第15回教員交流会 「学校でのスマートフォンの利用、どう考える?」大阪夕陽丘学園の事例と意見交換会

こんにちは、ルールメイキング事務局です。

対話的な校則見直し、生徒主体の学校づくりに取り組んでいる先生方のコミュニティ「ルールメイキング・パートナー」では、月に1回程度、定期的に教員交流会を開催しています。
12月19日に開催された第15回教員交流会のテーマは「学校でのスマートフォンの利用、どう考える?学校現場におけるスマホ利用のルールメイキング事例と、授業で使える情報モラル教材の紹介 」

イベントでは、校外学習でスマートフォンの利用を試験的に許可した大阪夕陽丘学園高等学校の長谷川誠先生をゲストに招き、試験導入の背景や実施の様子について報告してもらいました。

規模の小さい行事からスマートフォンの試験導入へ、大阪夕陽丘学園の事例

大阪夕陽丘学園高等学校
全校生徒1400人(1学年15クラス)教員約90人
目指す生徒像「自律した学習者」
ルールメイキングは生徒会が中心となって活動

大阪夕陽丘学園では、普段の学校生活でのスマートフォンの使用は校則で禁止されています。そのようななか、高校2年生の約220人が参加するUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)での校外学習にあたり、生徒から「スマートフォンを利用できた方が、スムーズに活動できるのではないか」という声が上がりました。これをきっかけに、スマートフォンの試験導入について検討がはじまりました。

これまでも、生徒会を中心としたルールメイキング活動では、将来的にスマートフォンを校内で使用できるようさまざまな調査と対話を繰り返してきました。

今回の校外学習では、今後の行事等にも活かしていくことを念頭に、スマートフォンの試験利用が認められました。

まずはじめに、生徒会が提案にあたり取り掛かったことが「なぜ使いたいのか」「なにが懸念されるのか」「周知のために何ができるか」について明確にすることでした。

スマートフォンを利用したい理由としては

・校外という活動の中で連絡手段として必要であること
・パーク散策をする際、アプリなどを使ってパーク情報を見ることが一般的であること
・1日のタイムスケジュールを管理する際に、普段利用する手段を使った方がスムーズであること
・写真などを撮影する際にタブレットだと不便であること

が意見として挙がりました。

しかし、利用したい理由を挙げるだけでは先生たちが懸念するトラブルや課題を解決することはできないため、使用にあたっての「実施条件」を設けました。そのなかには

・歩きスマホ等はせず、通行の邪魔にならないよう使用する
・SNSの投稿、閲覧はしない
・撮影時のトラブルがないように自分自身で考える
 トラブルが起きた場合は、学校の判断にすべて委ねる

等が含まれています。

その後、これらをもとに、生徒がスライドを作成し、先生たちへプレゼンを行いました。
結果としてスマートフォンの利用が認められましたが、ここまでの道のりはスムーズではなかったようです。生徒会のメンバーは、校外学習に先立って体育祭でのスマートフォンの使用について提案をしていました。しかし、その際には許可が下りませんでした。理由としては、体育祭は全校生徒が参加するため安全面が不安という声が挙がったことや、導入までの準備期間が十分ではないといったことが挙げられます。

このように、一度は認められなかったスマートフォンの使用でしたが、校外学習で再度提案できた背景には「『行事ごとのルール見直し方針』があったから」と長谷川先生は語ります。この方針は昨年度末に生徒会のメンバーが提案して先生たちと合意したものです。これには

・校則変更を行わずにルールを追加、変更することで対応
・データの収集、分析を行い、校則変更の材料とする
・守れていない生徒がいるからダメという議論はしない
・ルールを実行する際は、生徒たちから同意を得る

といった合意事項が含まれています。

承認後は、生徒会のメンバーが集会にて、校外学習に参加する生徒に向けて、提案の過程と結果、使用条件を報告しました。また、スマートフォン利用の注意事項や目的を明示したポスターやプリントも配布しました。

これらの取り組みを経て臨んだ校外学習は、問題なく実施されたそうです。長谷川先生は「生徒たちは必要な時に正しい使い方をしていました。懸念されていた、集合場所で話を聞かずにスマートフォンを触ったり、SNSでライブ配信したり、といった行為は起きませんでした。この経験で、生徒同士で注意し合いながら環境をつくっていくということができたのかなと思います」と話しました。

試験実施後のアンケートでは、とある先生から「はじめは大変いやでした。一部の生徒がいらないことをするのではないかと考えていたからです。しかし、想定していたよりも注意するような使い方をしておらず、何も気になりませんでした」というコメントがありました。

ただ、長谷川先生はモラルやマナーの面で不十分な部分もあると気がついたようです。今回の校外学習にとどまらず、スマートフォンの普段の使い方や他者との関わりのなかでのモラルやマナー等について、「モラルメイキング」にも挑戦していきたいと語り、発表を締めくくりました。

質疑応答:スマートフォン導入で楽になったこと、モラルづくりの方法

参加者:教員の方々から見て、校外学習でスマートフォンを導入したことによって楽になった部分はありますか。

長谷川先生:安心して生徒たちを見られるようになりました。スマートフォンの利用を禁止すると、校外活動が制限されてしまい、生徒の引き出したい力を引き出せないこともあります。また、先生もルールを守らない生徒を取り締まろうという視点で見てしまいます。ですが、スマートフォンを許可することでそういったハードルが下がりました。

また、「誰々が集合時間に間に合わなさそうだから、ちょっと連絡しよう」「今迷っているらしいんですけど」「先生こういう写真撮りました」と先生と生徒が互いに言えるようになり、信頼関係が生まれました

長谷川先生:チャットに「モラル」に関するコメントが来ています。私は、例えば、歩きスマホをしない、肖像権に配慮する、といったことは個人のモラルやマナーの問題であり、校則やルールで縛るものではないのではと考えています。

今スマートフォンはかなり多くの人たちが所有していますし、大人になるとスマートフォンに色々な仕事のメールやファイルが送られてきたり、電話がかかってきたりします。こういう背景を踏まえると、スマートフォンを使う使わないの議論よりも、どう利用するかを学ぶ方が良いのではないでしょうか

ルールメイキングのメンバーたちは対話を通じて、自分が普段使っている状態で「ここが不十分だ、懸念される」という点に気づき、自らモラルメイキングに取り組む状況が生まれました。今回の校外学習でのスマートフォン導入では、それをどう他の生徒たちに周知するのかがポイントだったと思います。

参加者:私も生徒たちが自らモラルを実践できるような仕組みをつくりたいと思っています。何か具体的な考えはありますか。

長谷川先生:とても難しいですよね。おそらく現行の校則にはルールとモラルが混同しているものもあるのではないかと思っています。そのため、僕自身も、例えば「これはモラルだからルールではないよね」というようにグルーピングするなど、小さい部分からチャレンジしてみたいと考えています。また、生徒や先生だけでなく企業の方と一緒に考える対話会を開いてみたいです。

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