小学校ならではの校則見直しとは?児童が主体となる学校づくりを。第7回教員交流会レポート

こんにちは、みんなのルールメイキング事務局です。
2月28日に開催された第7回ルールメイキング・パートナーの教員交流会の様子をお伝えします。
今回の教員交流会は「児童が参加する学校・学級のルールの見直し」をテーマに、初めての小学校事例の発表を実施し、全国から小学校5校・中学高校17校・行政関係者5名の方々が参加しました。

■ルールメイキング教員交流会とは
対話的な校則見直し、生徒主体の学校づくりに取り組んでいる先生方のコミュニティ「ルールメイキング・パートナー」では、月に1回程度、定期的に教員交流会を開催しています。こちらの教員交流会は、つぎの3つのことを大切にしています。

GIGA端末のルールづくりに取り組む つくば市立二の宮小学校

二の宮小学校のルールメイキングは、つくば市内のすべての小中学校でGIGA端末を見直すルールメイキングをつくば市教育局が中心となり推進したことがきっかけで、2022年6月からはじまりました。対話的なルールづくりを進めるうえで学校内ではどのような工夫が行われたのでしょうか。

児童たちの「学校を守りたい」という想いがひとつに。

GIGA端末を見直すルールメイキングを進めるにあたり、どの学年でも共通するテーマに取り組む動機をつくる必要があると代表委員担当の職員が考えました。
そこで、二の宮小学校では全校児童にGIGA端末が支給されているため、代表児童たちに他県で発生したタブレットの書き込みによるいじめの問題について紹介をしました。
それを聞いた代表児童たちからは「学校を守りたい」「みんなが楽しく安全に過ごせる学校にしたい」と声が挙がり、各学年やクラスをまわり、GIGA端末を楽しく、正しく使おうという声掛けを行いました。

次に、GIGA端末の使い方についてクラスで話し合うためにアンケートとワークシートを配付しました。アンケートをもとに話し合う際には、児童同士が対話的に話し合えるよう「自分で考える」時間と、クラスメイトと「対話する」時間をつくることで、お互いの考えを聞き合う力を身に付けられるような工夫を行ったそうです。

配付されたアンケートとワークシート

その後、各クラスで挙がった意見をもとに代表委員会の児童が中心となり社会の授業にも絡めて「二の宮タブレットの心得」を作成。
「第〇条」、「~すべし」といった表現を用いて巻物形式の心得を作成したことで周りの児童たちも興味を引く内容となりました。
また、このままだと漢字や表現が難しく低学年には親しみにくさがあるのではないかという意見が出たことから、イラストや振り仮名を振った低学年バージョンも作成しました。

低学年と高学年それぞれに作成した心得

GIGA端末のルールの見直しから校内にルールメイキングが広がる

GIGA端末のルールづくりは代表委員会に属する児童が中心に行い、心得をつくることができました。
その様子を見ていた他の委員会の児童の間でもルールメイキングをしてみようという声があがります。
保健委員会では「目の健康とGIGA端末の使い方」について保健集会を開いたり、給食委員会では「給食時の会話」についてのルールメイキングにも取り組むようになりました。

考える力が異なる低学年と高学年の差をどのように埋めていったのか?

小学校は学年によって考える力や基礎学力に大きな差があります。そのため学校全体でルールメイキングをする場合は、学年によって伝え方や方針を変えていく必要があります。
二の宮小学校でも同様に低学年と高学年に分けて、伝え方や進め方を大きく変える必要が出てきました。
低学年を担当する先生が意識したことは

  • 易しい言葉づかいにする
  • 具体的な内容でイメージさせる
  • ダメな理由を考えさせる

といった方法で、決められたルールをきちんと守ろうとする低学年に向けて誰もが納得できるGIGA端末の使い方を一緒に考えることでよりルールの定着につながりました。

高学年を担当する先生はより発展的なアプローチとして、

  • 先生ではなく児童が中心となって進める
  • 論争にならず相手の意見を聞いて尊重する

など、先生の押し付けにならず、自分たちで考えて行動ができるような働きかけを行いました。

教員として自分自身の考え方を改める機会になった

プロジェクトを担当した根本先生は当初、ルールメイキングに「ルールを決める」「守っていない人を取り締まる」といったイメージを抱き、無意識的に児童を管理する仕組みをつくろうとしていました。
しかし、先生方に相談していくうちにつくば市の教育大綱にある「管理から自己決定」に逆行するのではないかと気づき、活動に対する考え方を改めたと言います。

「禁止することを決める」ではなく「良い使い方とは?」という視点で考える機会を設けることや、「ルールを決める」ではなく「心得として日々考える」といった考え方に改められたことが難しいながらも教員としての成長の機会となったと語りました。

当初は先生の間でもルールメイキングに対して不安を抱いたり目指すものが不明確な状態で始めることへの戸惑いを訴えたりする先生もいましたが、今では学校全体で取り組むこととして積極的に捉える先生が増えてきました。
ルールメイキングを通じて、児童が自ら考える力を身に付けられることや自分たちの生活をより良くするための意識が学校全体で高まる機会になったと締めくくりました。

