「不安がる同僚をどう説得?」 先生同士でお悩み解決 【第4回パートナー教員交流会レポート】

こんにちは、ルールメイキング事務局です。
10月で第4回目となるルールメイキング・パートナー教員交流会の様子をお伝えしていきます。

今回の教員交流会に参加できなかった先生方や、まだ参加したことがない先生方にも交流会の様子が分かるようお届けします。

ルールメイキングとは
「ルールメイキング」とは、学校の校則・ルールの対話的な見直しを通じて、みんなが主体的に関われる学校をつくっていく取り組みです。校則を見直したり、変えたりすることが目的ではなく、生徒や先生同士で対話を重ね、みんなの納得解をつくっていくプロセスを大切にしています。
2019年から取り組みはじめ、2022年度経済産業省「未来の教室」実証事業として採択されています。2022年10月現在、計162校がこの取り組みを実践しています。

教員同士でルールメイキング・サミット2022で得た学びのシェア

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ルールメイキングに関わる先生方のコミュニティ「ルールメイキング・パートナー」では、定期的に「教員交流会」を開催しています。この交流会は、ルールメイキングに携わる先生同士の繋がりづくりや学び合い、悩みの解決などを目的としているものです。

第4回教員交流会のテーマは
「参加校と一緒に、サミット2022を振り返ろう」

そんな教員交流会が10月14日17時〜、オンラインで開催されました。北は北海道から南は長崎まで、全国1都1道1府8県の13校から先生方15人が参加。9月24日、25日に行われた「ルールメイキング・サミット2022」の感想を共有したり、学校の現状についての悩みを相談したりと、普段関わる機会の少ない、遠く離れた地域の、しかし、似たような経験をしている同業者との様々な意見交換が行われました。

まず、ランダムで分けられたブレイクアウトルームでの簡単な自己紹介を挟んだのち、事務局・古野進行のもと「ルールメイキング・サミット2022」から得た学びや感想、生徒の様子などの共有が全体ルームで行われました。

いろいろな悩み 先生同士の交流で解決

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「ルールメイキングサミット2022」の集合写真

「ティーパーティー」に刺激受け

今年度からルールメイキング活動を始めた愛媛県立高校の亀山先生(仮名)は「発表のための事前準備をすることが、自分たちの活動を見直す良い機会になりました。いろいろな学校の取り組みを学び、いろいろな人の話を聞けたことが今後の具体的な取り組みに繋がっていくと思います。」とルールメイキング・サミットに参加した生徒の様子を振り返りました。

他校の面白かった事例については、
「大阪府にある私立高校が校則見直し会議を「ティーパーティー」と名付けたり、参加者にオリジナルシールをプレゼントしたりして、参加のハードルを下げるという取り組みが面白かったです。本校の生徒も刺激を受けて、まず活動に触れてもらう機会をつくりたいと言っています。本校の抱えている課題に『生徒会と普通の生徒間でのギャップ』『先生間でのギャップ』があるので、その解消に繋げられれば良いなと思っています」と話し、「とても勉強になりました」とサミットを振り返りました。

亀山先生(仮名)のこの感想に、大阪府内にある私立高校の熊野先生(仮名)は「ありがたいです(笑)」と思わず笑顔に。「『暗い感じの”ブラック校則”とか、そういうイメージを他の学校とも手を取りながら変えられたら良いな』と、生徒らも話してはいます」と、明るいルールメイキングの普及を呼びかけました。

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大阪府内にある私立高校が作成した、ルールメイキングに関する会議の参加者に配られた特典オリジナルシール(同校提供)

「小学校でのルールメイキング」どう進めるべき?

YouTubeでサミットのアーカイブを観たという、山梨県の公立小学校に勤める猿田先生(仮名)と鳥山先生(仮名)は「中学校や高校の生徒さんは、皆さんしっかり考えて発言されてるなと感じていて、やっぱりうちは小学校なので、そこをどうする?って。話し合うと言っても、そこまで発達段階のいっていない子どもたちと進めるルールメイキングってどういうのが良いんだろう?ってずっと悩んでいます。」と語り、

「今年は、学校全体の決まりではなく、クラスや学年で『自分たちの生活をよりよくするための決まりを考えよう!』というような取り組みを行っています。例えば、シャープペンシルの使用可否などもクラスごとに決めてもらっていまして、とにかく小さい単位で進めようということになっていますが、できることなら学校全体の決まりも決めてもらいたいという気持ちもあって、悩みどころです」と、小学校特有の障壁についての話がありました。

多忙すぎる先生たちにどう働きかけるか

とある公立中学校で教頭を務める鹿谷先生(仮名)は、「ルールメイキングサミットを終えて、ティーパーティーの試みや、専門の委員会を作るなど、もらったアイディアを取り入れていきたいと校長先生に相談し、バックアップしてもらえました。ただ、学校現場はとにかく忙しいので、生徒会担当の先生たちは『仕事が一つ増えるのではないか?』という気持ちの方が強い感じです。カタリバそのものもあまりご存知ないし、知ろうとする程の時間的な余裕もなく、知ってから考えようとするところまでなかなか行きつかないという現状があります」と学校現場のリアルを吐露。今は校長と教頭だけでやっているそうで、「職場の先生たちのモチベーションになかなか繋がらず、悩ましい状況です」と話しました。

