【中高生ルールメイカー100人の物語】大人じゃなくても学校は創れちゃう!元シャイガール、現ルールメイカーの私が今思うこと。

お知らせ

インタビュー

全国で校則をはじめとするルールメイキングに取り組む中高生が仲間と出会い、対話し、各界のトップランナーとともに生徒主体の学校づくりについて考える「ルールメイキング・サミット2023」が、2023年9月24日(日)に開催されました。

全国から105人の中高生が参加し、「だから私はルールメイキングをする」をテーマに2分間の自由発表「100人100物語ピッチ」を実施

中高生は、ルールメイキングで得た学びや成長はもちろん、今抱えている不安や悩みなどの葛藤、社会や周りの大人に対して思うことなど、力強い自分の言葉で伝えてくれました。

【中高生ルールメイカー100人の物語】では、そんな105人の物語に込められた思いを届けるため、サミットに参加した中高生105人の中から、7人が執筆した記事をご紹介していきます。

#2 高校1年生

Y.Hさん

大人じゃなくても学校は創れちゃう!
元シャイガール、現ルールメイカーの私が今思うこと。

皆さんこんにちは!私は東京都の私立に通う高校1年生のひかりです。

私は生徒会の一員でもない、いたって普通な生徒の一人ですが、今はルールメイキングの域を超え、スクールメイクに取り組んでいます。スクールメイク=先生にしかできないもの という認識の方が多いかもしれませんが、この記事を読み終わる頃にはきっと、生徒たちでこんなことまでできるんだ!こんなやり方もあるんだ!と思ってもらえるはずです。

今ルールメイキングを始めようか悩んでいるそこのあなた!「いやいや私には関係ないか…」と思っているそこのあなたも、この記事を読んでくれたら嬉しいです。

私が行動を起こせた理由

まず初めに、私の通う学校は創立以来男女別学で続いてきた中高一貫の学校です。学校としては生徒たちが主体となって創るという特徴があります。簡単に言えば、キャンパスの管理から日常の様々なルールを決めるところまで普段の生活に関わることは全て生徒たちに任されている、そんな環境です。

少し変わった学校ですよね。

その学校が、2024年度から共学になることが約4年前に発表されました。

2022年度末から、「共学化まで残り一年」という言葉を様々な場所で耳にするようになり、私はふと疑問に思いました。

「共学化後の学校のこと、誰が決めるんだろう?」

学校全体としてそろそろ考えていかないといけないよね、という空気感はありながらも具体的に決まっていることは何もない。今思えば先生も生徒も全員が手探り状態でした。男女別学から共学に変わることは4年も前から決まっていたはずなのに、共学化後の学校については一切決まっていない、その状況に危機感を感じたのが私がルールメイキングを始めたきっかけです。

中3の頃。左は今もスクールメイクを共にする大切な仲間

とはいえ私もこの時はまだ周りの目を気にして行動できないシャイガールでした。

中学に入ったばかりの頃は話し合いなどに積極的で発言もよくしたのですが、反対意見の受け止め方が分からず、話すのが怖くなった時期がありました。

いつの間にか自分に自信をなくし、気づいたら話し合いを静かに見守るタイプに変化していたのです。

生徒が主体となって創っている私の学校、このままだったらどうなってしまうのだろうという焦りを感じつつも、どう行動に移したら良いのか分からない。自分には何ができるのかと悩んでいたある日、転機が訪れました。

1学年上の先輩が「共学化後の学校について考える共学化の係を一緒にやってみませんか?」と新設された係の募集をしていたのです。

私は「これだ!」と思い、すぐに「やってみたいです」と返事をしました。これが私の活動の始まりです。

スクールメイク、思ったより複雑かも?

私が今、主に取り組んでいることはスクールメイクです。

最初にも書いた通り、私の通う学校はクラス単位の小さなルールから学校単位の大きなルールまで、生徒たちが決めたことがそのまま学校生活に取り入れられるという特徴があります。

もちろん今のスクールメイクのように学校の制度に関わる大きなルールを考えるときには、数人の話し合いだけで決めることはできません。1つの項目に対し最低でも一回は全校で話し合いの時間を取り、多くの人の意見を集めることが基本です。

全校での話し合いのようす

言い換えれば、このことさえ出来ていれば自分たちで学校が創れる、そんな環境にいます。

また私の通う学校は創立以来別学で続いてきたので、それぞれに異なる伝統があります。男子部には毎日着る制服がありますが、女子部には制服がありません。

男女で話し合いをするときには、価値観の違いがあるゆえの難しさを感じることが多かったです。第1回目の話し合いでは学年全員で本質を見直しましたが、目に見える前提の部分の違いに引っ張られてしまい、「そもそも」を共に問い直すのは至難の業でした。

今までの私ならこの辺で心が折れてそうですが、不思議と諦めの気持ちは1ミリも湧いてきませんでした。それどころか、まだまだやってやるぞ!といつの間にか私の中に火が点いていました。

