは詳細なスケジュールが示されました。
- 令和7年5月 呉市教育委員会や呉市こども部の部長・副部長会議で、ルールメイキング活動を教育委員会側に打診
- 6月 カタリバがオンライン会議に同席し、ルールメイキングの取り組み内容や意義を教育委員会に説明
- 7~8月 カタリバとの連携に向けた準備、モデル校の募集・決定
- 9月 カタリバとの連携開始
- 10月 モデル校でのルールメイキング活動開始
- 12月 「こどもまんなかアクション リレーシンポジウムinくれ」でモデル校生とによる活動中間発表
- 令和8年3月 2025年度の活動終了
実際の学校では、まずは生徒会のメンバーが活動を担い、「目指す学校の軸づくり」に向けて、全校生徒に対して意見を集約したり、生徒会選挙を今までとは違ったやり方で実施してみようと活動しています。
また、学校の生徒会の生徒を中心としたリーダー研修の実施などを予定。こういった活動をモデル校2校だけに閉じるのではなく、広く知ってもらおうと、12月の「こどもまんなかリレーシンポジウムinくれ」で、生徒たちに中間発表してもらうことを想定しています。
生駒市でもまずは活動に向けて、生駒市教育委員会事務局にその内容と意義を伝えたところ、「生徒主体の学校づくりを進めたい」という教育委員会の意向と重なったことから、令和7年6月初旬に市内の中学校校長会で取り組みを説明したと言います。
ただ、手上げ式で参加を募りましたが、「呼びかけたのが年度途中ということもあり、すでに年間行事等が決まってしまっていたため手を上げづらかったよう。市内の学校1校1校に声かけをしたが、時期的に新しい取り組みを始めるのは難しかった。そこで、県教育委員会に打診し、市内にある県立高等学校2校にも声かけした」と土井田さんはモデル校決定までのプロセスについて語ります。
結果的に、市内の中学校1校と高校1校が参画。中学校は、「数年後に義務教育学校になることを見据えて、生徒主体の学校づくりを目指したい。そのなかで生徒と先生がどういったコミュニケーションをすれば、それが実現されるのかケーススタディとして学びたい」と手を挙げてくれましたと言います。
一方、高校では「いじめ対策基本方針」の改訂に向けて、生徒たちの声を取り入れたいと考えていたところで、ルールメイキングのモデル校に参加しました。

▼教育委員会との連携方法
気になるのは、本庁部局であるこども支援課・政策課と学校現場を管轄する教育委員会との連携方法。参加者からの申込でも、この方法を知りたいという声が多く寄せられました。
呉市では、こども部の部長・副部長と教育委員会が月に1回、定例の会議を設置しており、その中で取り組み等を共有。また、日々の活動はメールで進捗状況を把握できる状態にし、普段から情報共有できる環境づくりを意識していると強調します。
生駒市では活動が始まったばかりで、本格的な連携はこれから。ただ、土井田さんは「ルールメイキングは、一度実施すれば目的を達成するという取組ではなく、仕組化しながら、対話を文化としてしっかりと根付かせることが一番重要。このことから継続性を高める仕組みとして、教員・生徒向けの研修を定期開催すべく、教育委員会といっしょに企画している」と語ります。
▼こども支援課・政策課からみたルールメイキングの意義と課題
呉市では、現在のこども部と教育委員会のスムーズな連携が、今後も継続させていくなかで、課題にもなり得ると言います。そのため、現在の連携方法をこれからも持続させていけるよう模索しています。
山城さんは「モデル校2校の校長からルールメイキング活動をはじめて、教員からの生徒への声かけに変化がみられるようになってきた。それが最も大きな意義。今年度は年度途中からのスタートになったが、来年度以降は1年間を通して活動したい。そして、小学校とも連携することができたら、取り組みがさらに広がる」と意気込みます。
土井田さんは「何よりも、教員の方の困り感やニーズから出発しないと、活動に力が入らない。仕組化だけでなく、そういった面にも丁寧に向き合っていく必要がある」と指摘。
また意義としては、「こどもたちが過ごす学校のなかでリアルな声を聞けることは非常に有意義。また、こういった取り組みは広く捉えると『子どもの権利』の普及・推進になる。ルールメイキングにおいて大切にしている『対話』では、対等な立場で一緒に考えたり、課題に向き合ったりできることが、意義だと強く感じている。今後は活動を他校にも横展開するとともに、さらに活動を深めていきたい」と強調します。
今後も、私たちはルールメイキング活動を通じて、こどもにとって身近な社会において、こどもたちが主体となって学校づくりに参画していけるよう、自治体職員・関係者の皆さまと一緒に活動していきたいと考えています。
また本勉強会のアーカイブ動画もご視聴いただけますので、ご希望がありましたら、ぜひお気軽にお問合せください。
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