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「ルールメイキングが社会に繋がり始めている」ーーサミット運営スタッフ事後インタビュー
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インタビュー
全国でルールメイキングに取り組む中高生100人が一堂に会し、社会で活躍するルールメイカーとの対話を通して学びを深めるイベント「ルールメイキング・サミット2024」が2024年10月13日、東洋大学白山キャンパス(東京・文京区)で開催されました。
今年度のサミットの全体統括を務めたのは、NPOカタリバ入職2年目の佐藤宏亮。サミットを終えた今、手応えや課題をどう捉えているか、インタビューを実施しました。
認定NPO法人カタリバ みんなのルールメイキング職員
佐藤宏亮(さとう こうすけ)
1992年生まれ、愛媛県松山市出身。専門学校卒業後、旅行会社へ就職。しばらく働いた後に、英語を極めるためニュージーランドへ。帰国後は東京の専門学校で研修旅行の取りまとめやカリキュラム作成、教材開発を行う。その後、情操教育を専門とする教育コンサルティング会社での勤務を経てカタリバへ。ルールメイキング事業で広報活動や、ルールメイキング・サミットの企画・運営、地域共助の拡大を目指した地域パートナーとの連携や戦略立案・分析などを行っている。
ールールメイキング・サミットの運営を終えて、現在(取材日:11月1日)の手応えはいかがですか?
佐藤:アンケートを見てみると、95%以上の参加者が「サミットに参加したことで、考え方や気持ちに変化があった」と回答してくれていました。参加してくださった生徒・教員ファシリテーター・企業ボランティアの皆さんからは「参加してよかった」や「学びやパワーをもらえた一日だった」との声をいただき、まずは安心しています。
また、一人ひとりの参加者が、それぞれ異なる学びや収穫を得てくれたことを嬉しく思っています。自由記述のコメントを見ると、今回のサミットのために独自開発したボードゲーム「『ルールメイキング対話クエスト』を通して、自分だけじゃなく周りのこと(意見)もしっかり聞いて考えることは大切だと思った」「何を見直すべきかということにとらわれていたけど、ルールメイキングの活動・対話の機会自体が自分にとってと大切なことと気づいた」など、とても幅広い。印象に残ったプログラムについても、かなりバラバラな結果になっていたんです。
画一的ではない、自分自身が欲しかった学びを掴み取れる場になっていたら良いなと思います。
ー当日の場面についても振り返っていければと思います。まずは、中高生の姿で印象に残ったシーンはありますか?
佐藤:生徒たちが、学校も学年も超えて自然に話が弾んでいた様子ですね。せっかく全国から集まっているので、他校の生徒ともたくさん話をしてほしいと思っていたので今年度はホームグループの関係構築に力を入れていました。今年度は事前プログラムを拡充して、当日にグループを担当するファシリテーターにもオンラインの事前ミーティングに参加していただいたことで、ある程度打ち解けた状態で当日を迎えられたのかなと。
「ルールメイキング対話クエスト」がゲーム形式であったことも良い影響があったと思いますが、サミット当日の移動時間や休憩、振り返りの時間にも「今すぐ話したい」とどんどん口を開く中高生が多かったと感じます。
ー改めてになりますが、サミットという場で、地域や学校、学年が異なる相手と交流できることの価値を、どう考えていますか?
