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まちづくりとルールメイキングの共通点は「主体性」――九州エリア地域パートナー・つくるのわデザインインタビュー

対話を通じて、生徒主体の学校づくりに取り組む「みんなのルールメイキング」。全国に活動が広がる背景には、各地域でルールメイキングの普及・啓発に取り組む「地域パートナー」の存在があります。ルールメイキングに取り組んでいる・取り組みたいという学校のサポートや地域内でのコミュニティ形成・強化のために活動するパートナー団体のことで、2024年度現在は、全国7つの地域で協働を行っています。
地域ごとに特色のある教育現場を実際に回り、学校との関係構築や教員・生徒向けイベントの企画などを行う地域パートナーは、どんな思いで、どんな活動をしているのか。今回は、九州エリアで活動する地域パートナー、株式会社つくるのわデザイン(長崎市)の代表取締役・岩本諭さん(以下岩本)と、ルールメイキング事業を統括している取締役・森恭佑さん(以下森)にお話を聞きました。
記事後半では、2月下旬に実施される教員向けの交流会や生徒向けの地域生徒大会といったイベントの情報も伺っていますので、是非最後までご覧ください。

コミュニティデザイナー・株式会社つくるのわデザイン代表取締役
岩本諭
大分県宇佐市出身。地域の課題を地域に暮らす人たちが解決するためのコミュニティデザインに取り組む。住まいは長崎の斜面地にある空き家を改装したコミュニティスペース「つくる邸」で、斜面地のまちづくりにも力を注ぐ。長崎県社会教育委員。

ライター・株式会社つくるのわデザイン取締役
森恭佑
福岡県春日市出身。長崎大学に進学し、震災復興支援・まちづくり活動などに励む。現在はライター業を主とし、地域の商い・営みを中心に取材執筆。市民活動、ワークショップのファシリテーション、コミュニティデザインにも従事しながら、カフェやゲストハウス、福祉施設などさまざまな場づくりに携わる。

株式会社つくるのわデザイン
つくるのわデザインは、コミュニティデザインに取り組む事務所です。コミュニティデザインとは、地域に暮らす人やそのコミュニティに関わる人たち自身が地域のことを主体的に考え、動き出せるように、つながりや仕組みをデザインすることです。 多くは公共分野や教育に関するプロジェクトに携わり、住⺠参加でそのプロジェクトを進めています。 そして、我々も地域に戻ればいち住民。住民としてできることに取り組んでいきます。
――つくるのわデザインは、教育事業ではなく地域のコミュニティデザインを本業にしている点が特徴的です。
岩本:ハード・ソフトを問わず、住民参加型のプロジェクトを手掛けています。一人ひとりが地域やコミュニティに主体的にコミットしていくことを目指して、商店街活性化のプロジェクトや、公園運営や広場づくりに関して住民を巻き込んで意見を出し合うワークショップなどを運営しています。
基本的に、未来に向けて話し合いの場を創り、時間をかけてコミュニティに伴走するのが僕たちの仕事です。行政が「箱物」を作ってトップダウンで行うまちづくりではなく、住んでいる一人ひとりが「まちを自覚しよう」と。そのためには話し合いが必要だよね、という考え方ですね。
教育事業では、このルールメイキング・地域パートナー以外にも学校から探究学習の依頼を受けて、地域課題や魅力を発見し、実際にプロジェクトに取り組むサポートを行っています。

――お二人にとって、そうした活動の原点はどこにあったのでしょうか。
岩本:東日本大震災ですね。大学時代にボランティアで被災地に行って、人のつながりや絆の重要性を痛感したんです。建物が壊れ、サービスが崩壊した中で、無力感と同時に市民一人ひとりの力も目の当たりにして。「そこにいる人が、まちをつくるんだ」と考えるようになりました。
大学卒業後はコミュニティデザインをメイン事業とする会社に合流し、公園活性化などに携わったことが、仕事として市民参画に関わるようになったきっかけです。その後独立し、5年くらい個人事業主としてコミュニティデザインの業務をさせていただいてから、2023年に法人を立ち上げました。
森:私は岩本の5学年後輩ですが、学生時代に同じサークルでした。やはり東日本大震災の被災地に行き、長崎に帰ってきてからは、岩本が地域活動拠点として整備した空き家で一緒に住むことになりました。そこから7年間一緒に生活する中で、「ながさき若者会議」などまちづくりのコーディネートを手伝うようになりました。

