第17回教員交流会 教員の立場から「生徒主体」の現場をつくるポイントとは?

 こんにちは、みんなのルールメイキングです。

 対話的な校則見直し、生徒主体の学校づくりに取り組んでいる先生方のコミュニティ「ルールメイキング・パートナー」では、月に1回程度、定期的にルールメイキングに取り組む教員がお互いの実践を共有し学び合うことを目的に、教員交流会を開催しています。3月29日に開催された第17回ルールメイキング教員交流会には、「ルールメイキング教員アンバサダー」に就任している4名の先生方をゲストにお迎えしました。

 みんなのルールメイキングでは、全国各地で特に力を入れてルールメイキングの実践・普及に取り組まれている先生方を、「ルールメイキング教員アンバサダー」として任命しています。

 全国の先生方にとっては「ルールメイキングに困ったときに頼れる先輩」でもある教員アンバサダーは、2023年6月に1期として9人、同年11月に2期として新たに11人の先生が加わり、現在は計20人となっています。

・2023年5月第1期就任者一覧 :https://rulemaking.jp/news/1565/

・2023年11月第2期就任者一覧:https://rulemaking.jp/news/2056/

任せる、一緒に楽しむ、共感するーーどうすれば子どもを主語にできるか?

 この日の交流会は「伴走」をテーマに、教員として学校現場で生徒に伴走する際に大切にしているポイントについて議論が交わされました。参加者からも、「生徒主体」と「教員のかかわり方」のバランスなどについて、多くの質問が事前に寄せられていました。

教員交流会でのトークテーマ

 まず、大阪夕陽丘学園高等学校の長谷川誠先生が「皆さんは、『伴走』と聞いてどんなものを思い浮かべますか」と問いかけると、参加者からはさっそく「通訳者」「子どもを主語にすること」「答えのないものを生徒と一緒に考える『共同研究者』」などの意見が集まります。

 では、実際の現場では、どのようにして子どもを主語にした伴走が行われているのでしょうか。日南市立南郷中学校の水尾彰太先生は「いきなりでは、なかなか生徒も乗ってこない。身の回りのことを題材に『こんなこともできるんだ』と感じながら少しずつ進めていく」ことを重視しているといいます。

 また、立命館守山中学・高等学校の水野翔太先生は、「任せる、楽しむ、当事者、の流れをイメージしている」とご自身が大切にしているポイントを明かします。同校で対話型のカフェイベントを開催した際も、「ぼくは第一案については絶対に何も手を出さない。生徒から出てきたアイデアに『やばい、すごい』と一緒に楽しむ」姿勢で関わっていました。

立命館守山中学・高等学校で生徒が運営・作成したイベント資料

 この事例に対し、長谷川先生は「特に小学生、中学生の世代では、『先生が正解を知っている』『先生の言うことが絶対』という空気もまだある。でも、生徒たちが『意見を言っていいんだ』と感じるには、教員が任せる姿勢でいることが大切なんですね」と頷きました。

 愛媛県立丹原高等学校の谷口大祐先生は、「共感し、認め合う雰囲気づくり」を観点として挙げました。水野先生の事例を踏まえて、「相手の意見に『すごい』と言う習慣を、生徒相手だけではなく教員同士でも実施する。そうすることで、学校全体がお互いに認め合う雰囲気に変わっていく」と経験を語りました。

 一方で、互いを認め合う・否定しないことで、生徒との合意形成の場において意見がまとまりにくくなるという難しさもあります。この点について、谷口先生は「まずは『たくさんの意見を出す』ことを成果として評価している」といい、意見がまとまらないことをネガティブに捉えず、対話の量そのものに価値を置いていることを明かしました。参加者からは「発表が上手い子の意見に(ほかの生徒の意見が)寄ってしまわないよう、生徒の想いや考えをアシストしてあげることも『伴走』だ」といった声も集まりました。

先進事例校でも、悩みは尽きない

 交流会の後半では、実際の伴走現場で「うまくいかなかった事例」の共有が行われました。

 谷口先生は「(限られた時間では)たくさんの生徒に伴走できないことが課題」と発表。水尾先生も「『先生、次はどうしたらいいですか』と生徒に聞かれると、教員側が敷いたレールに乗せてしまって失敗してしまったと感じる」と赤裸々に語ります。

 水野先生は「【ファシリテーター】と【当事者】の境目が難しい」と、生徒主体のあり方への悩みを明かします。少人数であれば当事者側に溶け込みながら、「一緒につくる」ことができるものの、ルールメイキングのチーム規模では、プロジェクトが軌道に乗るまで教員側が生徒を引っ張らざるを得ない状況があるといいます。水尾先生の事例も踏まえて、「『やりたいようにやればいい』と伝えつつも、教員側で正解のルートを設計してしまう」葛藤が共有されました。

現場の率直な体験談が飛び交い、交流会も熱気を帯びます

 では、教員はどこまで生徒に関わるべきなのでしょうか。生徒から意見が出てくるのを待つのか、序盤は教員が引っ張って、軌道に乗せるべきなのか。水尾先生は中学校での生徒支援において、「最初から生徒に任せられなくとも高校進学以降に自主性を獲得してくれることにつながれば」と長期的な目線で見据えていると語ります。

 また、谷口先生は、生徒のスキルアップ・学びと、生徒の自由・自主性の獲得という二つの軸を設定しているといいます。ルールメイキングを通して双方を往復しながら、最終的には自由・自主性に収束していくというイメージを共有しました。

 長谷川先生は「生徒に任せるということは、ほったらかすことではない。生徒から出てきた意見をそのまま受け止めるのではなく、生徒の視点では出てこない観点や、そのとき感じたことは先生の立場から返していくべき」と述べつつ、現場の振る舞いとしては「教員もがっつり関わっていくが、見た目上は関わっていないように見せる」よう意識しているといいます。

 生徒自身に達成感を味わってほしいという思いから、話し合いの場において基本的に口を挟みません。一方で、会議後などの時間に、生徒と「今日はどんなことを感じた?」「そういう意見を持っているなら、次の会議の時にみんなに話してほしいな」などの個別対話を行うことで、生徒主体の話し合いを実現しているといいます。

 こうしたリアルな事例共有に対し、参加者からのチャットやアンバサダーの先生方も「声かけの言葉次第でも変わってくる。次はそのあたりを話したいですね」などと盛り上がる中、この日の交流会は幕を閉じました。

  教員アンバサダーの先生方でも、悩みながら現場でのルールメイキングに取り組んでいます。だからこそ、同じ志で活動する先生同士が、お互いに相談したり、現在地を確認したりすることの重要性が浮かび上がる交流会となりました。

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 ルールメイキング・パートナーは、生徒主体の校則見直しや学校づくりをはじめたい、既に実践している小・中・高校の先生が無料で参加できるコミュニティです。

 登録には学校承認は不要で、先生個人での申込みが可能です。毎月、教員交流会と題したオンライン勉強会・交流会に参加できる他、ルールメイキング事務局との無料相談や、生徒同士の交流会への招待等をご案内しています。

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