スクールメイク、思ってたよりも何倍も複雑。これが最初の頃の正直な感想です。

ただ変えるだけではない、ゼロから創り出すのがわたし流

私にはスクールメイクをするにあたって大切にしていることがあります。それは、男子部、女子部どちらかに合わせるのではなく、ゼロから新たなものを創り出すということです。

最初に話した共学化の係の仕事は話し合いの土壌作りが中心ですが、自分が一人の生徒として話し合いに参加するときには常にこのことを頭の片隅に置いておくようにしています。

何かを統一するときには目に見える違いに引っ張られがちですが、違いを擦り合わせて統一するよりも、まずは本質を見つめ直し新たな案を考えていく方がより意味のあるものになるはずそう考えるからです。

実際に今は学校の「委員」という組織について話し合いを進めています。委員は他の学校の生徒会と似たような役割を担っていて「委員は学校の心臓部」という言葉が生まれるくらい、学校生活において欠かせない存在です。

この委員も現時点では男子部と女子部で異なる部分が多く、どのように統一していくのか有志から全校にまで輪を広げて話し合いを重ねています。

話し合いの内容としては、具体的な委員の役職から委員長と副委員長を決める選挙の仕方まで、何が最もふさわしい形なのか今まさに検討している最中です。

「誰も取り残したくない」この思いは実現できる?

約半年、活動を続ける中で私にはある悩みが生まれました。それは、どのような決め方をしたら誰も取り残さないスクールメイクができるかです。

何か決めごとをするときには多数決を使うことが多いと思いますが、それをスクールメイクにも用いても良いのか。私はこのことに一番頭を悩ませました。

多数決には素早く簡単に合意形成ができるという利点がありますが、少数派の意見は完全に切り捨てられてしまうという欠点があります。元々は時間がないため多数決で進めようとしていましたが「本当にそのやり方でいいの?」という先生の言葉が、一度立ち止まって考えるきっかけになりました。

始めにも書いた通り、私の学校は生徒が主体となって創っているため自分たちが創り上げてきた生活に強い思い入れがある人、伝統を重んじる人が一定数いる一方で、共学になるこのタイミングで新しい伝統を創っていきたいと考える人もいます。

意見の価値は皆平等なはずなのに、結局は少数派の意見が切り捨てられてしまう。私はこの状況に何とも言えないもどかしさを感じました。

どうしたらより良い決め方ができるのか。係のメンバーで話し合い、私自身も何度も何度も考えを巡らせました。

共に活動している係のメンバーと

初めは時間のない中でどうしたら全て完璧に決められるのかと効率の良い決め方ばかりに注目していましたが、今は効率よく進めるよりも丁寧さを重視したいという方向に係全体でも考えが少しずつ変わっているように感じます。

投票で多数派の案になったとしても、完全に少数派を切り捨てるのではなく多数派の案の付け足せる部分に加えていく。白か黒かで決めるのではないこのような考え方もありなのかもしれません。

乗り越えるために、私がこれからやっていくこと

決め方に対する悩みは今も払拭しきれていない感じがありますが、ただ一つ、決め方よりもまずは対話をする上で大切にすることを皆と確認したい。このことが見えてきました。

私が対話をするときに最も大切にするべきだと思うのは、自分と他者の間に線を引かないことです。自分には受け入れがたいと思う意見に出会ったとき、自分と相手は分かり合えないと線を引くのではなく、相手に寄り添うことが何よりも重要だと考えます。

相手に寄り添うことができれば、多数決などの投票をしなくても合意形成はできるのかもしれません。

私はルールメイキングサミットで、理想に近づくための手段は人によって違っても、良くしたいという気持ちは皆一緒だということを学びました。このことを対話を通じて実感できたため、自然と温かい気持ちになったのがとても印象に残っています。

学校でスクールメイクをするときも同じような温かい空間の共有をしたい、これが私の今の目標です。

何を始めるにしても、まずは自分からそしてゼロから。私の記事をここまで読んでくれたあなたに、この2つのことが伝わっていたら嬉しいです。

ルールメイキング・サミット2023「100人100物語ピッチ」を公開

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ルールメイキングで得た学びや成長、不安、葛藤、社会や周りの大人に対して思うことなど、今の思いを詰め込んだ中高生ルールメイカー105人による「100人100物語ピッチ」。

みんなのルールメイキング事務局では、中高生の言葉を残し、これからのルールメイキングへ活かしていきたいという思いから、有志の49人分のピッチ原稿をアーカイブしました。

全49人のピッチ原稿は、リンクからご覧いただくことができます

ぜひ、ご覧いただき、これをきっかけにルールメイキングに取り組む中高生を共に応援するメンバーとなっていただけたら幸いです。

生徒主体の校則見直しや学校づくりをはじめたい、既に実践している小・中・高校の先生が無料で参加できるコミュニティ「ルールメイキング・パートナー (参加無料)」では、毎月、教員交流会と題したオンライン勉強会・交流会に参加できる他、ルールメイキング事務局との無料相談や、生徒同士の交流会への招待等をご案内しています。

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