――2024年にルールメイキングの地域パートナーとなる際は、どんな印象をお持ちになりましたか。
森:カタリバのことは東日本大震災のボランティアをやっていた頃に知っていて、「出張授業カタリ場」も含めて、良い活動だなと思っていました。その団体と、地域に密着してコミュニティデザインをやっている自分たちが力を合わせて何かをできるのは嬉しかったですね。
岩本:僕も昔からカタリバは知っていましたし、「教育分野と言えば」という印象でした。ただ正直、(地域パートナーの依頼を)お声がけいただくまではルールメイキングの取り組みは知りませんでした。でも、校則を自ら考えていくことと、まちの未来を自分たちで考えることはすごく似ていて親和性が高いと感じました。まずは自分に身近なトピックから取り組んでいく中で、少しずつ大きな社会に対する市民性が芽生えるというプロセスは共通しています。
森:事業内容を聞いていくうちにしっくりきましたね。お話をもらう少し前にマイプロジェクト長崎サミットがあって、高校生にフィードバックやコメントする立場で参加させていただいていたんです。カタリバは「対話の授業」から探究学習支援、そしてルールメイキングと、どんどん活動の幅を広げているんだなと思いました。

――まちづくりとルールメイキングが似ているというのは本質的な指摘に感じます。地域パートナーとなってからの活動を振り返ると、いかがでしょうか。
岩本:「生徒がやりたいことをどういうふうに教員に伝えていくか?」という点は行政やまちづくりも同じで。「この公園にベンチを作って」とだけ意見をぶつけても「予算がないから無理」となってしまうように、設置・管理する立場と生活・利用する立場では視点が違うもの。そこを同じ思いにすり合わせていく難しさは、まちづくりをやってきたからこそ分かります。
取るべきステップ自体はまちづくりと共通している一方、教育業界の実情は分からなかったので、教員の方々や生徒会メンバーの思いを掴んでいく期間だったなと思います。
森:最初は、何から始めたら良いんだろうと手がかりを探していましたね。イベントを開催したり、学校訪問をしたりして教員の方々とコミュニケーションを取る中で、学校ごとの事情や、学校同士で何をやっているかの情報交換が進んでいない課題も見えてきました。
教員はすごく前向きな方が多いんだなという発見もありました。面白くて熱い方が多くて、自分の中の教師像がアップデートされています。既存の授業スタイルをこなすのではなく、未来に向けてどんどんアレンジするアグレッシブさがあって、「どこからこんなにモチベーションが湧くんだろう」と思うほどです(笑)。
自分たちの授業、クラス、学校というコミュニティに向き合っている方々なんだなと分かり、一緒にやっていくうえですごく頼もしいですね。

――今後の展望や目標はどのように考えていますか?
森:魅力的な教員同士が繋がる場をもっと作っていきたいですね。新しい取り組みを立ち上げる前に、今あるものを活かすだけでも、周囲からの見え方は全く変わっていくと思います。教員個人やルールメイキングコミュニティの個性、キャラクターが見えるような発信を強化していきたいです。
岩本:大きな目標はもちろん、ルールメイキングをする学校が増えてほしいということです。そのために、地域パートナーが全てを動かすのではなく、教員たちが想いを共有して現場を良くしていくための土台を、私たちが作りたいです。
ほかには、まちづくりと教育がもっと親和性を持てる九州エリアにしたいとも感じています。学校中心の教育が主流ですが、もっと生徒が地域で活動し、地域で学ぶような方向にも進めたら嬉しいです。
――教員自身が企画したイベントとしては、2月に沖縄県での教員交流会が予定されていますね。
森:教員交流会の必要性は以前から感じていたのですが、九州は広いので、オンライン開催が妥当だろうと思っていました。でも、ルールメイキング・サミットに参加した九州エリアの教員たちが「沖縄でやっちゃいましょうよ」とその場で盛り上がったと聞きまして(笑)。
私としても、勢いを活かすのがコミュニティデザインの視点からも最善だと思ったので、決起集会的な場として2月23日に開催することが決まりました。沖縄の歓楽街で夜間保育園を立ち上げた方や、沖縄県内で校則見直しに取り組んでいる高校の校長先生など、沖縄県内からゲストもお招きする予定です。

――教員交流会の翌日24日には、生徒向けにも「地域生徒大会」が実施されます。こちらはどのようなイベントでしょうか。
森:学校を超えて校則を考えるだけではなく、元広告代理店の方やジェンダー・女性支援の分野で活躍されている方など、普段は関わらないようなゲストをお招きして、ルールメイキングの活動に学校外の視点からフィードバックをしてもらえるような場を準備しています。
「ルールメイキングにはいろんな意味付けができる」ことを生徒に感じてほしいんですよね。人権を考えることでもあるし、プロジェクト立ち上げの経験にもなる。地域社会への参画でもある。自分たちが取り組んでいる、取り組もうとしていることに、どんな価値があるのかを、自分なりに感じてほしいと思います。
その意味では、ルールメイキングに興味や意欲がある生徒だけでなく、全然取り組んでいなかったり、意義が見いだせていなかったりする生徒さんにも是非来てほしいですね。
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