【イベントレポート】11/10に関西の教員・生徒交流会を開催しました

イベント

レポート

11月10日に大阪府泉大津市立小津中学校で、関西地域の教員や生徒が集まる「ルルカフェ (ルールメイキング対話カフェ)」が開催されました。ルルカフェは、対話を通して校則やルールを見直していく「ルールメイキング」を実践する関西地域の教員や生徒が一つの学校に集まり、他校の取り組みを学ぶと共に会場校のルールメイキングの士気を高めるイベントです。4回目の開催となるこの日は、大阪府内外の中学、高校計12校などから67人が参加しました。ゲームなども交えて、校則やルールだけではなく、生徒たち主体の「学校づくり」に力を入れている小津中の姿勢を楽しく学びました。


職員室の中央に廊下!教員が働く場所を選ぶ

小津中の生徒の元気な司会でスタートし、すぐに案内されたのは2階にある職員室です。職員室の真ん中に通路があり、生徒も教員も自由に通ることができます。また、フリーアドレスで教員はどこに座っても良いのだそうです。話したり相談したりしながら仕事を進めたいか、集中して仕事に取り組みたいかで座れる場所を分けており、働く場所を選べるようになっていました。生徒たちは、職員室のドアを開けて「失礼します」と言って自分の名前を伝えなくても良く、気軽に教員に声をかけられるようになっていました。教員と生徒との間で、自然と会話が生まれやすくなり、信頼関係を築きやすい取り組みだと感じました。

案内された職員室では、教員はどこに座って仕事をするか選ぶことができます

「問い」を立てることを楽しむ

アイスブレイクの後は、グループごとに教員や生徒と一緒に問いを立てることの楽しさを学ぶゲーム「クエスチョンX」に挑戦しました。
ゲームの仕方は以下の通りでした。

① さまざまなお題が書かれた「テーマカード」の山と、問いが書かれた「クエスチョンカード」の山がそれぞれあります。各自、クエスチョンカードの山から3枚カードを引いて、そこにどんな問いが書かれているか自分だけで確認します。
② 次に順番を決め、最初の人から順にテーマカードの山から1枚めくり、みんなに共有します。
③ カードをめくった人がテーマに合うような問いができるように、自分の手元にあるクエスチョンカードの中から1枚選んで、みんなに共有します。
④ テーマカードとクエスチョンカードを組み合わせてできた「問い」の解を、各自で考えます。
⑤ 各自で解ができたら、ポストイットに書き込んで順番にみんなで共有します。答えが書けたら1ポイントゲットできます。
⑥ どの答えが一番良かったかを各自選びます。一番多くの人から支持された人は3ポイントゲットできます。
⑦ 最後に、出来上がった全ての問いの中から最も良い問いを選び、一番多くの人から支持された人は、人数分×3倍のポイントをゲットできます。

クエスチョンXで問いを立てる楽しさを学びました

グループの中では、「時計は生まれ変わったら何になりたい?」「コンビニと水の共通点は?」などの問いかけがされました。それに対して「時計は常に動いて忙しいから、ナマケモノになりたい」「コンビニも水もどこにでもあるけれど、使うのにお金が必要」などの回答が出ていました。なかなか難しいゲームで、アイデアをひねり出すのに苦戦しました。

「赤色の花に黒色のペンキを塗ろうとしていた」

クロストークでは、小津中の教員の大達雄さんと生徒たちが校内の取り組みを紹介してくれました。小津中は「学校のコンパス」と題した学校の教育目標を生徒たちが考え、”自芯 (じしん) を持つ、認め合う、「やわらかさ」で0から1を創る”ということを掲げています。そして、修学旅行や校外学習でどんなことをやるかも生徒が主体となって考えており、校則を変えるというルールメイキングから多様なジャンルのルールメイキングに取り組むようになったという話がありました。

小津中の生徒が考えた「学校のコンパス
小津中の教員大達 雄さん


登壇した3年生の森﨑春奈子さんは、ルールメイキングの活動で小津中の制服を見直すことになった2022年度当時は、反対の立場だったことを明かしました。新しいオリジナルの制服とユニクロの既製品を一緒に着ても良いという提案が出た時に「学校はオシャレするところではなく、学びにくるところ。統一感もなく、おかしい」と考えていました。結果的にユニクロの服を着用しても良いことになり、始業式当日、森﨑さんの目には黄色や紫など派手な色の服を着ている生徒の姿が飛び込んできます。「ほら、やっぱりTPОを考えない人も出てきてしまうじゃん」と思ったそうです。

すると、校長が挨拶でこう言いました。

「学校では『当たり前ではない派手な色』の服を着ても大丈夫かなと心配する人もいるかもしれません。でもね、実は色の正解にはこの色が派手な色とか、この色がまじめで普通な色などといった区別はありません。(略)『一人ひとりが好きな色』があるだけです。だから、好きな色を選んだらいいのです。小津中が君たちが選んだ色でカラフルになったらすっごく素敵ですよね」

森﨑さんは、この一言から「当たり前という言葉で、赤色の花に黒色のペンキを塗ろうとしていたことに気づかされた」と教えてくれました。

「どれだけ子どもに委ねられるかが勝負」

他にも小津中では、発案から企画、運営、台本づくりまで全て生徒たちだけで行う演劇祭が実施されています。演劇祭で脚本を書き上げた生徒は、文章を書くことが好きだと気づき、「得意分野を見つけてもらった」と言います。大達さんは「1年生の時から小さなことを生徒に任せていくというステップを積み重ね、3年生になった時に大きなことを任せている」と説明していました。

そんな小津中で今取り組んでいるのが「共創プロジェクト」です。生徒たちが自分たちの興味関心を出発点に学んでいくもので、「ウクライナに日本のカレーを送る」「既存の通知表を見直す」などに取り組んでいます。校長の高橋敏也さんも登壇し「子どもたちにどれだけ委ねられるかが勝負。学校がもっと良くなるようにシステム・文化にしくことが大切」と話してくれました。

教員も「分からない」が言えるように

最後には、教員同士で話す時間が設けられ、小津中の教員に対して他校の教員からルールメイキングを進める上での質問が飛び交いました。小津中の教員から、共創プロジェクトなどを通して「先生たちにも国語は得意だけど数学は苦手というのがある。プロジェクトの中で『〇〇を教えて』と言われた時に、先生側も分からないことは分からない、これだったら〇〇先生に聞いてごらんと正直に言えるようになった」「生徒が自分で主体性を育てるためには、われわれから『こうしてほしい』ではなく、一つの意見として生徒たちに伝わるように意識している」などの話が出ていました。

「子ども主体」の学校を目指して

ルルカフェに参加した教員や生徒からは「放任主義と子ども主体で進めていくということは違うことに気づかされた」「通知表や部活動の在り方を自分の学校でも考えていけたら、みんながもっと生活しやすくなると思う」という感想を聞かせてもらいました。

最後にみんなで集合写真。ルールメイキングの「ル」のポーズです

編集後記

ルールメイキングの根幹にある対話や問いを立てることの楽しさを、ゲームを通して体感することができました。ルールメイキングの中で「変わった」という成果も大切ですが、ルルカフェのように、学校や学年を超えて他校の生徒と交流したり、意見を交わしたり、自分の思いを伝えたりするプロセスの重要さも実感しました。教員や生徒との交流を通して、楽しく学びを得られた1日でした。




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