ルールで思考力を育てる 笛吹市立春日居小学校の取り組み

「何のため」のルールメイキングなのか

春日居小学校では、ルールに縛られた生徒指導ではなく、ルールがなくても自分たちで考えて行動ができる姿勢を伸ばしていく方針が教員間で可決され、集団づくり部担当の辻屋先生が中心となってルールメイキングをはじめました。
ルールメイキングをはじめるにあたって、児童からラインマーカーやシャープペンシルの使用を認めてほしいと要望があがっていたため、自分たちに合ったルールについて先生と児童が一緒になって考えていく進め方を検討しました。

ただ決まりを守っている状態が課題?プロジェクトの理念を明確にする

先生方の間では、使用禁止のシャープペンシルのルールについて児童から不満の声があがるのではないかと想定していました。ところが、児童アンケートの結果、特に不満の声もあがらずに決まりをちゃんと守っていることがわかりました。

先生方のなかには児童はルールに課題感を持っておらず、ルールを守っていることに安心しているとの声もありましたが、裏を返すと児童がルールに対して何の不満も抱かずに、思考停止している状態なのではないかと話が発展します。

この課題を踏まえて、学校としてどんな児童を育んでいきたいのか言語化し「時、場、相手、状況に応じて、今どうするかを考え、適切に判断できる子どもを育てたい」と教員間での対話による共通理解を深めました。
この一連の取り組みにより、春日居小学校でのルールメイキングの活動理念は「子どもたちの思考力を育てる校則指導」と決まり、この理念に向かって活動がスタートしました。

ステップ1:理念を明確にする

禁止ルールの背景にある、起こりうる問題を解決するためのルールを考える

理念にある育てたい「思考力」は普段の生活の中で物事を正しく判断できる思考力であることから、学校にある既存のルールがなくなれば「考えて行動する」機会が増えるのではないかと仮説を立て、細かなルールをなくす方針を立てました。
まずは禁止されているシャープペンシルのルールについての見直しがはじまります。

「シャープペンシルが禁止されているのは、使用した際に何らかの問題が起こるから。では、どんな問題が起こるのだろうか?」と児童へ問いかけることからはじまりました。
さまざまな意見や考えが挙がり、これらの対策ができればルールを無くすことができるのではないかと教員と児童の間でも意見が一致しました。

その結果、シャープペンシルを単に「禁止」にするよりも、「使い方」としてルールをつくることでデメリットが発生しないように気をつけて使おう、という思考で新しいルールをつくることができました。

ステップ2:方法を考える

低学年から高学年まで「自分たちに合ったルール」をつくる

児童会が中心となってつくったルール案は、他の委員会や校長先生など、さまざまな立場の人が対話を重ね、可決されました。
さらに学年によって起こりうる問題が異なることから、学級や学年にルールを落とし込むことが必要となり、学級ごとのルールメイキングが始まりました。
担任の先生よりクラスの子どもたちに以下のような声かけをしました。

Q1:シャーペンを解禁した場合、クラスで問題が発生する可能性があるか?
発生するとしたらどんな問題か?
Q2:問題が発生する可能性があるとしたら、クラス全員の努力によってその問題が発生しないようにす
ることは可能か?
Q3:シャーペン解禁は不可能という結論に達したら、解禁に向けて自分たちに足りないことは何か?

こうした問いかけを児童たちが考えることで、自分たちで問題が起きたときにどうすれば守れるようになるか、みんなで前向きな姿勢で知恵を出し合い、熟慮し、改善しようと考えるようになりました。クラス全員が納得できる規準が、自分たちの手によってつくられました。

学校生活を明るく前向きに

はじめは周りの先生からルールメイキングに対する不安の声もあがりましたが、成長した子供たちの姿をみてルールメイキングの効果を感じて好意的に捉えるきっかけとなり、先生のたちからは以下のような声が上がりました。

振り返りと先生の感想

「自分たちが考えたことが周りに認められることや形になっていくプロセスを知ることで、子どもたちの自己肯定感が上がったと感じています。最近では、身近な問題を自分ごととして考えられるようになり、学校生活を明るく楽しいものにするために前向きに行動する児童が増えた」と篠原先生は語りました。

今回は小学校の事例を紹介しました。子どもが中心となって取り組み、先生や保護者(PTA)、地域の方々と連携した取り組みは中学校や高等学校のルールメイキングにも共通する部分があります。
みんなのルールメイキングでは、ルールメイキングに取り組んでいる学校の事例紹介や意見交流会、有識者を交えた勉強会など、新しい価値観や考え方に出会うことを引き続きサポートしていきます。

参加した先生の声

  • ルールメイキングに取り組むための目的や手段を明確にしていくことが何よりも大切であることが伝わった
  • 具体的に児童や生徒にどのように働きかけていけばいいのか。どの程度支援すればいいのかが分かり、とても参考になりました。
  • 多くの学校がそれぞれ工夫しながら、悩みながら取り組んでいることを知り、勇気づけられました。

先生個人でも参加できるルールメイキング・パートナー

ルールメイキング・パートナーは、ルールメイキングを実践したい・実践している小学校、中学校、高等学校の先生が無料で参加することができるコミュニティです。

毎月教員交流会を題した勉強会・交流会を開催しています。他にもルールメイキング事務局との無料相談や、生徒同士の交流会への招待等をご案内しています。

お問い合わせ

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