尼崎市研修会7月&12月「ルールメイキングと教育改革」

自治体事例

みんなのルールメイキングは、各学校のルールメイキング活動を個別にサポートするだけではなく、自治体と連携した普及にも取り組んでいます。

2022年7月と12月、尼崎市によるルールメイキングについて考える研修会に事務局職員が講師として登壇しました。今回の記事では、7月と12月の研修をまとめてレポートします。

7月開催 市民と職員がともに学び、考える研修・講演会「ルールメイキングと教育改革」

7月研修会の様子

生徒主体の対話を通じたルールメイキングについて学び、現代にあった教育改革への理解を深めることを目的に開催された7月の公開研修会。学校関係者・一般の人あわせて、約30名が会場またはオンラインで参加しました。カタリバ職員は講師として、令和の教育改革やルールメイキングの概要とそれに取り組む意義、実践の過程等についてお話しした後、参加者たちとワークショップを行いました。

ルールメイキング講演&ワークショップ

はじめに、尼崎市青少年問題協議会委員を務める今村亮氏(カタリバパートナー)が、最近の教育改革の動向を説明しました。なかでも、5月に経済産業省が発表した「未来人材ビジョン」において、ルールづくりや校則見直しの重要性が言及されています。今村さんは「ルールの変革は自分の変革と相互に作用するのではないか」と語りました。

つぎに、ルールメイキング事務局の山本と起塚から。ルールの見直しを通じて対話的な問題解決力を育成する活動の一例として、みんなのルールメイキングについて動画を交えながら説明しました。

その後、実践事例として大阪府の泉大津市立小津中学校と大阪夕陽丘学園高校の取組みをステップごとに紹介しました。例えば、夕陽丘学園はより多くの意見を取り入れるために、参加型掲示板の設置や街頭調査、オープン会議等、様々な工夫を行ってきました。

さらに、対話を引き出す”第3者”の関わりとして、ルールメイキングコーディネーター(外部民間人材)についても紹介しました。コーディネーターたちは、各校での校則見直しのプロセス設計や研修会での知見交換等を通じて、生徒が本音を開示することや、先生がルールメイキングの指導を行う際の心理的安全性を高めるサポートを行ってきました。

これら一連の活動によって、生徒・先生・学校にポジティブな変化がみられています。カタリバが行った、実践校を対象とした調査では、「自己肯定感や自己効力感、当事者意識が向上した」「職員室の雰囲気や、教員の関係性が良くなった」等の影響がありました。

最後に、時代の変化に合わせて校則を「見直し続ける」という視点の重要性を全体で確認しました。みんなのルールメイキングのスローガンでもある「学校の『当たり前』は、みんなで変えられる」という意識は、「社会の『当たり前』も、対話を通じて変えていくことができるという自立した市民の形成にもつながるでしょう」と語り、講演を終えました。

ルールメイキングワークショップ

講演の後、同じ会場で身の回りのルールに関するワークショップを実施しました。
ユース交流センターの中高生や大人が参加し、「身の回りにあるルールを見つけてみよう」「あなたが尼崎市の中で”ルールメイキング”したいことは何?」等のお題について対話しました。学校のルールに関することだけでなく、より良いまちづくりのためのマナー改善等、ルールメイキングの考え方をヒントに、社会全体をよりよくする方法を考える時間になりました。

12月開催 尼崎市生徒指導推進協議会での講演

12月には、尼崎市生徒指導推進協議会に参加しました。本会は、生徒指導提要の改訂をうけて、生徒の自発的かつ主体的な成長を支援するための一事例として、ルールメイキングの実践や考え方を共有することがねらいです。

カタリバからは7月と同じく山本・起塚の2名が参加し、市内小中学校の生徒指導主事 約80名へ「子どもたちが主体的に関わる学校をつくる『みんなのルールメイキング』の取り組み」というテーマで講演を行いました。

校則見直しの動向について解説

はじめに校則見直しのこれまでの動向について紹介しました。2017年に頭髪の黒染め指導は「適法」と最高裁で判断された「黒髪訴訟」を発端に、全国的に校則見直しの動きが広まりました。その後、改訂された生徒指導提要でも、「生徒の実態に合わせた校則の検証・見直し」「児童生徒の参画の重要性」等が盛り込まれました。

つぎに、対話によるルールメイキングを目指してきたカタリバの活動について紹介。校則見直しを行う際のステップを説明するとともに、活動を通じて身につくと期待できるものとして「課題発見力」「当事者意識」「論理的思考力」等を挙げました。
実際、実践校である大阪の泉大津市小津中学校では、生徒会選挙が大盛況になったり、より良い学校づくりとして図書館に自習室を設置するプロジェクトがスタートしたりしています。

最後に、「みんなのルールメイキング宣言」について紹介しました。この宣言は、生徒・先生・サポーター(有識者)たちと、校則・ルールの制定や見直しを進めるうえで前提にしたい3つの原則と9か条をつくり、まとめたものです。会場では冊子として配布しました。ルールメイキングが児童生徒や先生方、保護者・地域が対話するきっかけづくりとなってほしいと語りました。

講演後には、活発な意見交換が行われました。

最初に「PTAや保護者がルールメイキングに携わる意義は何か?」という質問が寄せられました。参加した事務局スタッフからは、ルールメイキングでは、そのルールに関係する人たちの納得が得られることが大切であり、その範囲に保護者が入る場合は、巻き込んで意見を聞いた方がよいという考え方を示しました。
たとえば制服の見直しに取り組んだ学校では、制服は家庭の経済的負担に関係すると判断して、意見を積極的に取り入れているようです。

また、小学校の先生からは、「小学校ではどうルールメイキングを行えば良いか?」という質問も。
それに対しては、小学校では発達段階に応じた工夫が必要となることを示し、5・6年生が中心となってルール案をつくり、下の学年と共有し、ともに考えていくという形をとっていいたり、クラス委員が中心となって学級会でルールメイキングを行う例を紹介しました。

カタリバではルールメイキングに関する研修・講演を行っています

みんなのルールメイキングでは自治体が主催する教員研修等の機会に研修・講演の依頼を承っています。ルールメイキングについてのレクチャーやワークショップ等の事例をもとに、皆様のご要望にあわせてご提供しています。はじめは、ご相談ベースでも構いませんので、お気軽に問い合わせください。

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