佐藤:そもそもルールメイキングという取り組みは、立場や意見が違う人と対話を通して納得解をつくるプロセスを大切にしています。全国40校の仲間が集まる非日常の場で、中高生がお互いの立場や背景を超えて関係構築できたことは、それぞれが学校に戻った後もルールメイキングを進めていくためのエネルギーになったのではないか、と思いますね。
ー事前プログラムの話題も出ましたが、ファシリテーターを務めた教員の方々の活躍についてはいかがでしょうか。
佐藤:今回は19人の教員にファシリテーターを務めてくださいましたが、生徒たちと最も濃い関わりをしてくださったのはこの教員の方々だったと思います。
事前プログラムはホームグループごとに2回ずつ実施して、教員は任意参加としていましたが、普段の校務がある中で、ほとんどの方が積極的に参加してくださって。熱意を持って関わってくださることに深く感銘を受けました。グループごとの「LINEオープンチャット」でも、教員の方が積極的にやり取りを進めてくれたことで、生徒も活発に発言するようになりました。
当日は、「教える・教わる」という普段の教員と生徒の関係ではなく、対等に生徒と接してくださっていましたね。生徒と同じ目線で一緒に意見を交わし、話してくださったので、生徒たちも遠慮なく意見を言えていたようでした。
ー教員だけでなく、ルールメイキングに共感する企業からも、社員の方がボランティアで参加してくださっていましたね。
佐藤:企業の方は、ファシリテーター教員とペアになり、ホームグループに入る形で生徒と関わっていただきました。企業の方が対話に入ったことで、生徒にも教員にも日常では得られない経験があったと感じています。
「ルールメイキングを通じた学びや経験は、学校の中だけではなく社会でも必要とされている」と、学校外の社会である企業の視点から話していただき、中室さん(トークセッションに登壇したゲスト、中室牧子・慶應義塾大学教授)の話を、生徒にとってより分かりやすい体験談に「翻訳」する役割も担ってもらってくださいました。
ー多様な関係者・共感者が集まり、交わっていた今回のサミットだったわけですね。そんな一日を経て、「みんなのルールメイキング」の取り組み自体の現在地を確認できた部分もあるのではないでしょうか。
佐藤:ルールメイキングという学びのあり方が、今どれだけ学校や社会に届いているのか、を実感できました。取り組みを始めた当時は「一部の学校で校則見直しをやってるみたいだよ」と受け止められていたものが、ルールメイキングを通じた学びの重要性そのものに、多くの大人が共感してくれるようになってきている。それだけでなく、「ルールメイキングに取り組んでいる子どもはすごいですね」で終わらずに「大人も変わらなきゃ」という意欲を持ち帰ってくださった方が多いようです。
もちろんまだマイノリティな活動だとは思いますが、少しずつルールメイキングが社会に繋がり始め、学校外にも共感者が増えている。最終的な目標である、「ルールメイキングが当たり前の社会」に向けてのプロセスを着実に進めていると思えました。
ー運営冥利に尽きる手応えですね。
佐藤:今年も開催して本当に良かったと実感していますが、私たちが用意したのはあくまでもサミットという「場」にすぎません。生徒や教員の皆さんが『参加して良かった』と感じてくださったとしたら、それは私たちが提供したというよりは、参加者の生徒や教員の熱意、意欲が作り上げた場だったと考えています。
「ルールメイキング対話クエスト」だって、ゲームなのだからもっと適当に、楽しむだけで終わらせてしまうこともできたはず。でもそうではなく、立場の異なる人との対話の重要性や学校での実際の環境などについて、生徒たちが積極的に意見を交わして、自らプログラムの質を高めてくれたと感じています。
ー一方で、今後に向けてさらに改善・拡充していきたいポイントはありましたか?
佐藤:これまで3年ルールメイキング・サミットを開催してきて感じていることは、サミットという「同じ思いを持つ人が集まって対話する場」に生徒や教員を勇気づける・エンパワーメントする力があるということです。サミットだからこそ得られた経験や学びをもっと多くの生徒や教員に届けていきたいと思っています。会場までの距離や費用面で参加が叶わなかった人たちにも届くように「あなたの地域にサミットがきます!」といった全国キャラバンとして届けられるようになったらいいなと考えています。
また同時開催した「教員フォーラム」が大変盛り上がっていたことも印象的でした。生徒だけでなく、日々生徒に伴走している教員同士も継続的に対面で集まり、具体的な学びを持ち帰れるような機会もつくれるといいなと思っています。学校を越えて繋がりあう「教員コミュニティ」をもっと広げ、全国の教員が意欲や専門性を高めていける場をつくっていきたいですね。
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