校長会による校則見直しの提案も!校則・ルール見直しの最新ルールメイキング動向(2021年8月)

レポート

 2021年8月下旬までの全国各地での校則・ルールの見直しを行うルールメイキング活動の動向を、最近ホットな話題を中心にお届けします。今後も1ヶ月に1度の頻度で更新していきます。


「生徒指導提要」見直し議論のいま

 学校での校則・ルールにもとづく指導は、一般的に「生徒指導」として行われています。現在、全国の学校で行われる生徒指導の指針となる「生徒指導提要」の見直しが進められています。
 文科省は今年6月に「生徒指導提要の改訂に関する協力者会議」を設置し、改訂版の生徒指導提要に盛り込む内容について検討を進めています。

生徒指導提要とは
「生徒指導提要」とは学校での生徒指導に関する教職員向けの基本方針とされています。2010年に文科省が取りまとめたもので、生徒指導の意義やいじめ・喫煙・飲酒・薬物乱用・非行などの具体課題の指導方法・法律等が細かく記されています。2010年に作成されて以降10年以上が経過し、生徒指導を取り巻く状況も変化しているため、概念・取組の方向性等を再整理し、生徒指導提要の改訂をはかることになりました。

 7月30日に開催された第2回の議事内容から、校則・ルールの見直しについて、どのようような議論が行われているかをまとめました。

【生徒指導提要の改訂に関する協力者会議(第2回) 議事要旨】
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/168/gijiroku/1413457_00004.htm


生徒指導の「積極的・消極的」何が違う? 

 「生徒指導」にはどのようなタイプがあるのかを整理することがポイントのひとつとなり、委員より「積極的な生徒指導」と「消極的な生徒指導」という考え方について整理した資料が提出されました。
積極的な生徒指導と消極的な生徒指導の違いは以下のように整理されます。

 ●「消極的な生徒指導」  
特定の子供を対象とした、事後対応的で治療的な「治す生徒指導」・「治す教育相談」
 ●「積極的な生徒指導」
全ての子供を対象とした開発的で予防的な「育てる生徒指導」・「育てる教育相談」(議事要旨より抜粋)

 これらを校則・ルールの指導にあてはめるならば、違反した生徒に対して叱責を加えることが「治す生徒指導」にあたり、校則・ルールの意義を問い、対話をしながら見直すルールメイキングの取り組みは「積極的生徒指導」に位置づけられるといえるでしょう。

 議事の中では、これら2つともが教育現場においては必要であるとも述べられています。しかしながら、これらの2つを分けて考えてしまうと、「生徒指導の理想と現実は違う」という誤解を生むおそれがあるという指摘もされています。
 日本の生徒指導は現在まで「積極的な生徒指導」が大切にされてきたとのことですが、今後改訂する生徒指導提要の中でも、その方針を引き継ぐことが確認されました。

 改訂により、「積極的な生徒指導」のひとつの形として、生徒指導におけるルールメイキング活動の位置付けがより明確になることが期待されます。 


校則見直しに関する話題も議論に登場

 生徒指導提要見直しの中で、校則・ルールの見直しはどう議論されているのでしょうか。 委員の発言の中で、関連する箇所を抜粋します。

校則等もそうだが、保護者や地域の人を巻き込んだ学校運営の中で、(中略)チーム学校という形で、地域全体で学校をつくっていく、そのような生徒指導が必要だろうと思う。

 「校則」について言及があった部分は、外部と連携した学校運営に関する議論でした。 校則やルールは学校の中だけで議論するものではなく、一般社会の多様な視点をまじえて検討するべきものであるいう見方が反映されているといえそうです。

 近年は、学校づくりを外部連携機関や地域との協働を通して行うことをめざす動きが活発です。
 実際に、現在ルールメイキングの取り組みを行っている学校では、地域の人や地元企業へのアンケートを行うなど、積極的に学校外の意見を取り入れています。
 生徒指導提要という指針の中で外部連携の意義が示されることで、多くの意見を取り入れるルールメイキング活動の追い風になることが期待されます。


全国の中学・高校の動き

岐阜県大垣市:東中学校(実証事業)がメディア掲載されました

  令和3年度ルールメイカー育成プロジェクトの実証事業校として校則見直しに取り組んでいる、大垣市立東中学校の取り組みがメディア掲載されました。
 東中学校では生徒会執行部のメンバーを中心にした7人が、コーディネーターの上松恵子さんとともに校則見直しの活動を行っています。10月には新しいルールをつくり、施行をめざしています。

 東中学校では、校内に意見箱を設置するなどして活動を進めてきました。「髪を結ぶ位置を自由にしてほしい」「ジャージの着用を自己判断に」など、約40件の意見が寄せられました。意見を集めるなかで、禁止されていないことを生徒が禁止だと思い込んでいた意見があるなど、生徒の認識に差があることも分かってきたそうです。

 校則・ルールには明文化されているものもあれば、慣習として続いているものもあり、様々な形があります。意識の外側にあるルールに気づいたり、ルールと思っていたものが実はルールではなかったりする気づきは、生徒たちの貴重な学びの経験となったはずです。
 そういった経験を通して、今のルールのなかで何ができるのか、もしくは何を変えなければならないのかに気づく力が育っていくはずです。

 今後は、生徒がまとめた案を教員や地域住民に示し意見を聞くなどして、ルールの内容を固めていくとのことです。今後の東中学校の活動に、ぜひご注目ください。

※申し訳ございません、都合によりリンク切れが発生しました。

全国の自治体の動き

福岡市:市立中校長会が生徒主体の校則見直しを提案
 福岡市立中学校校長会が、生徒が主体となり保護者とも一緒になって校則を考える「校則検討委員会」を各学校に設置するなどの提案を取りまとめました。
 提案には他にも髪の色や髪質など生まれ持った性質や、国籍や性の多様性、生徒の健康への配慮などの項目が盛りこまれました。

<提案のポイント>
(1)標準服の基本的な考え方、条件、配慮事項を理解する。
(2)生徒の「健全な学校生活」と「よりよい成長」のために以下の点に留意する。
○ 「生徒一人ひとりの人権の尊重」
○ 「生徒一人ひとりへの健康上の配慮」
○ 「社会の常識や時代の進展などを踏まえたもの」
(3)学校に「校則検討委員会」等を設置する。
(4)文部省の通知の内容を参考にする。
① 校則内容の見直しは、継続して取り組むことが大切である。
② 思い切った見直しが必要である。
③ 生徒が主体的に考えるよう指導することが大切である。
「よりよい校則(生活のきまり)を目指して」
https://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/87342/1/yoriyoikousokuwomezashite.pdf?20210820135959

 福岡市では6月から、校則見直しの方針について意見を集める検討協議会を設置して、議論を行ってきたとのことです。
 また昨年度から市内の多くの中学校で、性的少数者への配慮や機能性向上を目的として新標準服が導入されています。

 今後、この提案をもとにどのような取り組みを行うか各校で議論し、市教委は取り組み状況を調査していくとのことです。

 教育委員会が校則見直しに関する通知を発出する例は少しずつ増えてきていますが、校長会としてこのような提案をする全国的に珍しく、先駆けた取り組みです。提案内容がどのような実践につながっていくのか、ぜひ今後も注目していきたいと思います。

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