ルールメイキング・サミットで、生徒も教員も「成果の捉え方」が変わる。愛媛県立丹原高校・谷口大祐さんインタビュー

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 今年で3回目の開催となる「ルールメイキング・サミット」。全国でルールメイキングに取り組む中高生が一堂に会し、一人ひとりが本音を語り合うことで、それぞれの現場に学びやエネルギーを持ち帰ることを目的とするイベントです。

 この場には中高生だけでなく、各校で生徒とともにルールメイキングに取り組む教員の方々も多く参加し、ファシリテーターとして場を共創したり、学びを交換したりしています。今回は、第1回・第2回に参加した愛媛県立丹原高等学校の谷口大祐さん(以下、谷口)にインタビューを実施。教員の立場から、サミットに参加することの価値や意義をどのように感じているかをお話しいただきました。

谷口大祐

愛媛県立丹原高等学校

谷口大祐

1985年生まれ、出身地は愛媛県西条市。大学卒業後は愛媛県四国中央市の民間企業に勤務。 2012年より愛媛県立小田高等学校で3年間勤務した後、現在の愛媛県立丹原高等学校に転勤となり、9年目を迎える。これまでに教務課、進路課、生徒課、特活課など幅広い校務分掌を経験。令和3年度よりルールメイキングプロジェクトをスタートし、生徒の「やってみたい」を引き出す伴走者として、面白い学びについて探究を行っている。

ーよろしくお願いします。まずは、谷口さんがルールメイキングに関心を持つようになったきっかけからお聞きしたいと思います。

谷口:そもそもの始まりは、2021年度末にインターネット上でカタリバを見つけたことでした。当時は生徒会の担当をしていて、制服についてのルール見直しプロジェクトが一段落し、「次は何をしようかな」と生徒と一緒に考えていたところでした。

 何か新しいものを作り出すプロジェクトを始めたいと思い、「メイキング・プロジェクト」と検索したら、みんなのルールメイキングのページが出てきたんです(笑)。それまでルールメイキングという言葉は知らなかったのですが、生徒に見せたら「やってみたい」と言っていたので、さっそく2022年5月には正式に始めることにしました。

 

ー「メイキング」繋がりの、偶然の出会いだったのですね。その2022年度には、初開催のルールメイキング・サミットにもご参加いただきました。

谷口:カタリバから最初にサミットの情報をシェアしてもらった時、シンプルに「面白そうだな」と思いました。オンライン開催ではありましたが、全国から集まって対話するという非日常のフィールドに、うちの生徒が参加する価値は大きそうだなと。

 「課題を解決する」ための参加ではなく、生徒自身が今まで知らなかった自分に気づくことや、熱量の高い同世代と交流する中で「なりたい自分を見つける」「なりたい自分に近づく」ことができるのではないかと考え、参加することにしました。

校内からオンラインで参加したルールメイキング・サミット2022の様子

ー確かに、サミットという非日常だからこそ、普段と違う自分に気づく機会になりますね。

谷口:とはいえ、自分が楽しそうだなと思ったものを生徒にも体験してもらいたいというのが本音の部分でしたが(笑)。それと、全国の舞台に出ることは、生徒会の活動を校長や保護者の方に発信する「インナープロモーション」として有効だろうなという思いもありました。

 

ルールメイキング・サミット2023での様子

ー実際に参加されて、サミットで印象的だったことはありますか?

谷口:「自分には無理だ」と生徒に感じさせない空気感だったことですね。各校の取り組みを聞く中で、本校の生徒は「他の学校ってすごいなあ」と感じたはずですが、「もしかしたら自分もあんなふうになれるかも」と思える場でしたし、実際に、サミット後に生徒が「自分たちもいけるやろ」と言っていました。それは、スタッフやゲストの方が生徒に寄り添って、受け入れてくれる環境があったからだと思います。

 

ーサミット後に、生徒さんの気持ちの変化を直接お聞きになったのですね。

谷口:間違いなく、生徒たちはサミットの場に立ったことで自信を持てたと思います。努力を認めてもらった経験によって、ルールメイキングだけでなく受験勉強など他の面でも、頑張ることの価値を自分なりに見いだせるようになったようでした。

 生徒だけでなく、教員側にも変化は大きかったです。サミットでさまざまな中高生の声を聞いたり新聞に取り上げられたりしたことで、「生徒を認める力」が向上しました。すると、教員は生徒の目線に立てるようになります。生徒はサミットを通して視座が高まっているので、結果的に、教員と生徒の関係がより対等になったなと感じています。

 

ルールメイキング・サミット2023での様子

 

ーなるほど、ありがとうございます。翌年のサミットはオフライン・対面での開催となりましたが、違いは大きかったでしょうか。

谷口:やはり、熱量が伝播するという点では対面の力はとても大きかったですね。オンラインでも知識はインプットできますが、熱量は直接触れることで伝わるものです。また、生徒から聞いて印象的だったのは、「曖昧だったり、言語化しきれていない言葉も伝わる瞬間があった」という言葉です。対面だからこそ、うまく話せない生徒がいてもファシリテーターが「今、相手は何を言いたいんだろう」と想像して、生徒の想いを引き出せたのだと思います。

 私自身、ファシリテーターとして運営に参加して、目の前の生徒の本音を聞き出すためにそれまで培ったものの全てをぶつけたので、スキルアップに繋がったなと思います。結局は、いつも通り自然体で接するのが一番だという結論になりましたが(笑)。

 

ルールメイキング・サミット2023にファシリテーターとしても参加した谷口さん(中央奥)

 

ー2度の参加体験を経て、今年度のサミットにはどんな学校や教員に参加してほしいと感じますか?

谷口:生徒の主体性を引き出すプロセスに困っている教員には是非参加してほしいですね。ルールメイキングだけでなく、探究活動の進め方に悩んでいる教員にもいいと思います。サミットを通して「結果ではなく、生徒の変容自体に価値がある」と成果の捉え方が変わるはずです。

 私や本校の生徒も、これまでのサミットに参加したことで小さなアクションに価値を感じられるようになりました。サミット後に生徒から「今後どうしていくかの話し合いをしているけど、まだ何もできていない」と言われたときには、「それがアクションじゃん。一歩進んでるじゃん」と伝えてあげられました。

2024年3月に開催されたルールメイキング四国地域生徒大会での様子

 

ー谷口さんは今年のサミットにもご参加いただけるとのことですが、どのような期待をされていますか。意気込みもお聞かせください。

谷口:私自身は置かれたプログラムの中でいかに楽しむか、を考えるので、あまり「あれをやってほしい」「これをやってほしい」というのはありませんが(笑)、やはり生徒同士の対話的な時間がしっかり確保されていたら嬉しいですね。昨年もひとり2分ずつのプレゼンテーション(100人100物語ピッチ)がありましたが、生徒個人の言葉をきちんと聞ける瞬間を作ってほしいと思います。

 私たち丹原高校は、(過疎や少子化により)いずれは無くなっていく学校です。だからこそ、今取り組んでいる対話的な学びを、他の学校や地域にも広げていきたいと思っています。高校生の対話をどうすれば「地域づくり」にまで繋げていけるのか、サミットの熱量からヒントを得たいなと思っています。

 

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