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第4回パートナー教員交流会の様子

ルールメイキングサミットの感想を共有したのちは、ブレイクアウトルームに分かれての「お悩み相談会・交流会」が開かれました。

「生徒が素直過ぎるんです…」

長崎県北部に浮かぶ、とある島の県立高校で探究担当を務める猪俣先生(仮名)は、今回が初めての参加です。猪俣先生(仮名)は、生徒が素直すぎるが故の悩みを抱えていました。

「とても田舎の学校で、大人の顔色を伺うのが上手な素直な子たちが揃っていて、ルール変更については生徒指導部中心に教員主導で動いてはいるんですけど、それをもっと生徒主導で動かしていけるようにならないかな?と…。多分これから社会に出ていく子たちはそういうことも学んで卒業していったほうが良いはずなんですけど、なかなかそこまでに至っておらず、生徒が『上意下達が当たり前』という状態で卒業していってしまうのはもったいないよなと思って、今回カタリバの取り組みを聞きつけ参加しました。どうやって一歩を踏み出せば良いか知りたいです」

この問いに対して、愛媛県立高校の亀山先生(仮名)は、「本校もすごく田舎にある学校ですので、生徒も素直で、ルールがあればルールに従うという子がほとんどです。ただ、ルールに対する不満というのはずっと耳にしておりまして、『それじゃあルールを見直すプロセスをとらないか?』ということでカタリバのプロジェクトを紹介したところ、やってみたいという反応がありました。ただ、本校の生徒は前に出て何かをすることが苦手な生徒が多いので、活動をスタートする際は、スタートアッププログラムやキックオフミーティングなど、楽しく進めていくための場の提供というのは意識してやってきました」と、ルールメイキングを楽しいものだと思ってもらうための環境作りの重要性を挙げました。

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愛媛県立高校でのルールメイキングの様子

大阪府にある私立高校の熊野先生(仮名)は、「本校の場合、私が経産省の告知を見てルールメイキングプロジェクトに応募したので、完全に教員スタートではありました。ただ、うちの学校の校則は結構生徒から不満を持たれているものが多かったので、比較的スムーズに受け入れられました。やはり、先生が手を広げて、『よし、来い!』という姿勢や『本当に自分たちが動けば変えられる』という事実を生徒に見せるということ、教員ではなく、一人の大人として参加する、大人の覚悟を見せるということがキーだったかなと思います。そのために、活動中は生徒・教員はもちろん、理事長までもが、お互いをニックネームで呼び合うなどの取り組みを行いました」とフラットに話し合いができる環境作りの大切さを話しました。

このアドバイスを聞いた猪俣先生(仮名)は、「確かにうちの生徒もルールに対する不満というのは日ごろから持っているので、そこに火を付けてあげることが大事なのかなと思いました」としたうえで、「『生徒に悪影響なんじゃないか?』と不安がる先生たちからはどのように同意を得ていたのかなと思いました」と同僚に働きかける方法についての疑問を投げかけました。

「生徒に悪影響では?」と不安がる同僚をどう説得すれば良い?

この、教員内での理解を広げていく方法について熊野先生(仮名)は、「うち教員が80人弱いるんですけども、反対というよりかは不安に思う方はいました。やはり、生徒主体であるがゆえに変な校則になって生徒の雰囲気が悪くなるんじゃないか?生徒募集が不振になるんじゃないか?という不安は絶対に出てくるので、全員がOKするのは多分ムリだと思うんです。ただ、うちの場合は管理職が理解を示してくれて、ルールメイキングをやりたいという有志の教員の募集をかけてくださったり、教員研修の場で進捗状況を話す機会を設けてくださったりと協力的だったのは大きかったと思います。そのおかげで校内での周知が進んで『意外にちゃんと考えてるんやね』という声もいただけました。そういった感じで少しずつ輪を広げていくのが大事だなと思っています」と、時間をかけて理解促進を行っていった経験を話しました。

これに対して猪俣先生(仮名)は、「仲間になってくれそうな先生はたくさんいるので、少しずつ広げていきたいなと思いました」と、他校のノウハウを活かして実践していく決意を述べました。

先生個人でも参加できるルールメイキング・パートナー

今回の教員交流会では、初期からルールメイキングに取り組んできた先生の経験が、これからルールメイキングに取り組みたい先生が抱える悩みの解決に繋がるような一幕が多く見られました。

実はこのルールメイキング・パートナーは、管理職の了承がなくとも個人でパートナー登録をすることができます。「活動に興味はあるけど、仲間がいなくて不安…」「管理職の同意を得られるかどうかわからない…」という方でも大丈夫。ぜひ、パートナーになって、交流会に参加することで、心の中のモヤモヤや不安の解消に繋げてみてはいかがでしょうか?

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